JEM1460とは何か|配電盤・制御盤の定格と温度上昇試験の読み方
JEM 1460「配電盤・制御盤の定格及び試験」は、日本電機工業会(JEMA)が定める配電盤・制御盤メーカー向けの規格です。2026年3月19日に改正版が発行され、適用範囲や定格・試験の項目を定めています。この記事では、JEM 1460がどの機器に適用されるか、定格・試験の構成、そして盤内の銅ブスバー(バスバー)・母線に関わる温度上昇試験・耐電圧試験がどう位置づけられているかを、設計・検査担当向けに整理します。条文番号や数値は、公開情報で確認できた範囲に限定し、断定できない部分は「原本で確認」と明記します。
JEM1460
配電盤
制御盤
温度上昇試験
耐電圧試験
JIS C8480
銅ブスバー
この記事の内容
JEM 1460とは何か
JEM 1460とは、日本電機工業会(JEMA)が制定する配電盤・制御盤の定格及び試験に関する規格です。1992年8月28日に制定され、直近では2026年3月19日に改正版が発行されています。JIS(日本産業規格)が国の規格であるのに対し、JEM規格はメーカー団体が業界内の仕様をそろえるために定める規格という位置づけです。
前提
JEM規格は法令ではなく業界自主規格ですが、発注仕様書や設計標準書で「JEM 1460に準拠すること」と指定されるケースがあり、盤メーカーの実務では事実上の設計・検査基準として扱われています。
JEM 1460は、配電盤・制御盤の定格の決め方と試験方法をそろえるためにJEMAが定める業界規格で、2026年3月に改正されている。
適用範囲 — どの配電盤・制御盤が対象か
JEM 1460は、交流600V以下または直流750V以下の電路に用いる配電盤、および交流1,000V以下または直流1,200V以下の電路に用いる制御盤に適用されます。ただし、低圧金属閉鎖形スイッチギヤなど、すでに専用の製品規格が制定されている機器は適用除外です。
配電盤(対象)
- 交流600V以下
- 直流750V以下
制御盤(対象)
- 交流1,000V以下
- 直流1,200V以下
注意
キャビネット形分電盤のようにJIS側で専用規格(JIS C 8480など)が制定されている製品は、JEM 1460の適用範囲から外れます。発注仕様書に「JEM 1460準拠」とだけ書かれていても、対象の盤がどちらの規格体系に入るかを先に確認する必要があります。
JEM 1460は使用状態を「標準の使用状態」と「特殊な使用状態」に分けて整理しています。周囲温度・標高・湿度・振動などが通常の範囲を超える設置環境(高地への設置、屋外で直射日光を受ける場所、周囲温度が高い機械室内など)は特殊な使用状態として扱われ、定格の決め方や補正の考え方が変わり得ます。該当するかどうか・補正の具体的な数値は、設置現場の条件を踏まえて原本の該当条文で確認してください。
JEM 1460の対象は交流600V以下・直流750V以下の配電盤と、交流1,000V以下・直流1,200V以下の制御盤で、専用規格がある機器は対象外になる。
定格として定める項目
JEM 1460は、配電盤・制御盤の「定格」として確認すべき項目を整理しています。主な項目は、使用状態(標準の使用状態と特殊な使用状態)、定格電圧とその許容差、定格周波数、定格主回路電流、短時間定格耐電流、計器用変成器の二次・三次回路の定格電圧・電流などです。
JEM 1460が定める定格項目(概要)
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 使用状態 | 標準の使用状態/特殊な使用状態 |
| 電圧・周波数 | 定格電圧とその許容差、定格周波数 |
| 電流 | 定格主回路電流、短時間定格耐電流 |
| 計器用変成器 | 二次・三次回路の定格電圧・電流 |
JEM 1460が定める定格項目(概要)
使用状態
標準の使用状態/特殊な使用状態
電圧・周波数
定格電圧とその許容差、定格周波数
電流
定格主回路電流、短時間定格耐電流
計器用変成器
二次・三次回路の定格電圧・電流
短時間定格耐電流は、盤内の母線(銅ブスバー)が短絡時にどれだけの電流・時間に耐える必要があるかを決める値で、母線の断面積・電流密度の設計に直結します。具体的な数値の限度や許容差の幅は、原本の該当条文で確認する必要があります。
JEM 1460は電圧・電流・短時間定格耐電流など定格の決め方を項目として整理しており、母線の断面積設計とつながる短時間定格耐電流が盤設計上の要点になる。
試験の種類 — 形式試験・受渡試験・現地試験
JEM 1460は試験について、試験の種類、工場試験(形式試験・受渡試験)、工場試験方法、現地試験という構成で整理しています。盤メーカーの実務では、この3段階のどこで何を確認するかを発注前に合意しておくことがトラブル防止につながります。
試験3段階の目的の違い
- 形式試験 … 設計の妥当性を代表サンプルで確認する試験(毎回は行わない)
- 受渡試験(工場試験) … 出荷前に個々の盤で行う検査・試験
- 現地試験 … 設置後、現地で実施する確認試験
補足
設計・製作 → 形式試験(代表サンプル・毎回ではない)
→ 受渡試験(個々の盤を出荷前に検査)
→ 現地試験(設置後に実施)
コツ
どの試験を立会いで確認したいか(形式試験の成績書提示でよいのか、受渡試験に発注者が立ち会うのか)を見積り依頼の段階で伝えておくと、納期や費用の認識違いを防げます。立会いを後から追加すると、試験日程の再調整で納期に影響することがあります。
JEM 1460の試験は形式試験・受渡試験・現地試験の3段階に分かれ、どの段階を立会い確認するかを発注前に合意しておくことが実務上の要点になる。
母線(ブスバー)に関わる温度上昇試験・耐電圧試験の位置づけ
JEM 1460には試験項目の構成が示されていますが、温度上昇試験・耐電圧試験それぞれの限度値や判定条件の詳細な数値は、公開ページの情報だけでは確認できませんでした。盤内の銅ブスバーに関わる実務としては、温度上昇試験で母線の各部が定常状態でどこまで温度上昇するかを確認し、耐電圧試験で母線間・母線と大地間の絶縁性能を確認する、という役割分担になります。
補足
温度上昇試験の測り方・判定の考え方(熱電対の取り付け位置、定常状態の見極め、計算値とのズレが出やすい原因)は、別記事「盤内ブスバーの温度上昇試験|測り方・判定・計算とのズレ」で詳しく扱っています。本記事はJEM 1460という規格の位置づけに絞っています。
注意
温度上昇の限度値(周囲温度40℃を基準とした部位ごとの許容値など)や耐電圧試験の試験電圧・印加時間は、規格の版によって条文番号や数値が異なる可能性があります。見積り・設計の判断に使う数値は、必ずJEMA発行の原本(有償)で該当条文を確認してください。本記事の数値として断定はしません。
JEM 1460は温度上昇試験で母線各部の温度上昇、耐電圧試験で絶縁性能を確認する枠組みを示しているが、限度値の具体的な数値は原本での確認が必要になる。
JIS C 8480・JECなど他規格との役割分担
配電盤・制御盤に関わる規格は複数あり、役割が異なります。JEM 1460はメーカー団体が定める配電盤・制御盤全般の定格・試験の枠組み、JIS C 8480はキャビネット形分電盤という特定製品の国家規格、JEC(電気学会規格)は絶縁耐力試験や温度上昇試験といった試験方法そのものを厳密に規定する規格、という位置づけです。
JEM 1460
- JEMA(メーカー団体)が制定
- 配電盤・制御盤全般の定格・試験の枠組み
- 専用規格がある製品は対象外
JIS C 8480
- 国の規格(日本産業規格)
- キャビネット形分電盤という特定製品が対象
- 母線の電流密度などを規定
自社の対象製品がキャビネット形分電盤に該当するならJIS C 8480が定める母線の電流密度の規定が優先して適用され、それ以外の配電盤・制御盤であればJEM 1460が設計・試験の枠組みになります。発注仕様書でどちらの規格を指しているかを確認することが、手戻りを防ぐ第一歩です。
前提
同じ「配電盤」という言葉でも、JEM 1460が対象とする配電盤と、JIS C 8480が対象とするキャビネット形分電盤は別物として規定されています。仕様書の「配電盤」が製品としてどちらを指すかは、盤の構造(キャビネット形かどうか)と電圧区分の両方で確認する必要があります。
JEM 1460は配電盤・制御盤全般の枠組み、JIS C 8480はキャビネット形分電盤という特定製品の規格であり、対象製品によって優先すべき規格が変わる。
発注・検査の実務で確認しておきたいこと
盤メーカーや設計・購買担当の立場では、JEM 1460そのものの条文を逐一確認するより、次の3点を発注時に明確にしておくことが実務上の近道です。
発注前に確認する3点
- 対象の盤がJEM 1460の適用範囲(配電盤600V以下・制御盤1,000V以下など)に入るか、それとも専用規格の対象か
- 短時間定格耐電流など、母線の断面積設計に関わる定格値が仕様書に明記されているか
- 形式試験・受渡試験・現地試験のどこまでを成績書で確認し、どこに立ち会うか
当社では銅ブスバーの品質管理の一環として、材料証明や寸法検査の成績書を発行しています。盤メーカー側でJEM 1460や関連JISに基づく試験を予定している場合は、母線側の仕様(板厚・幅・めっき・穴位置)を早い段階で共有いただくと、試験条件との整合確認がスムーズです。
特に短時間定格耐電流は、母線の板厚・幅をどこまで細くできるか(逆に言えばどこまで太くする必要があるか)を左右する値です。盤の仕様検討の初期段階でこの値が未確定のまま母線形状を仮決めすると、後工程で板厚を変更せざるを得なくなり、曲げ型や穴あけ位置の再設計が発生します。定格の検討と母線形状の検討は、できるだけ並行して進めることをおすすめします。
発注時は適用範囲・短時間定格耐電流などの定格値・試験の立会い範囲の3点を先に確認しておくと、設計変更や検査のやり直しを防げる。
よくあるご質問
JEM 1460はJISやJECとどう違いますか?
JEM 1460は日本電機工業会(JEMA)というメーカー団体が定める業界規格で、配電盤・制御盤全般の定格・試験の枠組みを示します。JISは国が定める規格で特定製品(キャビネット形分電盤などJIS C 8480が対象とする製品)に適用され、JECは電気学会が定める規格で温度上昇試験や絶縁耐力試験といった試験方法そのものを厳密に規定します。それぞれ制定主体と対象範囲が異なります。
JEM 1460はどんな配電盤・制御盤に適用されますか?
交流600V以下または直流750V以下の電路に用いる配電盤、および交流1,000V以下または直流1,200V以下の電路に用いる制御盤に適用されます。ただし、低圧金属閉鎖形スイッチギヤのように専用の製品規格がすでにある機器は対象外です。
JEM 1460は2026年にいつ改正されましたか?
2026年3月19日に改正版が発行されています。制定は1992年8月28日です。改正でどの条文がどう変わったかの詳細(新旧対照)は、JEMA発行の原本で確認する必要があります。
JEM 1460には温度上昇試験の限度値が具体的に書かれていますか?
JEM 1460は試験の種類(形式試験・受渡試験・現地試験)や定格項目の枠組みを定めていますが、温度上昇の限度値や耐電圧試験の試験電圧といった具体的な数値は、公開情報だけでは確認できませんでした。実務で数値を使う場合は、JEMA発行の原本の該当条文を確認してください。
盤内の銅ブスバーの設計はJEM 1460のどこに関わりますか?
短時間定格耐電流は母線の断面積設計に関わり、温度上昇試験・耐電圧試験は母線の発熱・絶縁性能の確認に関わります。製品がキャビネット形分電盤に該当する場合は、JIS C 8480が定める母線の電流密度の規定もあわせて確認が必要です。
