フレキシブルブスバーの積層枚数と設計|オンス銅板・コーペル板の考え方
フレキシブルブスバー(可とう銅帯)は、薄い銅板を複数枚重ねて作る、手やわずかな力で曲げられる銅ブスバー(バスバー)です。「オンス銅板」「コーペル(板)」といった呼び方も使われますが、由来が異なるため会社によって指す範囲が微妙にずれます。この記事では、積層に使う銅板の枚数・幅・長さをどう決めるか、曲げ方向で何を確認すべきかを、発注前のチェックポイントとして整理します。
フレキシブルブスバー
可とう銅帯
オンス銅板
積層
コーペル板
曲げ方向
この記事の内容
フレキシブルブスバー(可とう銅帯)とは
フレキシブルブスバーとは、厚い一枚板ではなく薄い銅板(銅箔〜数mm厚の銅板)を複数枚積み重ね、両端を溶着やカシメで一体化した可とう性のあるブスバー(バスバー)です。通常の厚板ブスバーが「曲げ加工した後は基本的に形が固定される」のに対し、フレキシブルブスバーは接続後も手で曲げられる柔らかさを保つ点が最大の違いです。
フレキシブルブスバーは、薄い銅板を複数枚積層して一体化した、接続後も曲げられる可とう性のブスバーです。
前提
2026年時点では、蓄電池・EV・データセンター向けなど大電流化が進む一方、熱膨張・振動・組付け公差を吸収する必要がある接続部で、フレキシブルブスバーの採用例が増えています。市販品のカタログを見ると、変圧器の内部接続や工作機械(スポット溶接機の電極接続)など、振動や動きを繰り返し受ける箇所での使用例が目立ちます。
「オンス銅板」「コーペル板」という呼び方の整理
積層に使う薄い銅板は、業界や会社によって「オンス銅板」「コーペル(板)」「可とう銅帯」など複数の呼び方で呼ばれます。どれも同じ製品を指す場合がありますが、呼び名の由来は異なるため、名称だけで仕様をやり取りすると誤解が生まれやすい点に注意が必要です。
オンス銅板
- プリント基板の銅箔厚み表記(oz)から来た呼び方
- 1oz≒35μmを基準にした「厚みの呼び名」
- もとは電子基板業界の単位
コーペル(板)
- もとは黄銅(真鍮)くずを指す原料業界の用語
- 可とう導体・端子の製品名として使われる例もある
- 会社によって指す製品範囲が異なる
注意
「オンス銅板」はもともと基板用銅箔の厚み表記、「コーペル」はもともと原料業界の用語で、いずれもフレキシブルブスバーそのものを表す統一名称ではありません。発注時は呼び名を当てにせず、「板厚(mm/oz)×積層枚数×幅×長さ」という数値の組み合わせで仕様を伝えるのが確実です。
呼び名の由来は基板用語・原料用語と異なるため、発注時は名称でなく板厚・枚数・幅・長さの数値で伝えます。
積層構造の基本(板厚・枚数・幅の関係)
フレキシブルブスバーの断面は、薄い銅板を絶縁せずに重ねただけの単純な構造ではなく、板厚・枚数・幅の組み合わせで必要な断面積(≒電流容量の目安)と柔らかさのバランスを取ります。
補足
積層枚数の断面(イメージ)
端子部(溶着・カシメ) ─┬─ 銅板 1
├─ 銅板 2
├─ 銅板 3
│ :
└─ 銅板 n
※ 各層は板厚・枚数で電流容量が、枚数・板厚の組合せで柔らかさが変わる
市販されているフレキシブルブスバー製品のカタログを見ると、板厚0.8mm・1mm程度の銅板を2枚〜10枚程度積層し、幅9mm〜100mm程度の範囲でカスタム対応している例が見られます。実際の板厚・枚数・幅は必要な電流値と設置スペースから逆算するため、以下は「範囲の目安」として参考にしてください。
積層フレキシブルブスバーの仕様例(市販品カタログの一例)
| 項目 | 目安範囲 | 設計上の意味 |
|---|---|---|
| 導体材質 | タフピッチ銅(純度99.90%以上) | 導電率・加工性の基準材料 |
| 板厚 | 0.8mm・1mm程度 | 1枚あたりの厚み。薄いほど曲げやすい |
| 積層枚数 | 2枚〜10枚程度 | 電流容量と柔らかさのバランス |
| 幅 | 9mm〜100mm程度 | 設置スペースと必要断面積で決まる |
積層フレキシブルブスバーの仕様例(市販品カタログの一例)
導体材質
タフピッチ銅(純度99.90%以上)
板厚
0.8mm・1mm程度
積層枚数
2枚〜10枚程度
幅
9mm〜100mm程度
積層フレキシブルブスバーは、板厚0.8〜1mm程度の銅板を数枚〜10枚程度重ね、幅で断面積を調整するのが一般的な設計の考え方です。
枚数を増やす目的とトレードオフ
積層枚数を増やすと総断面積が増え、流せる電流の目安も大きくなります。一方で、枚数や板厚を増やすほど曲げに必要な力が大きくなり、可とう性(柔らかさ)は下がる傾向があります。「電流容量」と「柔らかさ」は基本的に反対方向に働くため、どちらを優先するかを先に決めておく必要があります。
コツ
同じ総断面積を確保する場合でも、「厚い板を少ない枚数で重ねる」より「薄い板を多い枚数で重ねる」方が曲げやすくなる傾向があります。振動吸収や繰り返し曲げが必要な用途では、薄板×多枚数の組み合わせを先に検討するのが現実的です。
注意
積層枚数から単純に「板厚×枚数×幅」で断面積を計算しても、実際の電流容量は表面積・放熱条件・交流での表皮効果などの影響を受けるため、そのまま許容電流に読み替えることはできません。許容電流の考え方はブスバーとはのページや個別の設計相談で確認してください。
枚数を増やすと電流容量の目安は上がりますが柔らかさは下がるため、用途に応じて優先順位を先に決めます。
曲げ方向・曲げ回数で確認すべきこと
フレキシブルブスバーの「曲げ」は、通常の厚板ブスバーで行う一度だけのプレス曲げ(形状を決めて固定する曲げ)と、組付け後も繰り返し動く可とう部としての曲げの、大きく2つの意味があります。どちらを想定しているかで、確認すべき項目が変わります。
曲げに関して発注前に伝えておきたい情報
- 形状を決める曲げ(1回だけ)か、組付け後も動く可とう部としての曲げかを明確にする
- 繰り返し曲げの場合は、想定する曲げ回数・振動条件(できる範囲で)を伝える
- 最小曲げ半径・曲げ角度の目安
- 端子部(溶着・カシメ)の位置と、曲げ部との距離
補足
通常の厚板ブスバーの曲げ加工では、板の圧延方向に対して曲げる方向(いわゆるBadWay/GoodWayの考え方)が割れやすさに影響します。フレキシブルブスバーでも積層する銅板1枚ごとの圧延方向は無関係ではありませんが、繰り返し動く可とう部としての疲労特性は、単純な1回曲げの割れやすさとは別の観点で確認が必要です。詳しい曲げ加工の基本は加工技術のページも参照してください。
曲げが「1回だけの形状決め」か「繰り返し動く可とう部」かを最初に区別し、後者は曲げ回数・振動条件も伝えます。
発注前に伝えておきたい項目
フレキシブルブスバーの見積り・図面作成をスムーズにするため、次の項目をできる範囲で整理してから相談すると手戻りが減ります。
見積り相談時に伝えたい項目
| 項目 | 伝える内容の例 |
|---|---|
| 電気条件 | 使用電流・電圧の目安 |
| 寸法 | 板厚×積層枚数×幅×長さの希望、または設置スペースの上限 |
| 曲げ | 1回だけの形状決めか、繰り返し動く可とう部か |
| 端子部 | 端子形状・穴位置・カシメピンの有無 |
| 表面処理 | めっき(錫・銀など)や絶縁被覆の要否 |
見積り相談時に伝えたい項目
電気条件
使用電流・電圧の目安
寸法
板厚×積層枚数×幅×長さ、または設置スペースの上限
曲げ
1回だけの形状決めか、繰り返し動く可とう部か
端子部
端子形状・穴位置・カシメピンの有無
表面処理
めっき(錫・銀など)や絶縁被覆の要否
電気条件・寸法・曲げの種類・端子部・表面処理の5項目を整理しておくと、見積りの手戻りが減ります。
よく使われる用途
フレキシブルブスバーは、熱膨張や振動、組付け公差を吸収する必要がある接続部で使われる例が多く見られます。
用途別に求められる特性のイメージ(相対比較)
補足
いずれの用途でも、必要な電流値と動きの大きさ・頻度によって適切な板厚・枚数・幅は変わります。上のグラフは各用途で重視される特性の傾向を示すもので、実際の仕様は個別の使用条件で確認が必要です。
変圧器・蓄電池ラック・工作機械など、熱膨張や振動を吸収する接続部でフレキシブルブスバーが使われています。
よくあるご質問
オンス銅板とコーペル板は同じものですか?
同じ薄い銅板を指すことがありますが、由来が異なる言葉です。「オンス」は基板業界の厚み表記(1oz≒35μm)、「コーペル」はもともと原料業界で使われてきた用語で、会社によって指す製品範囲が異なります。発注時は名称ではなく板厚・枚数・幅・長さの数値で仕様を伝えるのが確実です。
フレキシブルブスバーは何枚まで積層できますか?
市販品のカタログでは板厚0.8mm・1mm程度で2枚〜10枚程度積層する例が見られますが、上限は材質・板厚・幅・用途によって変わります。必要な電流値と曲げやすさのバランスから個別に検討する項目です。
積層枚数を増やすと電流はどれくらい流せますか?
枚数を増やすほど総断面積は増え、電流容量の目安も大きくなりますが、放熱条件や交流での表皮効果の影響もあるため、板厚×枚数×幅の計算だけで許容電流を決めることはできません。個別の使用条件を踏まえた確認が必要です。
フレキシブルブスバーは繰り返し曲げても大丈夫ですか?
繰り返し動く可とう部として使う想定であれば、その前提を発注時に伝える必要があります。1回だけ形状を決める曲げと、組付け後も動き続ける曲げでは確認すべき点が異なるため、想定する動きの大きさ・頻度をできる範囲で共有してください。
フレキシブルブスバーにめっきは必要ですか?
接続部の接触信頼性を上げる目的で、錫めっきや銀めっきを指定する場合があります。必要かどうかは接続環境(接触面の状態・使用環境)によって変わるため、品質管理の考え方も踏まえて個別に確認することをおすすめします。
