用途・事例

溶接機トランス二次側の銅バー|断面積・可とう性の考え方

溶接機のトランス(変圧器)は、1次側(電源側)で受けた電圧・電流を2次側(溶接ヘッド側)で「低電圧・超大電流」に変換します。この2次側の配線に使われるのが銅バー(銅ブスバー)です。結論から言うと、抵抗溶接機の2次側は瞬間的に数千〜数万Aという極めて大きな電流が流れる一方、通電時間は数サイクル(0.1秒未満)と短いため、連続通電を前提にした一般的な許容電流の考え方をそのまま当てはめると断面積を見誤ります。本記事では、2次側銅バーの断面積の決め方、可とう性が必要な箇所でのラミネート(積層フレキシブル)導体の使い方、アーク溶接機との違いを整理します。

銅ブスバー
溶接機
トランス二次側
可とうブスバー
断面積
大電流

溶接機の「2次側」とは何か

溶接トランスの電源入力側を1次側、溶接ヘッドへ大電流を送る出力側を2次側と呼びます。

抵抗溶接機(スポット溶接機・シーム溶接機)は、溶接電源(インバータ/サイリスタ制御)・溶接トランス・2次導体・溶接ヘッド(ガン)という構成が一般的です。電源からトランスまでが1次側、トランスから溶接ヘッドまでが2次側にあたります。1次側は数百V級の比較的小さな電流で済みますが、トランスで電圧を大きく降圧する代わりに電流は数十〜数百倍に増幅されます。2次側はこの増幅された大電流をごく短い配線で溶接点まで届ける区間であり、ここに使われる導体の仕様が溶接品質と設備寿命を左右します。

前提

本記事は一般的な設計の考え方を解説するものです。実際の電流値・断面積・導体形状は設備メーカーの仕様書と実測に基づいて決定してください。

なぜ2次側に銅バーを使うのか

2次側は電圧が低く電流が極端に大きいため、抵抗が小さく大電流を流せる銅バー(ブスバー、バスバー)が標準的な導体として使われます。

抵抗溶接の2次側は電圧が数V程度しかない一方、電流は数千〜数万Aに達します。同じ電流をケーブル(電線)で流そうとすると、導体の表面積や曲げ・接続のしやすさの面で不利になりやすく、短い距離・大断面が必要な区間では板状の銅バーの方が扱いやすくなります。銅は導電率が高く(国際標準軟銅IACS比で約100%)、同じ電流を流すのに必要な断面積をアルミや他の金属より小さくできるため、設置スペースが限られるトランス〜溶接ヘッド間の配線に向いています。ボルト締結やろう付けで接続点を増やさずに済む板形状は、接触抵抗による発熱点を減らせる点でも有利です。

銅バー(剛体)が向く箇所

  • トランス端子〜固定フレーム間の短い直線区間
  • 盤内配電部など動きのない区間
  • 大きな断面積を確保したい区間

可とう導体が向く箇所

  • 溶接ヘッドが昇降・旋回する可動区間
  • 加圧時の振動を吸収したい箇所
  • 設置誤差を配線側で吸収したい箇所

2次側銅バーの断面積の決め方

必要断面積は「電流容量(A)÷電流密度(A/mm²)」の式で求め、連続通電か短時間通電かで使う電流密度の考え方が変わります。

銅バーの断面積と電流容量の関係を表す基本式は次のとおりです。

必要断面積(mm²) = 電流容量(A) ÷ 電流密度(A/mm²)

例えば連続通電を前提にした一般的な目安では、電流密度を1.8〜2.0A/mm²程度とし、250Aを流したい場合は250A÷1.8A/mm²≒139mm²以上、板厚2.0mmの銅バーであれば幅30mm(断面積60mm²)で180A程度、幅10mmでは60A程度が目安になります。ただしこれは配電盤の母線など「ずっと電流が流れ続ける」区間の考え方です。

注意

抵抗溶接機の2次側は、加圧して通電する瞬間だけ数千〜数万Aが流れ、1サイクルあたりの通電時間は数十ms程度、サイクル間には休止(デューティの低い間欠通電)が入ります。配電盤など連続通電を前提にした許容電流表の電流密度を、瞬時大電流の抵抗溶接2次側にそのまま当てはめると、必要以上に大きな断面積になったり、逆に発熱を見誤ったりします。実際の設備では、溶接機メーカーが定格・デューティサイクル・短絡電流を明示しているため、その仕様に沿って導体を選定します。

銅バー(板厚2.0mm)の電流容量の目安(連続通電を想定した一般例)

幅 断面積 電流容量
10mm 20mm² 60A
15mm 30mm² 90A
20mm 40mm² 120A
25mm 50mm² 150A
30mm 60mm² 180A

銅バー(板厚2.0mm)の電流容量の目安

幅10mm / 断面積20mm²

電流容量 60A

幅15mm / 断面積30mm²

電流容量 90A

幅20mm / 断面積40mm²

電流容量 120A

幅25mm / 断面積50mm²

電流容量 150A

幅30mm / 断面積60mm²

電流容量 180A

一方、抵抗溶接機の短絡電流(機械が瞬間的に出せる最大電流)は機種によって幅があり、小型機で1万A程度、大型機では2万〜2万4千A級に達するものもあります。瞬時大電流・短時間という条件のもとでは、連続通電表の数値をそのまま適用せず、設備側の定格と通電時間(サイクル数)を踏まえて断面積・積層枚数を検討する必要があります。

抵抗溶接機の短絡電流レンジ(機種による目安)

小型機
約10,000A

中型機
約16,000A

大型機
約24,000A

可とう性が要る箇所はラミネート導体(シャント)を使う

溶接ヘッドが動く区間には、薄い銅板を必要枚数重ねたラミネート(積層フレキシブル)導体を使い、曲げ疲労を避けながら大電流を通します。

トランスから溶接ヘッド(ガン)までの間には、ヘッドの昇降・旋回・加圧動作に追従する必要がある区間があります。ここに厚い1枚板の銅バーを使うと、繰り返しの曲げ応力で割れや疲労破壊が起きやすくなります。そこで使われるのが、薄い銅板を必要な枚数だけ積層し、両端をロウ付けや圧着でまとめた可とう導体(シャント)です。1枚あたりの厚みを薄くすることで曲げ剛性を下げつつ、必要な断面積(=電流容量)は積層枚数で確保するという考え方です。

構造のイメージ

 トランス端子 ──┬── 剛体銅バー(固定区間)
                └── 積層薄板シャント(可動区間)── 溶接ヘッド
                     (薄板を多数枚重ねて両端を接続)
  

コツ

可とう部は曲げ半径を小さく取りすぎると早期に疲労するため、設置スペースとのバランスで曲げRと積層枚数を決めます。稼働頻度が高い設備ほど、定期点検で薄板の切れ・変色(過熱の兆候)を確認する運用に組み込むと安心です。

ラミネート導体は、もともとIGBT・IPMなどパワー半導体回路の低インダクタンス配線としても使われる構造で、薄板を絶縁材を挟んで積層し電流の往復経路を近接させることでインダクタンスを抑える用途もあります。溶接機の可とう部では、低インダクタンス化よりも「繰り返し曲げに耐えながら大電流を流す」点が主目的になりますが、薄板を積層して必要な導通断面積を確保するという基本構造は共通しています。

関連して、銅バーの一般的な製作・加工の進め方は加工技術のページで解説しています。板厚・形状に応じた曲げ加工や接続部の処理は、連続通電用の母線でも可とう部でも共通する検討項目です。

アーク溶接機の2次側との違い

アーク溶接機の2次側(出力側)は数百A級の連続〜断続通電が中心で、抵抗溶接機のような瞬時超大電流とは電流波形も導体の考え方も異なります。

アーク溶接機(TIG・MIG/MAGなど)における2次側は、トーチ(溶接棒側)とワーク(母材側)をつなぐ出力ケーブルの区間を指すのが一般的です。定格電流は機種により数十A〜500A程度までが中心で、抵抗溶接機のような数千〜数万A級の瞬時電流は扱いません。この違いから、アーク溶接機側では可とう性の高い溶接用ケーブル(電線)が主に使われ、銅バーが使われるのは主に盤内配電部や大電流対応機の一部に限られます。一方、抵抗溶接機は電流値そのものが一桁以上大きく、かつ接続距離を極力短くする必要があるため、2次側の主要導体として銅バー・ラミネート導体が標準的に使われます。用途を混同せず、それぞれの電流レンジと通電時間に応じた導体選定が必要です。

抵抗溶接機とアーク溶接機の2次側の違い(目安)

電流レンジ 通電時間 代表的な導体
抵抗溶接機 数千〜数万A 数十ms(間欠) 銅バー・ラミネート導体
アーク溶接機 数十〜数百A 秒〜分単位(連続) 溶接用ケーブル

抵抗溶接機とアーク溶接機の2次側の違い

抵抗溶接機

数千〜数万A・数十ms間欠・銅バー/ラミネート導体

アーク溶接機

数十〜数百A・秒〜分の連続・溶接用ケーブル

2026年時点の需要動向

EV用バッテリー組立向けの抵抗溶接機市場は2026年も拡大が見込まれており、大電流2次導体の需要にも影響しています。

最新の状況(2026年時点)

EV向けバッテリー製造で使われる抵抗溶接装置の市場は、2025年から2026年にかけて年率10%超のペースで拡大すると見込まれています。背景には、リチウムイオン電池の生産拡大やギガファクトリー投資の増加、自動溶接ラインの普及があります。セル・モジュールの接合工程が増えるほど、トランス2次側で大電流を安定して流すための導体設計(断面積・可とう部の耐久性)の重要性も増しており、既存設備の増設・更新時には2次導体の見直しもあわせて検討されるケースが増えています。

よくあるご質問

溶接機の「2次側」とは何ですか?

溶接トランスの出力側、つまりトランスから溶接ヘッド(ガン)や電極までの区間を指します。電源からトランスまでの入力側は「1次側」と呼ばれ、2次側はトランスで降圧・増幅された大電流を扱う区間です。

抵抗溶接機の2次側に銅バーを使う理由は何ですか?

2次側は電圧が低く電流が極端に大きいため、導電率が高く大断面を確保しやすい銅バー(ブスバー、バスバーとも呼ばれます)が標準的に使われます。短い距離で大電流を流す区間に適しているためです。

2次側銅バーの断面積はどう決めればよいですか?

基本式は「必要断面積(mm²)=電流容量(A)÷電流密度(A/mm²)」ですが、抵抗溶接機の2次側は瞬時大電流・短時間通電という特性があるため、連続通電用の許容電流表をそのまま使わず、設備メーカーが示す定格・デューティサイクル・短絡電流を踏まえて検討します。

ラミネート(積層フレキシブル)導体はどんな場合に使いますか?

溶接ヘッドが昇降・旋回するなど、配線区間が動く箇所に使います。薄い銅板を複数枚積層することで、必要な電流容量を確保しながら繰り返しの曲げに耐える構造にできます。

アーク溶接機の2次側にも銅バーは使われますか?

アーク溶接機の2次側(出力側)は数十〜数百A程度が中心で、主に可とう性の高い溶接用ケーブルが使われます。銅バーが2次側の主要導体として使われるのは、電流値が一桁以上大きい抵抗溶接機が中心です。

ブスバーとは何かを含めた基礎的な役割の整理は、別記事でも解説しています。溶接機向けに限らず、断面積や可とう性の考え方を検討する際にあわせてご参照ください。

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