屋外ブスバーの着雪・氷結荷重対策と支持設計のポイント
屋外に銅ブスバー(バスバー)を設置する受変電設備では、積雪地域・寒冷地で「着雪荷重」「氷結荷重」という、通常の風圧荷重だけでは説明できない機械的負荷を考える必要があります。本記事では、電気設備技術基準で定義されている氷雪荷重の考え方を手がかりに、支持がいし・支持間隔の設計で確認すべき点と、現場で実施できる対策を整理します。2026年時点の最新知見も含めて解説します。
銅ブスバー
着雪荷重
氷結
寒冷地対策
屋外設置
支持がいし
この記事の内容
着雪荷重・氷結荷重とは何か
着雪荷重(氷結荷重)とは、電線・ブスバー・支持がいしなどの表面に雪や氷が付着し、重量が増えることで生じる追加の荷重のことです。通常の風圧荷重が「風による水平方向の力」であるのに対し、着雪荷重は主に自重に加わる垂直方向の力として働き、さらに着雪した状態の断面積が大きくなることで、風を受ける面積(投影面積)も増えます。屋内の盤内ブスバーでは通常考慮しませんが、屋外に露出する区間や、屋外キュービクル・受変電設備の母線部では、積雪地域において無視できない設計要素になります。
着雪荷重は「重さが増える垂直荷重」と「受風面積が増える水平荷重」の両方に効く点が、通常の風圧荷重と違います。
前提
本記事は主に屋外キュービクル・受変電設備の露出母線部や、屋外に設置される支持がいし・金具まわりを対象にしています。建屋内に収納された盤内ブスバーは直接の着雪対象にはなりませんが、吸気口からの吹き込みや結露との複合劣化は別記事「盤内結露による銅ブスバーの腐食・絶縁劣化と対策」で扱っています。
電気設備技術基準の風圧荷重区分と氷雪荷重の目安
日本の電気設備技術基準(の解釈)では、架空電線路などの構造物にかかる風圧荷重を甲種・乙種・丙種の3区分で定義しています。氷雪荷重の考え方はこの「乙種風圧荷重」に組み込まれており、設計時に参照できる数値基準として押さえておくと、屋外ブスバーまわりの支持構造を検討するときの目安になります。
乙種風圧荷重は「電線等の周囲に厚さ6mm・比重0.9の氷雪が付着した状態」を想定し、垂直投影面積1m²あたり490Paと定められています。
風圧荷重の区分(電気設備技術基準の考え方)
| 区分 | 想定する状態 | 荷重(1m²あたり) |
|---|---|---|
| 甲種風圧荷重 | 氷雪の付着がない通常時・台風時 | 980Pa |
| 乙種風圧荷重 | 厚さ6mm・比重0.9の氷雪が付着した状態 | 490Pa |
| 丙種風圧荷重 | 氷雪の多くない地方の低温季 | 490Pa(甲種の1/2) |
風圧荷重の区分(電気設備技術基準の考え方)
甲種風圧荷重
氷雪の付着がない通常時・台風時 / 980Pa
乙種風圧荷重
厚さ6mm・比重0.9の氷雪が付着した状態 / 490Pa
丙種風圧荷重
氷雪の多くない地方の低温季 / 490Pa(甲種の1/2)
風圧荷重の区分比較(Pa/m²)
この基準は本来、架空電線路のような送配電設備を主対象にしたものであり、キュービクル内外のブスバーそのものに直接適用される規格ではありません。ただし、氷雪が付着した状態をどの程度の荷重として見積もるかという考え方は、屋外に露出する母線部や支持構造を検討するうえで参照価値のある数値です。実際の設計では、設置地域の積雪・結氷の実績や、建築基準法施行令第86条に基づく垂直積雪量なども合わせて確認し、個別に安全側で評価する必要があります。
夏季は風圧荷重が大きく氷雪荷重が0、冬季は風圧荷重が小さく氷雪荷重が大きくなるため、合成荷重は季節ごとに分けて評価します。
着雪・氷結が屋外ブスバーに与える影響
着雪・氷結が進むと、機械的な影響と電気的な影響の両方が同時に進行する点に注意が必要です。
機械的な影響
- 自重増加による支持がいし・金具への曲げ応力の増大
- 着雪による投影面積拡大で風圧荷重も同時に増える
- 落雪・脱氷時の衝撃荷重(瞬間的に荷重が抜ける反動)
- 支持間隔が長いほど、たわみ量と応力が大きくなる
電気的な影響
- がいし表面の着雪・着氷による絶縁性能の低下
- 融雪時の水膜による沿面放電(フラッシオーバ)のリスク
- 異物(つらら・雪塊)による相間短絡の可能性
- 結露との複合による接続部の腐食進行
注意
がいしの着雪特性は形状によって差があり、笠間隔が狭いタイプや表面に深いヒダの少ないタイプは、雪や氷のブリッジ(橋絡)が起きやすく、沿面距離が実質的に短くなることでフラッシオーバに至る場合があります。塩雪害対策で使われる耐塩がいし・長幹がいしの考え方は、積雪地域の着雪対策にも参考になります。
支持間隔・支持がいしを決めるときの考え方
積雪地域で屋外ブスバーの支持間隔を決めるときは、通常の自重・短絡時の電磁力に加えて、冬季の合成荷重(自重+氷雪荷重+風圧荷重)で評価するのが基本的な考え方です。支持間隔を短くする、または支持がいし・金具の強度を上げることで、たわみと応力を許容範囲に収めます。
支持間隔は「平時の短絡電磁力」と「冬季の着雪・氷結を想定した合成荷重」の両方で、より厳しい条件に合わせて決めます。
検討の進め方(目安)
- 設置地域の積雪・結氷の実績(地域区分・垂直積雪量)を確認する
- 夏季条件(風圧荷重のみ)と冬季条件(自重+氷雪荷重+風圧荷重)の両方で合成荷重を計算する
- 支持がいしのカタログ値(機械的強度・沿面距離)と照合する
- 落雪・脱氷時の衝撃(荷重の急な抜け)も安全側で見込む
- 必要に応じて支持間隔を短くする、または支持点数を増やす
積雪・着氷
↓ (垂直:自重+氷雪荷重)
──────●────── ブスバー
│
├─→ (水平:風圧荷重)
│
支持がいし
寒冷地・積雪地域での具体的な対策
設計段階の荷重評価に加えて、設置・運用面での対策を組み合わせることで、着雪・氷結のリスクを下げられます。
コツ
屋外キュービクルの設置場所を決める際は、建物の風下側や谷になる場所など「吹き溜まり」ができやすい位置、屋根からの落雪が直撃する位置を避けるだけでも、着雪量を大きく減らせます。設計変更なしでできる対策として優先度が高い項目です。
対策の例と効果
| 対策 | 主な効果 | 適用しやすさ |
|---|---|---|
| 設置位置の見直し(吹き溜まり・落雪帯を回避) | 着雪量そのものを減らす | 設計変更なしで可 |
| 防雪柵・防風ネットの設置 | 地吹雪による吹き込みを抑制 | 比較的容易 |
| 制御盤用ヒーター・スペースヒーター | 内部結露・凍結を抑制 | 既製品で対応可 |
| 支持がいしの形状見直し(笠間隔の大きいタイプ) | 着雪ブリッジ・フラッシオーバの抑制 | 設計段階での検討が必要 |
| 支持間隔の短縮・金具強化 | 合成荷重に対する機械的余裕の確保 | 設計段階での検討が必要 |
対策の例と効果
設置位置の見直し(吹き溜まり・落雪帯を回避)
着雪量そのものを減らす / 設計変更なしで可
防雪柵・防風ネットの設置
地吹雪による吹き込みを抑制 / 比較的容易
制御盤用ヒーター・スペースヒーター
内部結露・凍結を抑制 / 既製品で対応可
支持がいしの形状見直し(笠間隔の大きいタイプ)
着雪ブリッジ・フラッシオーバの抑制 / 設計段階での検討が必要
支持間隔の短縮・金具強化
合成荷重に対する機械的余裕の確保 / 設計段階での検討が必要
当社の品質管理の考え方でも触れていますが、屋外設置部材は定期点検のタイミングで着雪・着氷の状況、支持金具のゆるみ・変形を合わせて確認することをおすすめします。積雪期前(秋)の点検で、設置位置や防雪対策の見直しが間に合うかどうかも変わってきます。
発注前に確認しておきたいこと
積雪・寒冷地向けに銅ブスバー(バスバー)を発注・設計する際は、次の情報を整理しておくと、支持構造の検討がスムーズになります。
発注・設計相談時に伝えたい情報
- 設置地域(垂直積雪量・結氷の有無がわかる地域区分)
- 屋外・屋内の別、キュービクルの場合は設置環境(風下・積雪状況)
- 想定している支持がいしの種類・支持間隔(決まっていれば図面)
- 既存設備がある場合は、過去の着雪・氷結トラブルの有無
補足
板厚・幅・曲げ形状などブスバー本体の仕様は、支持構造の検討と並行して決まっていくことが多いため、図面が未確定の段階でもご相談いただけます。寸法・形状の加工対応範囲については当社までお問い合わせください。
よくあるご質問
着雪荷重とは何ですか
着雪荷重とは、電線やブスバー、支持がいしなどの表面に雪や氷が付着することで加わる追加の荷重のことです。重量が増える垂直荷重と、投影面積の拡大により風を受けやすくなる水平荷重の両方に影響します。
電気設備技術基準の乙種風圧荷重は、どんな氷雪を想定していますか
電線その他の架渉線の周囲に、厚さ6mm・比重0.9の氷雪が付着した状態を想定しており、垂直投影面積1m²あたり490Paと定められています。氷雪の付着がない甲種風圧荷重(980Pa)と比べて数値は小さいものの、氷雪荷重が別途加算される点が特徴です。
屋外の支持がいしに雪が付くと、どんな問題が起きますか
機械的には自重増加による支持金具への負担増、電気的には着雪・着氷による絶縁性能の低下や、融雪時の水膜によるフラッシオーバのリスクが挙げられます。笠間隔が狭いがいしは雪や氷のブリッジ(橋絡)が起きやすく、注意が必要です。
寒冷地でキュービクルを設置するときの基本的な対策は何ですか
吹き溜まりや落雪帯を避けた設置位置の選定、防雪柵・防風ネットの設置、制御盤用ヒーターによる内部の結露・凍結防止が基本的な対策です。支持がいしの形状や支持間隔の見直しは設計段階で検討します。
支持間隔を決めるときの荷重計算はどう考えればよいですか
合成荷重W=√{(自重+氷雪荷重)²+風圧荷重²}の考え方を使い、夏季(風圧荷重のみ)と冬季(氷雪荷重を含む)の両方で評価したうえで、より厳しい条件に支持間隔・金具強度を合わせます。
