加工技術

銅のレーザー切断はなぜ難しい?板厚の目安と切断方法の比較

銅板・銅ブスバー(バスバー)の切断に「レーザーカット」を使えるか迷う設計者・購買担当は多くいます。結論として、銅は光の反射率と熱伝導率が高いためレーザーでは難しい材料とされてきましたが、ファイバーレーザーの普及により板厚10mm前後までは実用上対応できる加工会社が増えています。この記事では、銅がレーザー切断で難しいとされる理由、板厚ごとの目安、シャーリング・ワイヤーカット・ウォータージェットなど他の切断方法との使い分けを整理します。

銅 レーザー切断
ブスバー 切断
ファイバーレーザー
板厚 目安
ウォータージェット
シャーリング

なぜ銅はレーザー切断が難しいのか

銅はレーザー光を強く反射し、熱も瞬時に拡散するため、エネルギーが材料に留まりにくいことが難しさの原因です。

銅(バスバー)のレーザー加工が難しいとされる理由は、主に2つの物性にあります。

反射率が高い

従来の炭酸ガス(CO2)レーザーやYAGレーザーが使う波長(赤外域)は、銅の表面でほとんど吸収されず反射してしまいます。反射光が加工機の光学系やレンズに戻ると、機器を損傷させるリスクもあり、銅は「扱いにくい材料」として避けられてきました。

熱伝導率が高い

銅は熱を瞬時に周囲へ逃がす性質があるため、レーザーを当てた点だけを局所的に溶かすことが難しく、エネルギーを継続的に加え続けないと溶融・切断が進みません。結果として加工速度が落ち、熱影響で切断面が乱れやすくなります。

定義

レーザー切断とは、集光したレーザー光で材料を局所的に溶融・蒸発させ、アシストガスで溶融物を吹き飛ばして切り離す加工方法です。鉄やステンレスでは広く使われていますが、銅・アルミのような「高反射材」は吸収率の低さが壁になります。

レーザーの種類と対応板厚の目安

ファイバーレーザーは波長がCO2レーザーより短く銅への吸収率が高いため、板厚10mm前後までは実用域として扱われています。

2026年時点で銅のレーザー切断に使われる主な方式と、目安となる板厚は次のとおりです。あくまで加工機の出力・アシストガス・材質(タフピッチ銅/無酸素銅)によって変わる目安であり、実際の採否は試し切りで確認することをおすすめします。

レーザー出力別・銅の切断板厚の目安

レーザー方式・出力 切断板厚の目安 備考
ファイバーレーザー 1.5kW前後 2〜3mm 薄板の精密切断向き
ファイバーレーザー 3kW前後 4〜5mm 中厚板まで対応
ファイバーレーザー 6kW前後 5〜6mm(条件により10mm程度) 設備・条件により差が大きい
CO2レーザー 非推奨 反射率が高く不安定になりやすい
青色半導体レーザー(溶接中心) 薄板〜中板(溶接用途が主) 切断より溶接での実用化が先行

レーザー出力別・銅の切断板厚の目安

ファイバーレーザー 1.5kW前後

切断板厚 2〜3mm(精密切断向き)

ファイバーレーザー 3kW前後

切断板厚 4〜5mm(中厚板まで対応)

ファイバーレーザー 6kW前後

切断板厚 5〜6mm(条件により10mm程度)

CO2レーザー

非推奨(反射率が高く不安定)

青色半導体レーザー

薄板〜中板(溶接用途が主)

コツ

ファイバーレーザーは波長がCO2レーザーの約1/10と短く、銅への吸収率が高いため「これまで切断できなかった高反射材」として実用域が広がった経緯があります。発注時は「ファイバーレーザー対応か」を確認すると話が早くなります。

補足:青色レーザーは今のところ溶接が主役

波長450nm前後の青色半導体レーザーは銅の吸収率が急激に上がるため、EV向けモーター・バッテリーの銅溶接で採用が進んでいます。ただし切断用途としての普及はまだこれからで、現時点の銅ブスバー切断の主力はファイバーレーザーです。

反射率を抑える工夫とアシストガスの選び方

表面処理で反射率を下げる、適切なアシストガスを選ぶといった工夫で、銅のレーザー切断の安定性は高められます。

波長別・銅のレーザー光吸収率の目安(相対値)

CO2レーザー(10.6μm)
低い

ファイバーレーザー(1.06μm)
中程度

青色半導体レーザー(450nm)
高い

波長が短くなるほど銅の吸収率は上がる傾向にあり、これがCO2レーザーからファイバーレーザー、さらに青色レーザーへと採用が広がってきた背景です。加えて、現場では次のような工夫で加工の安定性を高めています。

表面処理での対策

切断前の銅表面を酸化させる、あるいは黒色系のコーティングを施すことで、表面の反射率を下げてレーザー光の吸収効率を高める方法があります。見た目や後工程(めっき)への影響を考慮し、採用するかは加工会社と相談が必要です。

アシストガスの選定

窒素ガスは酸化を抑えて断面をきれいに仕上げやすく、酸素ガスは発熱反応を利用して切断速度を上げやすい特徴があります。通電部としての仕上がりを重視するか、速度を優先するかで使い分けます。

注意

反射光対策を行っていても、銅は突発的に反射が強まる瞬間があり、加工機の保護機構(反射光モニタリング・緊急停止)が備わっているかが安全面で重要です。発注先を選ぶ際は、銅の加工実績があるかどうかも確認材料になります。

他の切断方法との比較

板厚が厚い・精度を優先する・コストを抑えたいなど、目的によって最適な切断方法は変わります。

銅ブスバーの切断では、レーザー以外にもシャーリング(せん断)・プレス抜き・ワイヤーカット(放電加工)・ウォータージェットが使われます。それぞれの特徴を整理します。

切断方法の比較

切断方法 対応板厚の目安 精度・特徴 コスト
シャーリング(せん断) 3〜12mm程度 直線切断に強い。バリが出やすい 低い
ファイバーレーザー 〜10mm程度 複雑形状・小ロットに強い。熱影響あり 中程度
ワイヤーカット(放電加工) 厚板でも対応 高精度・バリなし。速度は遅い 高い
ウォータージェット 0.1〜100mm程度 非加熱で歪みが出にくい。厚板向き やや高い

切断方法の比較

シャーリング(せん断)

板厚3〜12mm程度 / バリが出やすい / コスト低い

ファイバーレーザー

板厚〜10mm程度 / 複雑形状向き・熱影響あり / コスト中程度

ワイヤーカット(放電加工)

厚板でも対応 / 高精度・バリなし・速度は遅い / コスト高い

ウォータージェット

板厚0.1〜100mm程度 / 非加熱で歪みにくい / コストやや高い

注意

レーザーは熱で切断するため、切断面にわずかな熱影響層(硬化・酸化)が生じます。通電部の接続面として使う場合は、めっきや仕上げ加工との組み合わせで影響が出ないか確認が必要です。厳密な寸法精度や熱影響を避けたい厚板には、ワイヤーカットやウォータージェットが選ばれる場面が増えます。

切断方法を選ぶときの判断基準

板厚・形状の複雑さ・数量・納期のどれを優先するかで、適した切断方法は変わります。

切断方法を選ぶときの確認ポイント

  • 板厚はどのくらいか(薄板か、厚板か)
  • 形状は直線中心か、穴あけ・複雑形状を含むか
  • 数量は量産か、試作・小ロットか
  • 切断面に熱影響層が残っても問題ない用途か
  • 納期はどのくらい見ているか

例えば、直線中心で数量がまとまっている場合はシャーリングが最もコストを抑えやすい選択です。一方、穴あけや複雑な外形を含む小ロット・試作では、型を作らずに切れるレーザーが短納期に向いています。厚板で寸法精度と熱影響の無さを優先する場合は、ワイヤーカットかウォータージェットが候補になります。

当社では加工技術のページで対応している工程の全体像を紹介しています。板厚や形状によって切断方法を使い分けており、曲げ・穴あけ・めっきまでを一貫して対応できる体制です。切断だけを依頼したい場合の考え方は、別記事「銅板の切断だけ依頼できる?板厚・精度・単価の目安」でも詳しく解説しています。

発注時に確認しておきたいこと

切断方法によって仕上がりの熱影響・バリ・精度が変わるため、図面に用途と優先事項を書き添えると手戻りが減ります。

銅ブスバーの切断を依頼する際は、板厚・数量に加えて「通電部として使うか」「後工程でめっき・曲げを行うか」を伝えると、加工会社側で切断方法を選定しやすくなります。特に接続面として使う箇所は、熱影響層の有無が接触抵抗に影響することがあるため、優先したい条件(精度/コスト/納期)を明確にしておくと良いでしょう。銅ブスバーのメリットも踏まえた上で、材質(タフピッチ銅・無酸素銅)と合わせて相談すると、最適な加工方法を提案してもらいやすくなります。

よくあるご質問

銅はレーザーで切断できないというのは本当ですか?

完全にできないわけではありません。従来のCO2レーザーは銅の反射率の高さで不安定になりやすいですが、ファイバーレーザーであれば板厚10mm前後までは実用的に切断できる加工会社が増えています。

銅のレーザー切断で対応できる板厚はどのくらいですか?

加工機の出力によって異なりますが、目安として1.5kW前後で2〜3mm、3kW前後で4〜5mm、6kW前後で5〜6mm(条件により10mm程度)です。正確な対応可否は、使用する加工機と材質で試し切りの確認をおすすめします。

厚い銅板を切断したい場合はどの方法が向いていますか?

板厚が厚くなるほど、熱影響の少ないウォータージェットやワイヤーカットが候補になります。シャーリングも3〜12mm程度の板厚に対応しますが、バリが出やすい点に注意が必要です。

レーザー切断した銅ブスバーの切断面はそのまま使えますか?

用途によります。切断面に熱影響層(硬化・酸化)が生じるため、接続・通電部として使う場合は、めっきやバリ取りなどの後工程と合わせて確認することをおすすめします。

青色レーザーは銅の切断に使われていますか?

2026年時点では、青色半導体レーザーはEV向けモーターやバッテリーの銅溶接での採用が先行しており、切断用途としての普及はこれからの段階です。現在の銅ブスバー切断の主力はファイバーレーザーです。

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