UPS・非常用発電機の切替盤ブスバー設計|短絡強度と電流分担
UPS(無停電電源装置)・非常用発電機・切替盤(ATS)をつなぐ母線(ブスバー・バスバー)は、通常の受配電盤の母線とは違う条件にさらされます。切替の瞬間の短時間過負荷、発電機側の短絡強度、並列運転時の電流分担の3点を押さえておかないと、試運転や負荷試験の段階でトラブルが表面化しやすい部位です。この記事では、設計・発注の両方の立場から、母線に求められる要件と図面に落とし込む際の確認ポイントを整理します。
UPS
非常用発電機
切替盤
ブスバー
短絡強度
電流分担
ATS
BCP
この記事の内容
UPS・非常用発電機・切替盤の母線に求められる3つの条件
UPS・非常用発電機・切替盤をつなぐ母線(ブスバー/バスバー)は、「短時間過負荷への耐量」「短絡強度」「並列運転時の電流分担」の3条件を同時に満たす必要があります。
通常の配電盤の母線は定格電流を安定して流せればよい設計が中心ですが、非常電源系統の母線は切替という過渡的な現象を前提に考える必要があります。停電検出から発電機起動、商用との切替、場合によっては複数台の並列投入まで、短時間に電流条件が変化する区間があるためです。
通常の配電盤母線
- 定格電流を連続して流せることが中心
- 温度上昇・断面積の設計が主眼
- 電源構成はほぼ一系統
UPS・発電機・切替盤の母線
- 切替直後の短時間過負荷を見込む
- 発電機側の短絡強度を個別に確認
- 並列運転時は電流分担のばらつきを考慮
前提
「ブスバー」はJIS等の文書では「母線」「導体」と表記されることが多く、現場では「バスバー」と呼ばれることもあります(呼び方は同じ部材を指します)。本記事では製品名としては「銅ブスバー(バスバー)」、回路の要素としては「母線」の表記を使い分けます。
UPSのバイパス母線は短時間過負荷にどう耐えるか
UPSの出力・バイパス母線は、起動電流やインバータ切替時の短時間過負荷を定格電流の100%を超える条件で一定時間流せる設計にしておく必要があります。
UPSは平常時はインバータ給電、インバータ異常時や保守時には商用側へ無瞬断で切り替える「バイパス回路」を持つ構成が一般的です。並列冗長構成では複数台のUPSの出力とバイパスが共通母線に集約されるため、1台が停止・保守で切り離された際に、残りの台数で負荷を受け持つ分だけ母線を流れる電流が増えます。
UPS・発電機系統で考慮される短時間過負荷の考え方(目安)
| 想定される状態 | 電流の目安 | 継続時間の目安 |
|---|---|---|
| 通常運転 | 定格電流(100%) | 連続 |
| 軽度の過負荷(起動時など) | 定格の110〜125%程度 | 数分〜十数分程度 |
| 短時間の過負荷(保守時の片系集中など) | 定格の150%程度 | 数十秒〜数分程度 |
UPS・発電機系統で考慮される短時間過負荷の考え方(目安)
通常運転
定格電流(100%)・連続
軽度の過負荷(起動時など)
定格の110〜125%程度・数分〜十数分程度
短時間の過負荷(保守時の片系集中など)
定格の150%程度・数十秒〜数分程度
注意
上記の倍率・時間は機種・仕様によって幅があり、メーカーのカタログ値や仕様書に従うのが前提です。母線側の設計では、この過負荷条件でも許容温度上昇を超えないよう、定格電流ではなく過負荷時の電流値を基準に断面積を決めることが重要です。
非常用発電機の並列運転で母線の電流分担はどう決まるか
発電機を並列運転するときの母線の電流分担は、各機の端子電圧や調速機の特性がそろっているかで決まり、ずれが大きいほど無効電流や偏った負荷分担が母線に流れます。
複数台の非常用発電機を並列運転する場合、各発電機の定格電圧・周波数が一致していることに加え、電圧波形や位相がそろっていることが前提になります。この一致が崩れると、発電機間に無効電流(横流)が流れ、見かけ上の負荷以上の電流が共通母線の一部区間に重なって流れることがあります。
並列運転の母線設計で確認しておきたいこと
- 各発電機からの接続点を母線上でどう配置するか(1点に電流が集中しない配置)
- 負荷分担がずれた場合に想定される最大電流(カタログ上の許容偏差を含めて)
- 解列(1台停止)時に残りの台数へ電流が移る過渡的な状態
- 共通母線から分岐する幹線側の保護協調(母線だけでなく下流側も含めて確認)
並列運転台数と、1台停止時に残りが受け持つ負荷の増加割合(目安)
台数構成が多いほど1台停止時の電流増加率は小さくなりますが、母線側は「全台正常時の定格」ではなく「1台(または保守計画に応じた複数台)が止まった状態」を基準に断面積を決めておくと、保守計画と設計の整合が取りやすくなります。
切替盤(ATS)の母線で確認すべき短絡強度
切替盤の母線は、接続される遮断器の定格遮断電流に対して機械的強度・熱的強度の両方を持たせる必要があり、支持間隔と絶縁支持物の耐衝撃性もあわせて確認します。
母線の短絡強度は大きく「機械的強度(短絡時の電磁力に耐えるか)」と「熱的強度(短絡電流が流れる間の温度上昇に耐えるか)」の2つに分けて考えます。一般に分電盤・配電盤の仕様では、母線はその回路を保護する遮断器の定格遮断電流に対して機械的・熱的強度を持つものとされ、母線の絶縁支持物も短絡時に生じる衝撃に十分耐える材質(無機絶縁物または難燃性有機絶縁物)とすることが求められます。
熱的強度の考え方
短時間(1秒程度を想定した)の断熱的な温度上昇として、銅の無被覆母線では断面積1mm²あたりおおむね140A台前半の電流密度が、許容される温度上昇の目安として設計の参考値に使われることがあります。実際の許容値は規格・仕様書・導体の初期温度条件によって異なるため、採用する基準は発注元の仕様書で必ず確認してください。
注意
切替盤は「発電機側」「商用側」それぞれで短絡電流の大きさが異なります。母線の短絡強度は、高い方の短絡電流を基準に決める必要があり、商用側だけを基準にすると発電機側の短絡条件を見落とすことがあります。
試運転・負荷試験で母線に起きやすいトラブルと対策
試運転・負荷試験では、設計上の想定より局所的に電流や温度が偏る区間が見つかりやすく、接続部の締結管理と温度測定で早期に把握することが対策になります。
商用電源 ──┬── 切替盤(ATS) ──┬── 共通母線 ──┬── 負荷
│ │ │
非常用発電機 ─┘ 並列運転時の UPS出力・
(1〜複数台) 接続点が集中 バイパス
コツ
負荷試験(模擬負荷試験・実負荷試験)の段階で、母線の接続点ごとにサーモグラフィや赤外線温度計で温度を確認しておくと、設計段階では見えにくかった接触抵抗の偏りや、電流集中している箇所を実測で把握できます。
注意
並列運転の切替・解列を繰り返す試験では、母線の締結部に機械的な繰り返し応力がかかります。試験後に増し締めトルクの確認を行い、初期緩みが出ていないかをチェックすることをおすすめします。
2026年、データセンター・BCP需要拡大で調達はどう変わるか
2026年はデータセンター向けを中心に非常用発電機・UPS需要が拡大しており、大型発電機の納期長期化に伴って、切替盤・母線側も複数年の調達計画に組み込む動きが出ています。
最新の状況(2026年時点)
データセンター向け非常用発電機・バックアップ電源の市場は2026年時点でも拡大が続いており、BCP(事業継続計画)の観点から複数台構成・並列運転の採用が増えています。一方で大口径エンジンを使う大型発電機は供給網の制約から納期が長期化する傾向があり、事業者側では複数年にわたる枠組み契約や、地域の組立拠点から出荷されるモジュール化されたユニットへの切り替えが進んでいます。母線・切替盤側も発電機の仕様確定を待たずに先行して検討を始めるケースが増えており、データセンターの受配電とブスバー設計やデータセンターPDUと銅ブスバーの設計入力とあわせて、非常電源側の母線仕様も早めに固めておくことが納期短縮につながります。
当社では曲げ・穴あけ・めっきの手配まで対応する加工技術を軸に、非常電源系統の母線についても図面段階からご相談いただけます。
よくあるご質問
UPSの母線と一般の配電盤の母線は、材質や太さを変える必要がありますか
材質(銅・めっきの種類)自体を変える必要は通常ありませんが、断面積は定格電流ではなく、想定される短時間過負荷時の電流値を基準に決めることをおすすめします。保守時に片系へ負荷が集中する条件も含めて検討してください。
非常用発電機を並列運転する場合、母線の設計で一番見落とされやすい点は何ですか
全台が正常に稼働している状態だけを基準にしてしまう点です。1台が保守・故障で解列した際に残りの台数が受け持つ電流の増加分まで含めて母線の断面積・支持間隔を決めておくことが重要です。
切替盤(ATS)の母線の短絡強度は、商用側と発電機側のどちらを基準にすればよいですか
短絡電流が大きい方を基準にします。一般的には商用電源側の短絡電流の方が大きくなる場合が多いですが、系統構成によって異なるため、両側の短絡電流を確認したうえで高い方に合わせて母線の機械的・熱的強度を決める必要があります。
試運転で母線の接続部に異常が出た場合、どのタイミングで対応すればよいですか
負荷試験の段階でサーモグラフィ等により温度の偏りが確認できた時点で対応するのが望ましいです。本稼働後に不具合が出ると停止を伴う対応になりやすいため、試験段階での増し締め・接触面の確認で早期に芽を摘んでおくことをおすすめします。
UPS・発電機・切替盤向けの銅ブスバーも、小ロットや試作で発注できますか
はい、対応しています。図面がない段階でも、用途(UPS/発電機/切替盤のどこに使うか)と想定電流値、おおよその設置寸法をお伝えいただければ、形状や板厚のご相談から対応します。
