用途・事例

データセンターの受配電とブスバー|大電流化で変わる設計要件

データセンターの受配電で使われるブスバーは、受電から変圧器・主幹盤・UPS・分電盤(PDU)を経てラックへ至る「大電流が集まる区間」の導体です。AIサーバーの普及でラック1本あたりの電力が急増し、2020年頃までの盤内設計の常識では断面積が足りない場面が増えました。この記事では、2026年時点でデータセンター向けブスバーに求められる要件を、断面積の決め方・高電圧直流(800VDC)化の影響・調達の実務まで、数値と表で整理します。

データセンター
受配電設備
銅ブスバー
大電流
高密度ラック
800VDC
断面積 選定

2026年時点の状況

国際エネルギー機関の推計では、世界のデータセンターの消費電力量は2022年の約460TWhから2026年には1,000TWh規模に達する可能性があるとされ、2026年にはデータセンター電力の約3割をAI最適化サーバーが占めると見込まれています。銅相場も連動して高値圏で、LME銅は2026年前半に1トン13,000〜14,500ドル台で推移しました。「電流を増やす」「銅を厚くする」で押し切る設計は、2026年にはスペースとコストの両面で通らなくなってきています。

データセンターのどこにブスバーが使われるか

データセンターでブスバー(バスバー)が使われるのは、特別高圧・高圧の受電設備から変圧器二次側、主幹盤・UPS・分電盤の内部、そしてラック給電までの「電流が大きく、電線では本数が増えすぎる区間」です。ケーブルより断面積あたりの放熱がよく、盤内で整然と分岐できることが選ばれる理由です。

受電からラックまでの流れ(一般的な構成例)

 特別高圧/高圧受電
      │
   [変圧器]  ← 二次側は低圧大電流。ここから銅バーの領域
      │
   [主幹盤]  ── 盤内主母線(ブスバー)
      │
   [UPS]     ── 直流母線・バッテリ接続部もブスバー
      │
   [分電盤/PDU] ── 分岐母線 + 遮断器接続部
      │
   [ラック給電] ── ラックPDU・サーバー内の低圧大電流バー
  

とくに変圧器二次側からUPS周辺は、電圧が低いぶん同じ電力でも電流が大きくなり、導体の断面積が支配的になります。ブスバーそのものの役割や、電線と比べたときの位置づけはブスバーとはで基礎から整理しています。

要点:ブスバーが効くのは「電圧が低く、電流が大きく、分岐が多い」区間。データセンターはその条件が揃っている。

なぜ大電流化したのか(2010年〜2026年の変化)

大電流化の直接の原因は、ラック1本あたりの搭載電力が15年ほどで二桁倍になったことです。空冷の汎用サーバーが中心だった頃はラック数kVAで足りましたが、GPUを高密度に積むAI用途では1ラックで数十kW〜100kW超が現実の要求になりました。

ラック1本あたりの電力の推移(公表資料に見られる代表的な水準)

時期 主な用途 ラック電力の目安
2000年代後半 汎用サーバー(空冷) 1〜3kVA
2015年前後 仮想化・集約 3〜6kVA
2020年前後 高密度ラック 6〜10kW
2023年前後 GPUサーバー導入期 30〜40kW
2026年(現在) 液冷・AI学習/推論 100kW超の事例
2027年以降の構想 次世代AIラック 1MW級

ラック1本あたりの電力の推移(公表資料に見られる代表的な水準)

2000年代後半/汎用サーバー(空冷)

1〜3kVA

2015年前後/仮想化・集約

3〜6kVA

2020年前後/高密度ラック

6〜10kW

2023年前後/GPUサーバー導入期

30〜40kW

2026年(現在)/液冷・AI学習/推論

100kW超の事例

2027年以降の構想/次世代AIラック

1MW級

数字は施設・世代によって幅がありますが、方向は一つ、「同じ床面積により多くの電力を通す」です。導体側から見れば、これは断面積・放熱・接続部の三つを同時に厳しくする変化になります。

注意:ラック電力の増加は「電流」の増加として効く

電圧が同じままラック電力が10倍になれば、導体を流れる電流も10倍になります。導体の発熱は電流の二乗に比例するため、電流10倍は発熱100倍です。断面積を増やして電流密度を下げない限り、温度上昇は成立しません。ここを見誤ると、盤は入るのに運転できない、という設計になります。

要点:AI用途でラック電力は桁が変わった。導体側では「電流の二乗で効く発熱」との勝負になる。

大電流ブスバーの断面積はどう決めるか

断面積は、「流したい電流 ÷ 許容できる電流密度」で当たりを付け、温度上昇・設置条件・短絡強度で検証して確定します。銅バーの電流密度は、屋内・自然空冷であればおおむね1.5〜2.5A/mm²の範囲に収まることが多く、断面積が大きくなるほど(放熱面積の比率が下がるため)密度は下げる必要があります。

必要断面積 (mm²) ≒ 流したい電流 (A) ÷ 許容電流密度 (A/mm²)
断面積 (mm²) = 板厚 (mm) × 幅 (mm)

板厚×幅ごとの目安(早見表)

銅バー1枚あたりの許容電流の目安(屋内・自然空冷・温度上昇約30Kを想定)

板厚×幅 断面積 目安電流 電流密度
3×20mm 60mm² 約150A 2.5A/mm²
3×30mm 90mm² 約200A 2.2A/mm²
5×40mm 200mm² 約400A 2.0A/mm²
6×50mm 300mm² 約550A 1.8A/mm²
8×80mm 640mm² 約1,000A 1.6A/mm²
10×100mm 1,000mm² 約1,400A 1.4A/mm²

銅バー1枚あたりの許容電流の目安(屋内・自然空冷・温度上昇約30Kを想定)

3×20mm/断面積 60mm²

約150A(2.5A/mm²)

3×30mm/断面積 90mm²

約200A(2.2A/mm²)

5×40mm/断面積 200mm²

約400A(2.0A/mm²)

6×50mm/断面積 300mm²

約550A(1.8A/mm²)

8×80mm/断面積 640mm²

約1,000A(1.6A/mm²)

10×100mm/断面積 1,000mm²

約1,400A(1.4A/mm²)

この表は「当たりを付ける」ためのもの

実際の許容電流は、周囲温度・盤内の換気・バーの向き(立て置きか平置きか)・塗装や絶縁の有無・並列枚数・接続部の状態で大きく変わります。数値は設計の出発点として使い、最終的には適用する規格と実機の温度検証で確定してください。盤内導体の電流容量については、JIS C 8480(キャビネット形分電盤)など、対象機器に適用される規格の規定を確認するのが確実です。

コツ:同じ断面積なら「薄く広く」が有利

断面積が同じでも、10×60mm(600mm²)より6×100mm(600mm²)のほうが表面積が広く、放熱の面では有利になります。盤内の高さ方向に余裕があるなら、厚みを増やすより幅を広げるほうが温度上昇を抑えやすい構成です。ただし幅を広げすぎると曲げ加工の自由度と支持スパンの条件が変わるため、加工性と併せて決めます。

要点:断面積は電流密度で当たりを付け、温度上昇で確定する。表の数字は出発点であって答えではない。

800VDC化でブスバー設計はどう変わるか

高電圧直流(800VDC)化の効果は、一言でいえば「同じ電力を、より少ない電流で送れるようになる」ことです。電力が同じなら電流は電圧に反比例するため、導体の断面積、つまり銅の使用量を大幅に減らせます。半導体メーカー各社が2027年以降の1MW級ラックを見据えて800VDCアーキテクチャを提唱しているのは、この一点が理由です。

1MWを送るときに導体に流れる電流(電圧別・力率1で計算)

54VDC
約18,500A

400VDC
約2,500A

三相415VAC
約1,390A

800VDC
約1,250A

公開されている試算では、1MW級ラックを従来の54VDCで給電しようとすると、ラック1本のブスバーだけで200kg近い銅が必要になるとされています。1GW規模の施設に置き換えれば、ラック内導体だけで数百トンの銅です。800VDC化によってこの導体量を半分程度まで減らせるという見方が、業界で共有されつつあります。

高電圧化で楽になること

  • 同じ電力で電流が下がり、断面積を小さくできる
  • 導体の発熱(I²R)が大幅に減る
  • 銅の重量・材料費・床荷重が下がる
  • 変換段数が減り、系統全体の効率が上がる

逆に厳しくなること

  • 絶縁距離(沿面・空間)の確保が必要になる
  • 直流のため遮断・アークの扱いが交流と異なる
  • 絶縁被覆・支持物の材質選定がシビアになる
  • 接続部の信頼性要求が上がる(活線作業の制約)

前提:高電圧化は「銅が不要になる」話ではない

800VDC化で減るのはラック内・機器内の低圧大電流区間の導体量です。施設側の受変電から主幹・UPSに至る区間は依然として大電流であり、むしろ施設全体の容量が増えるぶん、盤内主母線の要求は上がります。高電圧化は「銅バーの用途が上流側へ移る」変化と捉えるのが実態に近いといえます。

要点:800VDC化は電流を1/10以下に下げる。減るのはラック内の銅で、上流の盤内母線はむしろ大容量化する。

データセンター向けで失敗しやすい5点

データセンター向けブスバーで手戻りになりやすいのは、接続部・並列枚数・交流の表皮効果・熱伸縮・保守性の5点です。いずれも「断面積は足りているのに温度が下がらない」「据え付けてから直せない」という形で表面化します。

設計時に確認したい5点

  • 接続部の接触抵抗:発熱の多くは導体本体ではなく締結部で起きる。接触面積・面粗さ・めっき・締付トルクを仕様に落とす
  • 並列枚数の頭打ち:2枚並べても電流は2倍にならない。近接効果と放熱条件の悪化で、3枚目以降は効率が落ちる
  • 交流の表皮効果:交流では厚みを増しても中心部に電流が流れにくい。厚板1枚より薄板の分割・積層が有利な場合がある
  • 熱伸縮の逃がし:銅の線膨張は約17×10⁻⁶/K。長い母線では温度差40Kで1mあたり約0.7mm伸びる。長孔や可撓継手で逃がす
  • 保守できる形状か:24時間止められない施設では、点検・増し締め・サーモグラフィ撮影ができる配置かどうかが設計要件になる

コツ:接続部は「面圧」で考える

接続部の性能を決めるのは見かけの重なり面積ではなく、実際に金属同士が接触している微小な点の総和です。重なりを大きくするより、平面度を出し、適正なトルクで面圧を確保するほうが効きます。錫めっきや銀めっきは酸化被膜の生成を抑えて接触抵抗の経年変化を小さくする目的で使われます。めっきの使い分けは銅ブスバーへのめっきで詳しく整理しています。

要点:温度異常のほとんどは導体本体ではなく接続部で起きる。仕様は「締結」まで書き切る。

2026年の銅相場と調達で打てる手

2026年の銅相場は歴史的な高値圏にあり、LME銅価格は2026年前半に1トンあたり13,000〜14,500ドル台で推移しました。AIデータセンター・EV・送配電網の更新が同時に需要を押し上げている一方、新規鉱山の立ち上がりが追いついていないことが背景として指摘されています。ある調査機関は2026年の平均を約12,100ドル、その後2030年に向けて12,000〜14,000ドルを中心としたレンジを見込んでいます。

注意:相場は予測せず、変動に強い設計にする

相場の先行きを当てにいくより、「材料費比率の高い部品ほど、形状と歩留りで効かせる」ほうが確実です。銅ブスバーの見積りは材料費の比重が大きいため、板取りの効率が単価にそのまま跳ね返ります。なお本記事の相場水準は執筆時点(2026年8月)に公表されていた値であり、投資判断や見積りの根拠としてそのまま使わないでください。

材料高のなかでコストを抑える打ち手

打ち手 何が効くか 相談のタイミング
流通寸法に寄せる 材料手配が早く、端材が減る 設計初期
板取りを前提に形状を決める 歩留りが上がり材料費が下がる 設計初期
公差を必要な箇所だけ厳しくする 加工工数と検査工数が下がる 図面作成時
めっき範囲を接続部に限定する 表面処理費と納期を圧縮できる 図面作成時
まとめ発注・分納にする 段取り替えの回数が減る 見積り依頼時

材料高のなかでコストを抑える打ち手

流通寸法に寄せる

材料手配が早く端材が減る/設計初期

板取りを前提に形状を決める

歩留りが上がり材料費が下がる/設計初期

公差を必要な箇所だけ厳しくする

加工・検査工数が下がる/図面作成時

めっき範囲を接続部に限定する

表面処理費と納期を圧縮/図面作成時

まとめ発注・分納にする

段取り替えの回数が減る/見積り依頼時

当社(株式会社石垣商店・名古屋市守山区)は、変圧器・配電盤・受配電設備・電池関連向けの銅ブスバー加工を専門にしています。切断・穴あけ・曲げ・タップ・めっき手配までを一貫して扱うため、「この形状なら板取りが良くなる」「この曲げなら工程が1つ減る」といった段階での相談に対応できます。対応範囲は加工技術のページをご覧ください。

要点:相場は動かせないが、形状・公差・めっき範囲・発注単位は動かせる。効くのは設計初期の相談。

よくあるご質問

データセンターのブスバーは銅とアルミのどちらを選ぶべきですか?

省スペースで大電流を流す必要がある受配電設備や高密度ラックでは、一般に銅が選ばれます。銅の導電率は約100%IACSでアルミの約61%IACSより高く、同じ電流なら断面積を小さくできるためです。一方アルミは比重が銅の約3分の1(2.70対8.94)と軽く、設置スペースに余裕があり軽量化を優先する用途で採用されます。

ブスバーの許容電流はどの規格を参照すればよいですか?

適用する機器の規格に従うのが基本で、盤内導体であればJIS C 8480(キャビネット形分電盤)などに帯状導体の電流密度に関する規定があります。ただし許容電流は周囲温度・換気・バーの向き・並列枚数で変わるため、規格値で当たりを付けたうえで実機の温度上昇試験で確認する進め方が確実です。

800VDC化が進むと銅ブスバーは使われなくなりますか?

使われなくなることはありません。800VDC化で減るのはラック内・機器内の低圧大電流区間の導体量であり、施設側の受変電から主幹盤・UPSに至る区間は依然として大電流のままです。むしろ施設全体の容量が増えるため、盤内主母線に求められる断面積と信頼性は上がる方向にあります。

ブスバーを2枚並列にすれば、流せる電流も2倍になりますか?

2倍にはなりません。バーを近づけて並べると、近接効果によって電流が外側に偏り、内側の面は放熱条件も悪くなるためです。実務では2枚で1.6〜1.8倍程度、3枚以上ではさらに効率が落ちる前提で計画し、枚数を増やすより1枚あたりの幅を広げるか、間隔を空けて放熱を確保する検討を先に行います。

データセンター案件は数量が読めないのですが、小ロットや短納期でも依頼できますか?

対応可能です。試作・小ロット・短納期の依頼を日常的に扱っており、1個からの製作もご相談いただけます。図面が固まっていない段階でも、手書きスケッチや現物の写真、あるいは「この電流を流したい」という条件だけでも、寸法や形状の候補をご提案できます。

データセンター向けの銅ブスバーは、断面積の計算だけでは決まりません。接続部の作り方、放熱を意識した形状、保守できる配置、そして材料手配のしやすさまで含めて初めて成立します。設計の早い段階でご相談いただくほど、選べる手が多く残ります。

銅ブスバーの加工・お見積りは、お気軽にご相談ください

図面1枚から、手書きスケッチや現物の写真でもご相談いただけます。試作・小ロット・短納期にも対応しています。

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