基礎知識

銅と真鍮(黄銅)の導電率の違い|通電部材に使わない理由

銅と真鍮(黄銅)はどちらも銅を含む金属ですが、導電率には大きな差があります。結論から言うと、真鍮の導電率は銅のおよそ25〜30%程度しかなく、同じ電流を流すには断面積を3〜4倍に増やす必要があります。この記事では、銅ブスバー(バスバー)のような通電部材に真鍮が使われない理由と、それでも真鍮が端子やねじ込み部品に選ばれる場面を、数値と用途の両面から整理します。

銅
真鍮
黄銅
導電率
%IACS
ブスバー
銅合金

銅と真鍮(黄銅)は何が違うのか

真鍮とは、銅に亜鉛を加えた合金(黄銅)であり、銅そのものではありません。

真鍮とは、銅(Cu)に亜鉛(Zn)を加えた合金の通称で、正式には「黄銅」と呼びます。銅の色味を保ちながら加工性や強度を高めた材料で、5円硬貨や金管楽器、水栓金具などに使われていることでも知られています。一方、銅ブスバーに使われるのはタフピッチ銅(C1100)や無酸素銅(C1020)といった「純銅」に近い材料で、亜鉛などの添加元素をほとんど含みません。

この違いが電気的な性質に大きく効いてきます。純銅の結晶格子はほぼ銅原子だけで構成されるため、自由電子が動きやすく電気抵抗が小さくなります。真鍮は亜鉛原子が銅の結晶格子に混ざり込むことで格子が乱れ、自由電子の移動が妨げられます。その結果、真鍮は銅よりも電気を通しにくい金属になります。

前提:導電率の指標「%IACS」

%IACS(International Annealed Copper Standard)は、国際標準軟銅の導電率を100%とした指標です。数値が大きいほど電気を通しやすく、純銅は100%前後、金属材料の導電性を比較するときの基準として使われます。

導電率はどれくらい違うか(数値で比較)

代表的な黄銅の導電率は純銅の25〜30%程度で、同じ電流を流すには断面積を約3〜4倍にする必要があります。

銅と真鍮(黄銅)、参考として比較されることの多いアルミニウムを並べると、次のような目安になります。真鍮は組成(銅と亜鉛の比率)によって数値に幅がありますが、一般的な黄銅で25〜30%IACS程度、快削性を高めた黄銅(ねじ加工用途などに使われる材料)でも同程度の水準です。

代表的な導体材料の導電率の目安

材料 主な組成 導電率(目安)
純銅(タフピッチ銅・無酸素銅) Cu 99.9%以上 約100%IACS
一般的な黄銅(真鍮) Cu 約65〜70%・Zn 約30〜35% 約25〜30%IACS
快削黄銅(ねじ加工用途など) Cu 約58〜62%・Zn・Pb少量 約25〜28%IACS
アルミニウム(参考) Al 99%以上 約61%IACS

代表的な導体材料の導電率の目安

純銅(タフピッチ銅・無酸素銅)

約100%IACS

一般的な黄銅(真鍮)

約25〜30%IACS

快削黄銅(ねじ加工用途など)

約25〜28%IACS

アルミニウム(参考)

約61%IACS

導電率の比較(純銅を100%とした場合)

純銅
100%

アルミ
61%

黄銅(真鍮)
28%

ここで実務上重要なのは「導電率が低い=抵抗が高い」ため、同じ電流を流すには断面積を増やす必要がある、という点です。導電率が銅の約1/4であれば、同じ電流での発熱量(抵抗損失)を同水準に抑えるには、単純計算で断面積をおよそ3〜4倍にしなければなりません。真鍮を主要な通電経路に使うと、部材が大型化・重量増になり、銅ブスバーを使うメリット(省スペースで大電流を流せること)が失われてしまいます。

なお、真鍮の導電率は組成によって幅があります。亜鉛の含有量が増えるほど結晶格子の乱れが大きくなり、導電率は下がる傾向にあります。逆に銅の含有比率が高い黄銅(丹銅など)は、真鍮の中では比較的導電率が高くなりますが、それでも純銅の水準には遠く及びません。「真鍮だから一律にこの数値」と決めつけず、実際に使う合金の組成を確認したうえで比較することが大切です。

必要断面積の目安 ≒ 銅での断面積 ×(100 ÷ 真鍮の導電率%IACS)

なぜ真鍮は通電部材に使われないのか

真鍮は抵抗が高く発熱しやすいため、変圧器や配電盤など大電流を扱う主要な導体には使われません。

変圧器・配電盤・受配電設備・電池関連設備のように、数百A〜数千Aクラスの大電流を扱う設備では、導体の抵抗損失がそのまま発熱として現れます。抵抗が高い材料を使うと、同じ電流でも発熱量が増え、絶縁物の劣化や接触部の緩みにつながるリスクが高まります。このため、主要な通電経路には導電率の高い純銅(または断面積を確保しやすいアルミニウム)が選ばれ、真鍮が使われることはほとんどありません。

注意:銅相場が高くても真鍮への置き換えは基本的に不向き

2026年も銅の建値は高水準が続いていますが、主要な通電経路を真鍮に置き換えると、断面積の大型化・発熱量の増加・部材重量の増加という形で別のコストとリスクが発生します。材料費だけを見て代替材料を検討する場合は、導電率(抵抗)への影響を必ず確認してください。

銅ブスバーのメリットで触れているとおり、銅が選ばれるのは「同じ電流を、より小さな断面積・より軽い重量で流せる」ためです。真鍮はこの条件を満たせないため、代替材料としては基本的に検討の対象になりません。

それでも真鍮が電気部品に使われる場面

真鍮は強度・加工性・耐食性のバランスに優れるため、端子やねじ込み部品など小型の電気部品には広く使われます。

真鍮は導電性だけで見れば銅に劣りますが、電気部品全体で見ると決して珍しい材料ではありません。コネクタの端子、電池ボックスの接点、ねじ込み式の締結部品などには、真鍮(特に快削性を高めた黄銅)がよく使われています。理由は次のようなバランスの良さにあります。

真鍮が選ばれる理由

  • 純銅より硬く、ねじ込みなど繰り返しの機械的な力に強い
  • 切削加工性が高く、複雑な形状の小物部品を安定して作れる
  • 表面に酸化被膜ができ、内部までの腐食が進みにくい
  • 純銅よりコストを抑えやすい場合がある

真鍮が向かない用途

  • 変圧器・配電盤など大電流を流す主要な導体
  • 発熱を抑えたい高負荷率の通電経路
  • 断面積・重量を小さく抑えたい省スペース設計
  • 電磁力や熱的強度が問われる短絡電流の経路

つまり真鍮は「電流を大量に流す主役」ではなく、「電流の通り道の一部で、機械的な役割も同時に果たす脇役」として使われる材料と考えると整理しやすくなります。分電盤・制御盤の中でも、主母線や分岐母線といった大電流を流す部分は銅で、端子台のねじやコネクタのピンは真鍮、という役割分担が一般的です。

銅部材と真鍮部品を組み合わせるときの注意

銅と真鍮を接触させる設計では、異種金属接触腐食と接触抵抗の変化を確認する必要があります。

銅ブスバーの締結部に真鍮製のねじやナットを使う設計も珍しくありません。この場合、銅とアルミニウムを直接接続するときほど深刻ではないものの、異種金属を接触させることに変わりはなく、湿気や塩分が多い環境では電位差による腐食(電食)が進む可能性があります。接続部の信頼性を保つには、次のような対策が有効です。

銅×真鍮の接続部で確認すること

  • 設置環境(屋外・多湿・塩害地域かどうか)を確認する
  • 接続面へのめっき(錫・ニッケルなど)の要否を検討する
  • 定期点検で接続部の変色・緩みを確認する周期を決める
  • 大電流が流れる接続面は、真鍮ではなく銅材の端子・座金を優先する

めっきの使い分けについては銅ブスバーへのめっきで詳しく解説しています。接続部の信頼性を左右する要素なので、図面段階で仕様を詰めておくことをおすすめします。

コツ:迷ったら「主要導体は銅、締結部品は用途に応じて」で考える

大電流が流れる本体部分は銅(または設計条件次第でアルミ)、ねじやナットなど機械的な役割が中心の部品は真鍮やステンレスなど、部材ごとに求められる性能で材料を分けて考えると、過不足のない設計になります。

発注・設計で確認しておきたいポイント

図面には材料の指定だけでなく、通電経路として使う部位かどうかを明記すると手戻りが減ります。

銅ブスバーの加工を発注する際、部品の一部に真鍮など銅以外の材料を使いたい場合は、次の情報を伝えるとスムーズです。

発注時に伝えるとよい情報

  • どの部位が主要な通電経路で、どの部位が締結・固定用の部品か
  • 想定する電流値と使用環境(屋内外・湿度・振動の有無)
  • 異種金属を接触させる箇所があるか(めっきの要否判断に関わる)
  • 図面で材質記号(C1100・C1020・黄銅の規格記号など)を明記する

ブスバーとはで解説しているとおり、銅ブスバー(バスバー)は「大電流を、より小さな断面積で流すための導体」です。材料選定に迷う場合は、図面や仕様が固まっていない段階でも相談いただけます。

よくあるご質問

真鍮(黄銅)は電気を通しますか?

はい、真鍮(黄銅)は金属なので電気を通します。ただし導電率は純銅の約25〜30%程度で、銅に比べると電気を通しにくい材料です。

真鍮の導電率は銅の何%くらいですか?

代表的な黄銅で純銅の約25〜30%IACS程度です。組成(亜鉛の含有量など)によって数値に幅がありますが、大きく変わることはありません。

なぜ端子には真鍮が使われるのに、ブスバー本体には使われないのですか?

端子やねじ込み部品は電流を流しつつ機械的な強度・加工性も求められるため真鍮が適していますが、変圧器や配電盤の主要な導体は大電流による発熱を抑える必要があり、導電率の高い純銅が適しているためです。

真鍮と青銅はどう違いますか?

真鍮(黄銅)は銅と亜鉛の合金、青銅(ブロンズ)は銅と錫の合金です。どちらも純銅より導電率は下がりますが、添加元素が異なるため強度や耐食性の傾向にも違いがあります。

銅の価格が高騰したら、真鍮に置き換えてコストを下げられますか?

主要な通電経路を真鍮に置き換えることは基本的におすすめできません。導電率が低い分、断面積を大きくする必要があり、発熱量の増加や部材の大型化・重量増につながるためです。コスト対策は材料の変更ではなく、板取りや形状の見直しで相談することをおすすめします。

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