銅ブスバーの耐震対策|支持間隔と振動を防ぐ設計の考え方
銅ブスバー(バスバー)の耐震対策は、支持金物の強度・固有振動数・地震時の変位を吸収する接続部という3点をセットで考えます。設計用標準震度をもとに支持強度を計算し、通常運転時の電磁振動とは別に地震時の応答を確認するのが基本の流れです。この記事では、耐震クラスの区分・支持設計の考え方・施工後の点検項目まで、実務で確認する順に整理します。
銅ブスバー
ブスバー 耐震
支持設計
振動対策
JEM-TR144
配電盤
銅ブスバーの耐震対策は何を基準に考えるか
配電盤・キュービクル内の母線(銅ブスバー)は、盤全体の耐震クラス(S/A/B)に応じた設計用標準震度をもとに、支持金物の強度と固定方法を決めるのが基準になります。
前提
盤の耐震設計は「建物のように地震で壊れない構造にする」話ではなく、地震時に母線が支持点から外れたり、短絡につながるほど大きく動いたりしないようにする話です。日本電機工業会(JEMA)の技術資料「配電盤・制御盤の耐震設計指針(JEM-TR144)」は、この考え方を局部震度法(建物内の設置階ごとに定めた震度で地震力を計算する方法)で扱っています。
局部震度法では、盤の設置場所(地階・1階/中間階/上層階・屋上)と耐震クラス(重要度に応じたS・A・B)によって、設計用標準震度KSがあらかじめ決まっています。銅ブスバーを含む盤内部材の耐震強度も、このKの値を使って地震力を計算します。
設置階・耐震クラス別の設計用標準震度KSの目安
| 設置場所 | クラスS | クラスA | クラスB |
|---|---|---|---|
| 上層階・屋上・塔屋 | 2.0 | 1.5 | 1.0 |
| 中間階 | 1.5 | 1.0 | 0.6 |
| 地階・1階 | 1.0 | 0.6 | 0.4 |
設置階・耐震クラス別の設計用標準震度KSの目安
上層階・屋上・塔屋
S:2.0 / A:1.5 / B:1.0
中間階
S:1.5 / A:1.0 / B:0.6
地階・1階
S:1.0 / A:0.6 / B:0.4
この値は「建築設備耐震設計・施工指針」で示されている一般的な目安であり、実際に適用するクラスと数値は建物の重要度・設置階・盤の仕様書によって指定されます。数値を鵜呑みにせず、必ず案件ごとの仕様書・設計図に指定された値を確認してください。
最新の状況(2026年時点)
JEM-TR144は2017年3月に改正され、2014年版「建築設備耐震設計・施工指針」に対応した内容になっています。2026年時点でも実務の基準はこの2014年版の枠組みが使われており、盤メーカーが耐震クラスを提示するときはこの指針を根拠にしていることがほとんどです。改訂の有無は発注前に一度確認しておくと安心です。
地震対策と通常の振動対策は分けて考える
地震による振動と、通電時に常時発生する電磁振動(うなり)は周波数帯も対策も別物なので、同じ「振動対策」として一括りにしないことが重要です。
地震による振動
- 数秒〜数十秒だけ発生する非常時の外力
- 周波数は概ね1〜10Hz程度の低い帯域が中心
- 対策は支持強度・固定方法・変位の吸収
通電時の電磁振動
- 通電している間、常時発生する定常的な外力
- 商用周波の2倍(50Hzなら約100Hz、60Hzなら約120Hz)で発生
- 対策は固有振動数を電磁振動の周波数からずらすこと
電磁振動対策では、支持間隔を狙った固有振動数に合わせる(共振を避ける)ことが主眼になります。一方、地震対策では固有振動数だけでなく、地震力に耐える支持強度と、想定した変位量を吸収できる余裕があるかを確認します。両方を満たす支持間隔を一度に決めるのではなく、まず電磁振動側で共振を避ける間隔を決め、その間隔で地震力に対する支持強度が足りるかを後から検算する順番が実務では扱いやすい方法です。
注意
電磁振動対策だけを検討して地震力の検算を省くと、平常運転では問題が出なくても、地震時に支持金物や締結部が想定より早く緩む・破断するおそれがあります。逆に地震力の検算だけで電磁振動を見落とすと、経年で締結部の緩みや発熱につながります。どちらか一方では終わらせないでください。
地震時の変位をどう逃がすか
地震時に母線が想定以上に動いても短絡・破断が起きないよう、可撓性のある接続部や余長を確保して変位を「逃がす」設計が基本になります。
盤と盤の間、あるいは盤と外部機器をつなぐ母線の接続部には、熱膨張による伸縮を吸収するための可撓継手や長孔が使われることがあります。この考え方は地震対策でも同じで、変位を力で止めようとするのではなく、動く分だけ逃がす方向で設計します。熱伸縮対策の考え方は、地震時の変位対策にもそのまま応用できます。
接続部の構造(イメージ)
盤A側母線 ──┬── 可撓導体(編組線・ラミネート可撓部)
└── 盤B側母線
※固定端は動かない。可撓部だけが変位を吸収する
締結部にボルトを使う場合、長孔にして多少の位置ずれを吸収できるようにする方法もありますが、長孔は有効断面積が減る分だけ許容電流が下がる点に注意が必要です。長孔を採用する箇所では、通常の丸穴締結より電流密度に余裕を持たせた寸法にするか、可撓導体側で変位を吸収して締結部自体は動かさない設計にするか、どちらかを選びます。
コツ
大きな変位が想定される箇所(建物のエキスパンションジョイントをまたぐ配線など)は、母線側で吸収するより先に、そもそも配線ルートをエキスパンションジョイントをまたがない位置に変更できないか検討すると、可撓部の設計負担が減ります。
支持金物・碍子の耐震強度をどう確認するか
支持金物・支持碍子の耐震強度は、母線の重量に設計用標準震度を掛けた地震力に対して、金物の許容荷重とアンカーボルトの強度が足りているかで確認します。
支持碍子は絶縁と機械強度の両方を担う部材です。地震対策の観点では、碍子の機械的許容荷重(曲げ・引張)が、想定する地震力を上回っているかを確認します。碍子の選定基準そのものは絶縁性能(耐トラッキング性など)が中心になりますが、耐震性を考えるときは強度側の仕様も必ず合わせて確認してください。
支持金物の耐震強度チェックの進め方
- 母線の重量(材質・断面積・長さから算出)を確認する
- 設置階・耐震クラスから設計用標準震度KSを確認する
- 地震力F=KS×Wを算出する
- 支持金物・碍子の許容荷重がFを上回っているか確認する
- アンカーボルトのサイズ・本数が仕様書の基準を満たしているか確認する
片持ち(カンチレバー)で支持する区間が長いほど、同じ地震力でも支持点にかかるモーメントが大きくなります。支持間隔を電磁振動対策だけで決めてしまうと、この片持ち長さの検算を忘れやすいので、支持間隔を決める段階で耐震側の計算も一緒に行っておくと手戻りが減ります。
計算例
幅30mm×厚さ5mmの銅ブスバー(密度8.96g/cm³)を例にすると、1mあたりの体積は150cm³、重量は約1.34kg(質量)になります。地階・1階でクラスBの盤(KS=0.4)の場合、この1m区間に働く地震力はおおよそ次のとおりです。
F = KS × W ≈ 0.4 × 13.1N ≈ 5.2N
数値自体は小さく見えますが、支持間隔が伸びて1本の支持金物が受け持つ区間が長くなるほど、また設置階が上層階でクラスSに近づくほど、この値は数倍〜数十倍に大きくなります。実際の断面積・支持間隔・耐震クラスを当てはめて、案件ごとに計算し直してください。
施工後・地震後の点検で何を見るか
施工直後は支持金物・アンカーボルトの締結状態を、地震後は同じ箇所に加えて母線の変形・可撓部の損傷・締結部の緩みを重点的に確認します。
点検タイミング別の確認項目
| タイミング | 確認項目 |
|---|---|
| 施工完了時 | 支持金物・アンカーボルトの締結トルク、碍子の外観 |
| 定期点検 | 締結部の緩み、支持金物のさび・変形、可撓部の外観 |
| 地震発生後 | 母線の変形・接触の有無、可撓部の損傷、締結部の緩み |
点検タイミング別の確認項目
施工完了時
締結トルク・碍子外観を確認
定期点検
緩み・さび・可撓部の外観を確認
地震発生後
変形・接触・可撓部損傷・緩みを重点確認
注意
地震後に外観上の変形が見られなくても、締結部だけが緩んでいるケースがあります。増し締め点検と同じ手順で、目視だけでなくトルク確認まで行ってください。緩みを放置すると接触抵抗の上昇による発熱につながります。
よくあるご質問
銅ブスバーの耐震設計は何を基準に行いますか
JEMA(日本電機工業会)の技術資料「配電盤・制御盤の耐震設計指針(JEM-TR144)」に基づき、設置階と耐震クラス(S/A/B)から決まる設計用標準震度を使って地震力を計算し、支持金物・アンカーボルトの強度を確認するのが基本です。
耐震クラスのS・A・Bはどうやって決まりますか
建物・設備の重要度に応じて発注者や設計者が指定します。重要度が高い設備ほどクラスSに近づき、設計用標準震度も大きくなります。盤の仕様書や設計図に指定されているので、自社で独自に判断するものではありません。
地震対策と電磁振動対策は同じ考え方で進めてよいですか
周波数帯も外力の性質も異なるため、分けて確認する必要があります。電磁振動(商用周波の2倍、約100〜120Hz)は共振を避ける支持間隔の検討が中心で、地震対策は支持強度と変位の吸収が中心です。片方だけの検討で終わらせないでください。
地震時の変位はどう吸収すればよいですか
可撓導体や長孔を使い、変位を力で止めるのではなく逃がす設計にします。熱膨張による伸縮を吸収する継手の考え方と同じ発想で、固定端と可動部を分けて設計するのが基本です。
地震のあとに銅ブスバーは何を点検すればよいですか
母線の変形や接触の有無、可撓部の損傷、そして締結部の緩みを重点的に確認します。外観に変化がなくても締結部だけが緩んでいることがあるため、トルク確認まで行うのが望ましいです。
銅ブスバーの耐震対策は、支持金物・碍子の強度計算だけでなく、当社のような加工技術の段階で長孔や可撓部の形状を図面に落とし込むところから始まっています。設計段階の相談から、加工後の品質管理の体制まで含めてご相談いただけます。
