基礎知識

JIS C 8364(バスダクト)2025年改正で何が変わったか

バスダクト(ブスバーを絶縁・収納した幹線用の配電資材)を規定するJIS C 8364が、2025年5月20日に約17年ぶりに改正されました。今回の改正の要点は、①定格電流・定格短時間耐電流の規定削除、②特殊使用条件(励磁回路・インバータ回路など)の追加、③空間距離・沿面距離の測定方法をJIS C 60664-1準拠に変更、④耐火バスダクトの試験方法を消防法告示に整合、の4点です。この記事では、何がどう変わったのかを、実務で確認すべき順に整理します。

バスダクト
JIS C 8364
2025年改正
耐火バスダクト
ブスバー
規格

JIS C 8364とは何を定める規格か

JIS C 8364(バスダクト)とは、交流1000V以下(周波数1000Hz以下)または直流1500V以下で使用するバスダクト及びその附属品の構造・性能・試験方法を定める日本産業規格です。バスダクトは、銅やアルミの導体(ブスバー・バスバーとも呼ばれます)を絶縁物で覆い、金属ケースに収めて幹線として使う配電資材で、この規格がその安全性を担保しています。

前提

この記事は2025年5月20日に発行されたJIS C 8364:2025の改正点を整理したものです。規格票そのものは日本規格協会(JSA)の有償頒布のため、条文の正確な文言・数値は必ず原典で確認してください。ここでは公開されている改正概要をもとに、実務で押さえるべき方向性を紹介します。

JIS C 8364は、交流1000V以下・直流1500V以下のバスダクトと附属品の構造・試験方法を定める規格です。

2025年改正で変わった5つのポイント

今回の改正では、前版(2008年)からの技術的な差分として、主に次の5点が公表されています。

改正の主な内容(公表されている範囲)

  • 定格規定の削除:定格電流・定格短時間耐電流の規定を削除し、ユーザーニーズの多様化に対応
  • 特殊使用条件の追加:励磁回路・インバータ回路など、電気的な擾乱の影響を受けやすい用途・環境への配慮を追加
  • 空間距離・沿面距離の測定方法の改定:低圧機器の絶縁協調規格であるJIS C 60664-1を引用する方式に統一
  • プラグイン器具の水平強度試験の改定:試験の対象質量に、取り付けるプラグイン器具の質量も含めるよう変更
  • 耐火試験方法の改定:消防法告示が定める耐火試験の寸法・熱電対配置とJISの記載を整合

削除・追加・測定方法の変更・試験条件の見直しの4系統が、今回の改正の骨子です。

注意

「定格電流・定格短時間耐電流の規定が削除された」という点は、値そのものが無くなったという意味ではなく、規格として一律の定格表を定める方式をやめたという改正です。実際に使用するバスダクトの定格電流・耐電流は、メーカーの仕様として個別に確認する必要があります。数値の解釈は必ず原典・メーカーの技術資料で確認してください。

JIS C 60664-1準拠とは何を意味するか

今回の改正で空間距離・沿面距離の測定方法が準拠することになったJIS C 60664-1は、低圧機器全般を対象にした絶縁協調の基準規格です。「絶縁協調」とは、使用電圧・過電圧カテゴリ(雷サージなどの過電圧がどこまで機器に及ぶ設置場所か)・汚損度(周囲環境にどれだけ導電性の汚れやほこりが付きやすいか)の組み合わせから、必要な空間距離・沿面距離の最小値を決める考え方です。

バスダクト規格が独自の測定方法を持つのではなく、この基準規格を参照する形に統一されたことで、盤内の他の低圧機器(配電盤・分電盤の主要部品)と同じものさしで絶縁性能を評価できるようになった点が、今回の改正の技術的な意味です。個別の距離の数値は使用電圧・汚損度の区分によって変わるため、必ずJIS C 60664-1およびJIS C 8364の原典で確認してください。

前提

汚損度(汚染度)は一般に、乾燥した屋内の盤内のような環境ほど区分が低く、屋外や粉じん・結露が想定される環境ほど区分が高くなります。バスダクトは屋内幹線だけでなく屋外配線・工場内の粉じん環境で使われることもあるため、設置環境の想定が空間距離の必要値に直接影響します。

空間距離・沿面距離が基準規格側に統一されたことで、盤内の他の低圧機器と同じ考え方で絶縁性能を評価できるようになりました。

特殊使用条件の追加が示す背景

今回追加された「励磁回路」「インバータ回路など」という特殊使用条件は、変圧器の励磁突入電流や、インバータのスイッチングに伴う高調波・サージ電流が、通常の商用周波数の電流とは異なる負荷のかかり方をバスダクトに与えることを踏まえたものです。こうした回路では、瞬時的なピーク電流や高周波成分が、通電部の発熱や絶縁への負担に影響する場合があります。

データセンターや蓄電池関連設備ではパワーコンディショナ(PCS)などのインバータ機器を経由した大電流配電が増えており、幹線側のバスダクトにもこうした負荷条件への配慮が求められる場面が2026年時点では増えています。特殊使用条件の項目が追加されたのは、こうした用途の広がりを規格側が明文化した結果と言えます。

注意

「特殊使用条件」に該当する回路でバスダクトを使う場合、標準条件を前提にしたカタログ値をそのまま適用できるとは限りません。インバータ回路・励磁回路での使用を検討する際は、対象回路の特性(想定される高調波成分・ピーク電流など)をメーカーに伝えたうえで、適用可否を個別に確認することをおすすめします。

なぜ改正されたのか(背景)

今回の改正が必要になった背景は、大きく2つです。1つは、関連するIEC規格側の改訂が進み、その技術内容をJIS側に取り込む必要が出てきたこと。もう1つは、耐火バスダクトの耐火試験方法について、JISの記載と消防法告示が定める寸法との間に食い違いが見つかったことです。

2008年版から2025年版まで約17年が経過しており、この間に低圧機器全般の絶縁協調(空間距離・沿面距離の考え方)を扱うJIS C 60664-1のような基準規格側の整理が進みました。バスダクトの規格もこうした基準規格を参照する形に合わせる必要があったことが、測定方法の改定につながっています。

補足

耐火バスダクトは、火災時にも一定時間、通電機能を維持することが求められる特殊な仕様です。消防法告示側の耐火試験基準とJISの試験方法に差異があると、試験結果の解釈にずれが生じかねません。今回の改正は、このずれを解消し、耐火バスダクトの安全性の裏付けを整えることが目的とされています。

改正の狙いは、IEC規格との整合と、消防法告示との試験方法の食い違いの解消です。

旧版(2008年版)との違い一覧

JIS C 8364 2008年版 → 2025年版の変更点

項目 2008年版 2025年版
定格電流・定格短時間耐電流 規格として規定 規定を削除(メーカー仕様側で確認)
特殊使用条件 記載なし 励磁回路・インバータ回路等を追加
空間距離・沿面距離の測定方法 規格独自の方法 JIS C 60664-1準拠に統一
プラグイン器具の水平強度試験 ダクト本体のみで評価 器具質量を含めて評価
耐火試験の熱電対配置等 消防法告示と一部不整合 消防法告示に整合

JIS C 8364 2008年版 → 2025年版の変更点

定格電流・定格短時間耐電流

2008年版:規格として規定 / 2025年版:規定を削除(メーカー仕様側で確認)

特殊使用条件

2008年版:記載なし / 2025年版:励磁回路・インバータ回路等を追加

空間距離・沿面距離の測定方法

2008年版:規格独自の方法 / 2025年版:JIS C 60664-1準拠に統一

プラグイン器具の水平強度試験

2008年版:ダクト本体のみで評価 / 2025年版:器具質量を含めて評価

耐火試験の熱電対配置等

2008年版:消防法告示と一部不整合 / 2025年版:消防法告示に整合

最大の実務上の変化は、定格電流表が規格から外れ、メーカー仕様側の確認が必須になった点です。

補足:バスダクトの基本構造

金属ケース ──┬── 絶縁物(耐熱PVC等)
             └── 導体(ブスバー・バスバー)
                    └── 接続部(フィーダ形/プラグイン形などで形状が異なる)
  

耐火バスダクトはこの構成に加えて、火災時の熱を想定した耐火性の高い絶縁・支持構造を持ちます。今回の改正で試験方法が消防法告示に整合したのは、主にこの耐火構造の性能確認の部分です。

改正が調達・製造側の実務に与える影響

規格の改正は、使う側だけでなくバスダクトを製造・供給するメーカー側にも影響します。試験方法が変わった項目については、メーカー側で新版に基づく型式試験のやり直しや、試験成績書の再発行が必要になる場合があります。

発注前に確認しておきたいこと

  • 見積り・仕様確認の際に、対象製品がどちらの版の試験成績書に基づくかを尋ねる
  • 耐火バスダクトなど、消防法との関係が深い製品は、告示側の要求との整合が取れた試験結果かを確認する
  • 改正直後は、メーカー側の対応(再試験・カタログ改訂)に一定の時間がかかる場合があるため、納期に余裕を持って相談する

改正直後はメーカー側の再試験・カタログ改訂が進行中の場合があるため、試験成績書の版を確認したうえで納期に余裕を持って相談することが実務上のポイントです。

設計・調達の実務で確認すべきこと

盤設計・受配電設備の担当者がJIS C 8364:2025を踏まえて確認すべき点は、次の3つです。

確認ポイント

  • 使用予定のバスダクトがどちらの版に準拠して設計・試験されたものかをメーカーに確認する
  • 定格電流・耐電流は規格の一覧表ではなく、メーカーが個別に開示する仕様値で確認する
  • 耐火バスダクトを使う場合は、消防法告示側の耐火試験基準との整合が取れているかを仕様書・試験成績書で確認する

コツ

既存設備の更新・増設でバスダクトを追加する場合、既設と新設で準拠規格の版が異なるケースがあります。接続部の互換性や試験根拠が異なる可能性があるため、既設バスダクトの銘板・図面に記載された規格版を先に確認しておくと、仕様の食い違いによる手戻りを防げます。

なお、バスダクトの内部構造(導体・絶縁・ケースの関係)や、部品としてのブスバー(バスバー)とは何かという基礎から知りたい場合は、当社の別記事「バスダクトとブスバーの違い」もあわせてご参照ください。バスダクトの内部で使われる導体そのもののめっきや、規格に基づく品質管理の考え方は、この記事とあわせて確認いただくと理解が深まります。

よくあるご質問

JIS C 8364とはどんな規格ですか

交流1000V以下(周波数1000Hz以下)または直流1500V以下で使用するバスダクト及びその附属品の構造・性能・試験方法を定める日本産業規格です。2025年5月20日に約17年ぶりに改正されました。

2025年改正で定格電流の規定はどうなりましたか

規格が一律に定める定格電流・定格短時間耐電流の規定表は削除されました。ただし数値自体が無くなったわけではなく、実際の定格はメーカーが個別に開示する仕様として確認する形になっています。

耐火バスダクトに関する改正のポイントは何ですか

耐火試験の熱電対配置などについて、消防法告示が定める基準とJISの記載の食い違いを解消したことが主なポイントです。詳細な試験条件は消防法告示とJIS原典の両方で確認する必要があります。

2008年版のバスダクトは2025年版にすぐ準拠していないと使えませんか

既設設備がただちに使用不可になるものではありません。ただし新規に発注・増設する場合は、どちらの版に基づく仕様かをメーカーに確認し、既設との整合を取っておくことをおすすめします。

バスダクトとブスバーはどう違いますか

ブスバー(バスバー)は導体そのものを指し、バスダクトはその導体を絶縁物で覆い金属ケースに収めた製品を指します。詳しくは当社の別記事「バスダクトとブスバーの違い」で解説しています。

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