アースバー(接地バー)の規格・サイズ選定と発注時の指定項目
アースバー(接地バー)のサイズは、内線規程の「0.052×In」という考え方で決まる最低限の断面積と、盤の中で実際に必要になる穴数・板厚・タップ強度という2つの条件を両方満たして選びます。この記事では、規格上の最低ラインの考え方、カタログ既製品のサイズ相場、そして特注で製作を依頼するときに図面や見積依頼書に必ず入れておくべき指定項目を、発注する側の目線で整理します。
アースバー
接地バー
規格
サイズ選定
JIS
内線規程
発注
この記事の内容
アースバーとは何か
アースバー(接地バー)とは、分電盤・制御盤・キュービクルなどの盤内で、複数の接地線(アース線)を1本の銅バーに集約して、盤の外の接地極まで一括でつなぐための導体部品です。盤内には機器ごとに接地線が何本も出てきますが、それぞれを個別に外へ引き出すと施工も点検も煩雑になるため、アースバーで束ねてから接地母線・接地極へつなぐのが一般的な構成です。
前提
アースバーのサイズ選定は、①感電・漏電時に流れる故障電流に断面積が耐えられるか(電気的な最低ライン)と、②接続するネジの本数・径に対して板厚や穴ピッチが確保できているか(機械的な条件)の両方で決まります。実務でつまずくのは②のほうが多く、この記事は特に②を詳しく扱います。
接地線・接地母線・アースバーの関係
接地に関わる部材は名前が似ていて混同されやすいため、まず位置づけを整理します。接地線(アース線)とは、各機器の接地端子から出ている個別の電線のことです。接地母線とは、盤内または盤間で接地線を集約して流す幹線側の導体を指す言葉で、電線の場合もあれば銅バーの場合もあります。アースバーは、その接地母線の役割を銅の平板(バー)で実現した部材で、複数の穴にそれぞれの接地線をねじ止めできる形になっているものを指します。
つまりアースバーは「接地母線を銅バーという形で実装したもの」であり、選定の考え方自体は接地母線の断面積の考え方をそのまま引き継ぎます。
サイズを決める考え方(規格の最低ライン)
接地線・接地母線の断面積は、内線規程が示す「A(mm²) = 0.052 × In(A)」という算定式が最低ラインの目安になります。Inは、その接地線が保護している回路の過電流遮断器の定格電流です。JIS C 60364-5-54(低圧電気設備の保護導体)も同様に、想定される故障電流に耐える断面積を確保することを求めています。
式で出た数値をそのまま板厚に当てはめるのではなく、規格上の標準断面積に切り上げて選ぶのが実務での基本です。
遮断器定格電流(In)ごとの必要断面積の目安
| In(遮断器定格) | 計算上の必要断面積 | 選定される標準断面積の目安 |
|---|---|---|
| 30A | 約1.6mm² | 2mm² |
| 50A | 約2.6mm² | 3.5mm² |
| 100A | 約5.2mm² | 5.5mm² |
| 225A | 約11.7mm² | 14mm² |
| 400A | 約20.8mm² | 22mm² |
遮断器定格電流(In)ごとの必要断面積の目安
In 30A
計算値 約1.6mm² → 標準2mm²
In 50A
計算値 約2.6mm² → 標準3.5mm²
In 100A
計算値 約5.2mm² → 標準5.5mm²
In 225A
計算値 約11.7mm² → 標準14mm²
In 400A
計算値 約20.8mm² → 標準22mm²
注意
この表は電線サイズの考え方をそのまま断面積に置き換えた目安です。実際の接地母線・アースバーの選定では、盤メーカーの仕様や最新版の内線規程・電気設備技術基準の解釈にある選定表を必ず確認してください。数値を鵜呑みにして図面化しないことが重要です。
カタログ既製品のサイズ相場と特注が必要になる境目
アースバーのカタログ既製品は「幅25mm×厚さ3mm」前後(断面積75mm²前後)のサイズが多く流通しています。これは前章の表と比べると、In400A相当(22mm²)の何倍もの余裕がある断面積です。つまり多くの盤では、電流の観点だけならカタログ既製品の標準サイズで十分に足りています。
アースバーのサイズ選定で実際に迷うのは電流の余裕ではなく、穴数・穴ピッチ・板厚とタップ強度の組み合わせがカタログ品の規格(多くは25mmピッチ)に収まるかどうかです。
カタログ既製品によくあるサイズの例
| 幅×厚さ | 断面積 | 穴ピッチ | 対応するねじの目安 |
|---|---|---|---|
| 20mm×3mm | 60mm² | 20〜25mm | M4程度まで |
| 25mm×3mm | 75mm² | 25mm | M4程度まで |
| 25mm×5mm | 125mm² | 25mm | M5可 |
| 30mm×5mm | 150mm² | 25〜30mm | M5〜M6可 |
カタログ既製品によくあるサイズの例
20mm×3mm(60mm²)
穴ピッチ20〜25mm・M4程度まで
25mm×3mm(75mm²)
穴ピッチ25mm・M4程度まで
25mm×5mm(125mm²)
穴ピッチ25mm・M5可
30mm×5mm(150mm²)
穴ピッチ25〜30mm・M5〜M6可
板厚3mm系のカタログ品はM4程度までが目安で、M5以上のタップを立てたい場合は板厚5mm系の既製品か特注品を検討することになります。
カタログ既製品で足りるケース
- 接続する接地線の本数が既製品の穴数の範囲内
- M2〜M4程度のねじで、板厚3mm前後で足りる
- 穴ピッチが25mmなど標準寸法に合う
- 納期優先で、すぐに入手したい
特注を検討すべきケース
- M5以上のタップを立てたい(板厚5mm以上が必要)
- 極数(穴数)が既製品の設定と合わない
- 盤の奥行き・取付スペースに合わせて長さ・幅を変えたい
- 特定のめっき(銀めっきなど)を指定したい
発注時に指定すべき項目チェックリスト
アースバーを特注で依頼するときは、電流値だけでなく機械的な条件を図面か見積依頼のメモに具体的に書くことで、手戻りとやり取りの往復を減らせます。
見積り・発注前に決めておく項目
- 材質:C1100タフピッチ銅・C1020無酸素銅など、既存の盤で使っている材質と揃えるのが基本
- 板厚:接続するねじの径から逆算する。M5以上ならまず5mm以上を候補にする
- 全体の寸法(幅×長さ):盤の設置スペースと、取付ける支持物・碍子の位置から決める
- 接続用の穴(タップ or 通し穴)の数・径・ピッチ:現在接続する本数+将来の増設分の予備を含めて指定する
- 取付用の固定穴の位置・径:盤への固定方法(支持碍子・ベースへのねじ止めなど)に合わせる
- 表面処理:すずめっき・ニッケルめっき・銀めっき、または無地(生地)のいずれか
- 数量と希望納期:試作1個からの依頼か、量産分の継続発注かで進め方が変わる
この7項目を最初にまとめて伝えるだけで、見積りの往復回数と手戻りの多くは防げます。
材質・めっきの選び方
アースバーの材質は、導電率の高いC1100(タフピッチ銅)かC1020(無酸素銅)を使うのが一般的です。接地用途では通常はC1100で十分な導電率が得られ、コスト面でも扱いやすい材料です。より高い信頼性が求められる用途ではC1020が選ばれることもあります。
めっきの使い分け
すずめっきは酸化防止を目的とした標準的な仕上げで、コストと性能のバランスが良い選択です。ニッケルめっきは硬度・耐食性を重視する場合に、銀めっきは接触抵抗を特に低く抑えたい大電流の接点に向いています。めっき選定の詳しい比較は銅ブスバーへのめっきのページも参考にしてください。
見落としやすい注意点
注意:板厚とタップ強度
JISの目安である「板厚3mm以上」はあくまで最低ラインです。M5以上のねじでタップを立てる場合は、ねじ山の強度を確保するために板厚5mm以上を推奨する考え方が一般的です。板厚が薄いままM5・M6のタップを切ると、ねじ山が浅くなり緩みや破損の原因になります。
コツ:相見積りのときに確認すること
複数社に見積りを依頼するときは、板厚・穴ピッチ・めっき仕様をすべて同じ条件で伝えることが比較の前提になります。条件を揃えずに金額だけを比べると、実は仕様が違う製品同士を比較してしまうことがあります。加工の相談方法は加工技術のページでも紹介しています。
2026年時点の状況
2026年は銅相場が高止まりしており、アースバーのような小物部材でも材料費の比率が見積りに影響しやすい状況です。板厚や幅を必要以上に大きく指定せず、必要な断面積とタップ強度を満たす範囲で寸法を決めることが、コストを抑える実務的なポイントになっています。材料の証明や品質管理の考え方は品質管理のページでも確認できます。
よくあるご質問
アースバーの板厚は何mm以上あれば良いですか?
JISで示される目安は3mm以上ですが、M5以上のねじでタップを立てる場合はねじ山の強度を確保するために5mm以上の板厚を推奨します。接続するねじの径を先に決めてから板厚を選ぶのが安全です。
C1100とC1020はどちらを選べば良いですか?
一般的な接地用途ではC1100(タフピッチ銅)で導電率・コストのバランスが良く、多くの盤で採用されています。C1020(無酸素銅)は、より高い信頼性や特殊な条件が求められる場合に検討する材質です。
アースバーの極数(穴数)はどう決めれば良いですか?
現在接続する接地線の本数に加えて、将来の増設分を見込んだ予備の穴数を確保しておくのが実務上の考え方です。予備を含めた本数が既製品の穴数と合わない場合は特注を検討します。
カタログ既製品と特注品はどちらが早く安いですか?
仕様がカタログ品の規格(板厚・穴ピッチ・極数)に合う場合は既製品のほうが入手が早く、コストも抑えられます。タップ径や寸法が既製品と合わない場合は、結果的に特注のほうが手戻りなく短期間で仕上がることがあります。
短絡電流に対する強度はどう確認すれば良いですか?
保護導体の断面積が想定される故障電流に耐えることは、内線規程の算定式やJIS C 60364-5-54の考え方に基づいて確認します。数値を断定的に決める前に、盤全体の設計条件と合わせて最新版の規格・規程を参照することが必要です。
