材料・規格

キュービクル母線の要求事項|JIS C 4620の読み方

キュービクル(キュービクル式高圧受電設備)の中を通る母線は、盤メーカーの好みで自由に決められるものではありません。JIS C 4620 は、主回路の導体に対して「相別の表示」「絶縁距離(離隔)」「接続部の温度上昇限度」「接地母線の太さ」を具体的な数値で求めています。この記事では、規格が母線側に何を要求しているのかを条項単位で整理し、盤内母線を図面に落とすときに押さえる数値と、2026年の変圧器更新需要でいま何が起きているかまでを通してまとめます。

JIS C 4620
キュービクル
母線
銅ブスバー
相別表示
絶縁距離
温度上昇限度
接地母線

JIS C 4620とはどんな規格か

JIS C 4620 とは、需要家が電気事業者から高圧で受電するために使う「キュービクル式高圧受電設備」の構造・性能・試験を定めた日本産業規格です。最新版は JIS C 4620:2023(2023年12月20日制定)で、2018年版を置き換えています。適用範囲は公称電圧6.6kVの受電設備に限られており、この範囲の外にある設備は別の規格・規程で判断します。

JIS C 4620 の適用範囲(2023年版)

項目 範囲
公称電圧 6.6 kV
周波数 50 Hz または 60 Hz
系統短絡電流 12.5 kA 以下
受電設備容量 4,000 kVA 以下
主な形式 CB形 / PF・S形

JIS C 4620 の適用範囲(2023年版)

公称電圧

6.6 kV

周波数

50 Hz または 60 Hz

系統短絡電流

12.5 kA 以下

受電設備容量

4,000 kVA 以下

主な形式

CB形 / PF・S形

母線そのものに「幅×厚さは何mm」という一律の指定はありません。規格が縛るのは、導体をどう識別し、どれだけ離し、どこまで熱くしてよいかという3点です。裏を返せば、この3点を満たす範囲で断面と経路は設計側の裁量になります。

この記事の数値の扱い

以下で挙げる条項番号・数値は、全文が公開されている JIS C 4620:2018 に基づいて整理しています。2023年版で表現や数値が見直されている箇所があり得るため、実際の設計・製造では必ず最新版の原本で確認してください。当社も図面の照合時は版を確認してから加工に入ります。

要点:規格は母線の寸法ではなく「識別・離隔・温度」を縛る。

JIS C 4620は母線・主回路導体に何を求めているか

母線に関わる要求は、7.4「配線及び機器の接続」に集まっています。高圧配線は絶縁電線の種類と最小断面積、低圧配線は断面積と絶縁距離、接地は接地線の最小太さ、という並びで規定されており、銅帯(ブスバー)は主回路の導体と接地母線の両方に登場します。

母線・主回路導体に関わる主な条項(2018年版)

条項 対象 要求の中身
7.4.1 a) 高圧配線 JIS C 3611の高圧絶縁電線または同等以上。CB形は公称断面積38mm²以上(分岐は14mm²以上)、PF・S形は14mm²以上
7.4.1 c) 高圧配線の接続 電線相互の接続は支持がいしによる支持点、または機器端子で行う
7.4.1 e) / 7.4.2 e) 主回路電線・銅帯 引込口・引出口の配線を含め、相別の表示を行う(JIS C 0446)
7.4.2 b) 低圧補助回路 公称断面積1.25mm²以上。変流器の定格二次電流5A回路は2mm²以上
7.4.2 d) 低圧回路 空間距離・沿面距離とも10mm以上(線間300Vを超える沿面距離は20mm以上)
7.4.2 f) 低圧主回路端子 その回路の負荷電流と通過する短絡電流に十分耐えること
7.4.3 a) 接地母線 低圧絶縁電線を使用。ただし接地母線には銅帯を使用できる
表2 接続部・端子 温度上昇限度を材質(裸銅/すずめっき/銀・ニッケルめっき)別に規定
表4 高圧充電部 相互間・大地間などの絶縁距離の最小値

母線・主回路導体に関わる主な条項(2018年版)

7.4.1 a) 高圧配線

JIS C 3611の高圧絶縁電線または同等以上。CB形38mm²以上(分岐14mm²以上)、PF・S形14mm²以上

7.4.1 c) 高圧配線の接続

電線相互の接続は支持がいしの支持点または機器端子で

7.4.1 e) / 7.4.2 e) 相別表示

主回路電線・銅帯(引込口・引出口を含む)に相別の表示。JIS C 0446

7.4.2 b) 低圧補助回路

1.25mm²以上。変流器二次5A回路は2mm²以上

7.4.2 d) 低圧回路の距離

空間・沿面とも10mm以上(線間300V超の沿面は20mm以上)

7.4.2 f) 低圧主回路端子

負荷電流と通過短絡電流に十分耐えること

7.4.3 a) 接地母線

低圧絶縁電線。ただし接地母線には銅帯を使用できる

表2 温度上昇限度

材質(裸銅/すずめっき/銀・ニッケルめっき)別に規定

表4 絶縁距離

高圧充電部の相互間・大地間の最小値

注目したいのは 7.4.1 e) と 7.4.2 e) の書き方です。条文が「主回路電線及び銅帯」と並べていることは、盤内の主回路導体として銅帯を使う前提で規格が書かれていることを示しています。銅帯だから相別表示を省いてよい、という読み方はできません。

要点:母線の要求は7.4と表2・表4に集約されている。

母線の相別表示はどう決めるか

相別の表示は JIS C 0446(色又は数字による電線の識別)に従います。JIS C 4620 は「相別の表示を行う」ことだけを求め、色や数字の割り当ての具体は JIS C 0446 に委ねる構成です。したがって盤の仕様書では、色別テープ・マーク・刻印のどれで表示するかまで決めておくと現場で迷いが出ません。

相別表示が問われる場所

 引込口 ──┬── 主回路の銅帯(母線) ──┬── 機器端子
          │                        │
     ここも対象                ここも対象
          └── 引出口の配線 ────────┘

7.4.1 e) は「引込口及び引出口の配線を含む」と明記しています。盤の内部だけ表示して、引込・引出の取り合い部分が抜けている図面は指摘対象になりやすい箇所です。

加工側でできる工夫

相の識別を現場のテープ貼りだけに頼ると、締め直しや更新工事で情報が失われます。母線の端部に相を打刻する、めっきの種類や色で系統を分ける、といった「消えない識別」を図面段階で決めておくと、点検時の誤認を減らせます。当社では図面指示があれば刻印位置を含めて加工します。

要点:相別表示はJIS C 0446に従い、引込・引出まで対象。

高圧部の絶縁距離(離隔)はどれだけ必要か

2018年版の表4では、高圧充電部相互間および高圧充電部と大地間の絶縁距離は最小100mm、高圧用絶縁電線の非接続部については相互間・大地間ともに最小70mmと定められています。母線のレイアウトは、この離隔を確保できるかどうかで決まります。断面を増やすために幅を広げると離隔が食われるため、幅で稼ぐか厚さで稼ぐかの判断がここで出てきます。

高圧回路の絶縁距離の最小値(2018年版 表4)

区間 最小距離
高圧充電部相互間 100 mm
高圧充電部と大地間 100 mm
高圧用絶縁電線 非接続部の相互間 70 mm
高圧用絶縁電線 非接続部と大地間 70 mm
低圧回路(空間距離・沿面距離) 10 mm 以上(線間300V超の沿面は20mm以上)

高圧回路の絶縁距離の最小値(2018年版 表4)

高圧充電部相互間

100 mm

高圧充電部と大地間

100 mm

高圧用絶縁電線 非接続部の相互間

70 mm

高圧用絶縁電線 非接続部と大地間

70 mm

低圧回路(空間・沿面)

10 mm 以上(線間300V超の沿面は20mm以上)

注意:母線の「実物寸法」で離隔を見る

離隔は図面上の中心線ではなく、充電部の実際の外形から測る距離です。曲げの外R、ボルト頭・ナット・座金の張り出し、締結後の端子の反りまで含めると、図面より数mm狭くなることがあります。100mm・70mmといった値は最小値なので、加工公差と組立誤差を織り込んだ余裕を持たせておくのが実務的です。

要点:高圧充電部は100mm、絶縁電線の非接続部は70mmが最小。

温度上昇限度から母線の断面はどう決まるか

表2の温度上昇限度は、接続部の形式と接触面の材質で決まります。ねじ締め接続部は裸銅65K・すずめっき85K・銀めっきまたはニッケルめっき95K、ねじ接続端子は裸銅75K・すずめっき95K・銀めっきまたはニッケルめっき105Kです。周囲温度40℃を基準に加算した温度が、その部位の許容温度の目安になります。

許容温度の目安 (℃) = 基準周囲温度 40℃ + 温度上昇限度 (K)

接続部の温度上昇限度(2018年版 表2)

接続部の形式 裸銅 すずめっき 銀・ニッケルめっき
ねじ締め接続部 65 K 85 K 95 K
ねじ接続端子 75 K 95 K 105 K
40℃加算後の目安(ねじ締め) 約105℃ 約125℃ 約135℃

接続部の温度上昇限度(2018年版 表2)

ねじ締め接続部 / 裸銅

65 K(40℃加算で約105℃)

ねじ締め接続部 / すずめっき

85 K(40℃加算で約125℃)

ねじ締め接続部 / 銀・ニッケルめっき

95 K(40℃加算で約135℃)

ねじ接続端子 / 裸銅

75 K

ねじ接続端子 / すずめっき

95 K

ねじ接続端子 / 銀・ニッケルめっき

105 K

ねじ締め接続部の温度上昇限度(表面処理別・105Kを100%とした比較)

裸銅
65K
すずめっき
85K
銀・Niめっき
95K

この差が設計に効いてきます。裸銅の接続部で65Kに収まらない場合、断面を増やして発熱を下げる以外に、接触面にすずめっきや銀めっきを施して許容される温度上昇そのものを引き上げるという選択肢があります。盤の寸法が決まっていて母線を太くできないとき、表面処理が現実的な解になることは少なくありません。めっきの種類ごとの考え方は銅ブスバーへのめっきのページで整理しています。

注意:めっきは「限度が上がる」だけで発熱は減らない

めっきによって上がるのは許容される温度上昇の限度であり、通電による発熱量そのものは断面積と電流で決まります。接触抵抗の安定と酸化防止という効果はありますが、断面不足をめっきで埋める設計は避け、まず断面と電流密度で成立させるのが順序です。

要点:表面処理で許容温度上昇が65K→95Kまで変わる。

接地母線に銅帯を使うときの決まりは

7.4.3 a) は「接地回路の配線には低圧絶縁電線を使用する。ただし、接地母線には銅帯を使用することができる」と定めており、接地母線への銅帯の使用は規格が明示的に認めています。太さは接地工事の種別ごとに表5で最小値が示され、接地母線の寸法はそこに接続される接地線の太さに見合ったものにします。

接地線の最小太さ(2018年版 表5・抜粋)

接地工事の種別 最小太さ(銅線)
A種接地工事 φ2.6 mm または 5.5 mm²
B種接地工事 変圧器容量により φ2.6 mm / 5.5 mm² 〜 φ3.2 mm / 8 mm²
C種接地工事 φ1.6 mm または 2.0 mm²
D種接地工事 φ1.6 mm または 2.0 mm²
接地端子の材質 銅または黄銅製

接地線の最小太さ(2018年版 表5・抜粋)

A種接地工事

φ2.6 mm または 5.5 mm²

B種接地工事

変圧器容量により φ2.6/5.5mm² 〜 φ3.2/8mm²

C種接地工事

φ1.6 mm または 2.0 mm²

D種接地工事

φ1.6 mm または 2.0 mm²

接地端子の材質

銅または黄銅製

接地端子については「接地線が容易かつ電気的に確実に接続でき、緩むおそれがないもの」と機能で要求されています(7.4.3 i))。接地母線を銅帯で作る場合は、ねじ穴のピッチ・座面の平面度・端子台の増設余地を含めて図面化しておくと、後の増設で穴を追加する手戻りを防げます。

コツ:接地母線は「後で足す」前提で作る

接地母線は運用中に接続先が増えやすい部位です。使用予定のない予備穴をあらかじめ数か所あけておくと、増設のたびに通電中の母線へ穴あけする事態を避けられます。穴あけの追加加工より、最初から予備穴を含めて手配したほうが総額は下がります。

要点:接地母線への銅帯使用は規格が明示的に認めている。

2026年の変圧器更新と盤内母線

2026年は、キュービクルと盤内母線に更新需要が集まる年になっています。配電用変圧器の省エネ法トップランナー基準が第三次判断基準に移り、2026年4月以降は従来機種(トップランナー変圧器2014)の出荷ができなくなったためです。変圧器の外形や端子位置が変われば、そこへ取り合う母線は作り直しになります。

2026年時点の状況

トップランナー変圧器の第三次判断基準は2026年度から適用され、報道・メーカー資料によれば現行基準から平均で約14%のエネルギー消費効率改善が求められます。あわせて、データセンター・物流倉庫・EV充電インフラ向けの引き合い増でキュービクルと変圧器の納期長期化が指摘されており、2026年7月時点の報道ではLME銅が1トンあたり1万3千ドル台、国内の電気銅建値も1kgあたり2,100円台と高値圏で推移しています。母線の手配は「材料が高い・盤が遅い」の両方を前提に、早い段階で寸法を固める判断が有利になります。

更新時に母線側で起きること

  • 変圧器の端子位置・高さが変わり、取り合いの曲げ形状が変わる
  • 効率向上で外形が大きくなり、離隔の再確認が必要になる
  • 既設と同寸法の銅帯が手に入らず、板厚の読み替えが発生する
  • 相別表示の方式が旧盤と揃わない

先に決めておくと早く進むこと

  • 板厚と幅の候補を2案(例:6×50と8×40)用意しておく
  • 穴位置は現物合わせではなく寸法で確定させる
  • 表面処理(裸/すずめっき/銀めっき)を先に決める
  • 予備穴・刻印の要否を図面に書き込む

要点:2026年度のトップランナー基準移行で母線の作り直しが増える。

図面・見積り依頼で決めておく項目

母線の見積りが早く出るかどうかは、寸法・穴・表面処理・数量の4点が確定しているかで決まります。規格側の要求(相別表示・離隔・温度上昇)は、この4点に落とし込まれた時点で初めて加工可能な情報になります。

キュービクル母線の手配で決める項目

  • 材質と質別 … C1100(タフピッチ銅)かC1020(無酸素銅)か
  • 板厚 × 幅 × 長さ … 離隔と許容電流の両方から決める
  • 曲げ … 曲げ位置・角度・内R(または中心間距離)
  • … 径・位置・長穴の有無・座ぐりの有無・予備穴
  • 表面処理 … 裸/すずめっき/銀めっき/ニッケルめっき
  • 識別 … 相の刻印・マーキングの要否と位置
  • 数量と納期 … 試作か量産か、いつ盤に入れるか

当社の対応範囲

当社では銅ブスバー(板厚3mm〜20mm)・銅丸棒(φ10〜φ55)・アルミの切断・曲げ・穴あけを、1本から100本程度の小ロットで受けています。材質はC1100(導電率100%IACS前後)とC1020(101%前後)が中心で、変圧器・配電盤・受配電設備向けの母線が主な用途です。切断・曲げ・穴あけに加えて加工後のめっき手配まで含めて対応できるため、表面処理を含めた1社手配が可能です。加工設備と工程は加工技術のページ、ブスバーそのものの基礎はブスバーとはで説明しています。

図面が固まっていない段階でも、旧品の現物写真と取り合い寸法があれば検討を始められます。板厚候補を2案並べ、離隔と加工性の両面から成立する側を選ぶ進め方が、手戻りが少なく済みます。

要点:寸法・穴・表面処理・数量の4点が固まれば見積りは早い。

よくあるご質問

JIS C 4620の最新版はいつ改正されましたか

JIS C 4620 の最新版は 2023年12月20日制定の JIS C 4620:2023 で、2018年版を置き換えています。適用範囲は公称電圧6.6kV・周波数50Hzまたは60Hz・系統短絡電流12.5kA以下・受電設備容量4,000kVA以下のキュービクル式高圧受電設備です。

キュービクルの主回路に銅帯(ブスバー)を使ってよいのですか

使えます。JIS C 4620 の 7.4.1 e) が「主回路電線及び銅帯(引込口及び引出口の配線を含む)には、相別の表示を行う」と規定していることから、主回路の導体として銅帯を使う前提で規格が書かれていると読めます。さらに 7.4.3 a) では、接地母線への銅帯の使用が明示的に認められています。

キュービクル母線の相別表示はどの規格に従いますか

JIS C 0446「色又は数字による電線の識別」に従います。JIS C 4620 側は「相別の表示を行う」ことを求め、色や数字の具体的な割り当ては JIS C 0446 に委ねる構成です。表示の対象は盤内の母線だけでなく、引込口・引出口の配線も含まれます。

高圧充電部の絶縁距離はどれだけ必要ですか

JIS C 4620:2018 の表4では、高圧充電部相互間および高圧充電部と大地間が最小100mm、高圧用絶縁電線の非接続部は相互間・大地間ともに最小70mmと規定されています。低圧回路は空間距離・沿面距離とも10mm以上(線間電圧300Vを超える沿面距離は20mm以上)です。いずれも最小値のため、実際の設計では加工公差と組立誤差を見込んだ余裕を確保します。

母線にすずめっきをすると何が変わりますか

許容される温度上昇の限度が上がります。JIS C 4620:2018 の表2では、ねじ締め接続部の温度上昇限度が裸銅65K・すずめっき85K・銀めっきまたはニッケルめっき95Kと区分されています。ただし上がるのは限度側で、通電による発熱量そのものは断面積と電流で決まるため、断面不足をめっきで補う設計にはしないことが前提です。

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