用途・事例

EVバッテリーの銅ブスバー|セル接続部の設計条件と発注時の確認項目

EVのバッテリーパックでは、セル同士・モジュール同士をつなぐ導体に銅ブスバーが使われます。結論として、この部位のブスバーを決めるときは「連続電流とピーク電流の切り分け」「接合方法(溶接か締結か)を先に決める」「公差と振動をどこで吸収するか」の3点を設計の早い段階で固めると、後工程での作り直しが減ります。この記事では、2026年時点の電池構造の変化をふまえて、セル・モジュール接続部の設計条件と、発注時に決めておくべき確認項目を表と数値で整理します。

EVバッテリー
銅ブスバー
セル接続
大電流
レーザー溶接
異種金属接合
表面処理

EVバッテリーの銅ブスバーとは何か・どこに使われるか

EVバッテリーの銅ブスバーとは、電池セルやモジュールの端子同士を、電線を使わずに帯状の銅導体で直接つなぐ部品です。狭いパック内で大電流を通し、しかも振動下で緩まないことが求められるため、断面形状・接合方法・表面処理をセットで設計します。

バッテリーパック内で銅ブスバーが使われるのは、おおむね次の3階層です。電流の大きさも要求も階層ごとに違うので、まずどこの話をしているのかを切り分けることが設計の出発点になります。

パック内で電流が通る道筋

 セル端子 ──[セル間ブスバー]── セル端子   ← 薄板・溶接接合が中心
     │
 モジュール端子 ──[モジュール間ブスバー]──   ← 中厚板・締結/溶接の併用
     │
 パック主回路 ──[メインブスバー]── ジャンクションボックス ── 車両側
                                          ↑ 厚板・ボルト締結が中心
  

セル間・モジュール間

  • 板厚は薄め(おおむね0.5〜3mm程度)
  • 溶接・超音波接合が中心
  • セルの位置公差と膨張を吸収する形状が要る
  • アルミ端子との異種金属接合が発生しやすい

メイン回路・取り出し部

  • 板厚は厚め(3〜10mm程度が中心)
  • ボルト締結が中心。点検・交換を考慮
  • 絶縁と沿面・空間距離の確保が主題になる
  • 締付トルク管理と表面処理の指定が効く

当社が対応しやすいのは、このうち中厚板〜厚板のモジュール間・メイン回路側の切断・曲げ・穴あけ・表面処理です。詳しくは加工技術のページで加工範囲を紹介しています。

要点:同じ「バッテリー用ブスバー」でも、セル間・モジュール間・メイン回路で板厚も接合方法も別物なので、まず階層を切り分ける。

2026年時点で電池の構造はどう変わったか

2026年時点の大きな流れは、モジュールを省いてセルを直接パックや車体に組み込む構造(セル・トゥ・パック、セル・トゥ・ボディ)への移行です。これにより、モジュール単位でまとめていた接続がパック全体にわたる長い導体に置き換わり、ブスバー1本あたりの長さ・電流・位置精度の要求が上がっています。

最新の状況(2026年時点)

2022年から2025年にかけて、電池パックはモジュール方式からセル・トゥ・パック(CTP)/セル・トゥ・ボディ(CTB)へ急速に移行しました。あわせて車両側の主回路電圧も400V系から800V系への切り替えが進み、同じ出力なら電流を下げられる一方で、絶縁距離の確保がより厳しくなっています。材料面では、LME銅価格が2026年前半に1トンあたり13,000ドル台の高値圏で推移しており、銅の使用量そのものが原価に直結する局面が続いています。

電圧を上げると電流が下がるため、導体の損失は大きく減ります。損失は電流の2乗に比例するので、同じ電力を倍の電圧で送れば理屈の上では損失は4分の1です。これが800V系への移行がブスバー設計に与える最大の影響です。

導体の損失 P (W) = I² × R  R (Ω) = 抵抗率 ρ × 長さ L ÷ 断面積 A

主な導体材料の体積導電率(銅を100とした概略値)

銅(C1100)
約100%

アルミ(A1050系)
約61%

黄銅
約28%

アルミで銅と同じ電流を流すには、断面積でおおよそ1.5〜1.6倍が目安になります。軽量化のためにアルミを選ぶ判断はありますが、その場合は占有スペースと接合方法(後述の異種金属接合)が新しい制約になります。

要点:2026年はCTP/CTB化と800V化が同時に進み、ブスバーは「長く・薄く・絶縁距離を確保して」という方向に寄っている。

セル接続部のブスバーはどんな条件で決まるか

セル接続部のブスバー断面は、連続して流れる電流と、加速・急速充電時のピーク電流のどちらで決めるかを最初に切り分けることで決まります。ピークだけを見て断面を増やすと重量とコストが跳ね上がり、連続だけを見ると急速充電時に温度が想定を超えます。

目安として、自然空冷で温度上昇を30K程度に収める前提なら、銅ブスバーの電流密度はおおむね2〜3A/mm²が出発点になります。パック内は密閉されて空気が動きにくく、周囲にセルという発熱体が並ぶため、盤内と同じ感覚で使うと過大評価になります。下表は「まず当たりを付ける」ための参考値です。

銅ブスバー断面積と連続電流の目安(自然空冷・温度上昇30K程度を想定した参考値)

寸法(厚さ×幅) 断面積 連続電流の目安 想定する使い所
1.0mm × 20mm 20mm² 40〜60A セル間(小容量)
2.0mm × 20mm 40mm² 80〜120A セル間・モジュール間
3.0mm × 30mm 90mm² 180〜270A モジュール間
5.0mm × 40mm 200mm² 400〜600A メイン回路
8.0mm × 50mm 400mm² 800〜1,200A メイン回路・取り出し部

銅ブスバー断面積と連続電流の目安(自然空冷・温度上昇30K程度を想定した参考値)

1.0mm × 20mm / 20mm² / セル間(小容量)

連続電流の目安 40〜60A

2.0mm × 20mm / 40mm² / セル間・モジュール間

連続電流の目安 80〜120A

3.0mm × 30mm / 90mm² / モジュール間

連続電流の目安 180〜270A

5.0mm × 40mm / 200mm² / メイン回路

連続電流の目安 400〜600A

8.0mm × 50mm / 400mm² / メイン回路・取り出し部

連続電流の目安 800〜1,200A

注意:この表は設計値ではなく出発点

実際の許容電流は、周囲温度・パック内の空気の動き・冷却板との接触・複数本を並べたときの相互加熱・表面処理の有無で大きく変わります。特にバッテリーパック内は密閉度が高く、同じ断面でも盤内より小さい電流で温度上昇が頭打ちになることがあります。最終判断は実機での温度測定か熱解析で確認してください。

もう1つ忘れやすいのが温度による抵抗の増加です。銅の抵抗は温度が上がると増え、20℃を基準にすると1℃あたりおよそ0.4%増えます。80℃まで上がれば抵抗は20℃時のおよそ1.24倍になり、その分だけ発熱も増えます。発熱が抵抗を上げ、上がった抵抗がさらに発熱を増やす関係にあるため、余裕のない断面設計は温度面で不利に働きます。

R(t) ≒ R(20℃) × { 1 + 0.00393 × (t − 20) }  例:t=80℃ なら約1.24倍

要点:断面は連続電流で決め、ピークは温度上昇の時間的な余裕で吸収する。表の値はあくまで出発点として扱う。

接合方法(溶接・締結)はどう選び分けるか

接合方法は、後から外す必要があるかどうかで大きく分かれます。セル端子のように外さない前提ならレーザー溶接や超音波接合、点検・交換の対象になるメイン回路側ならボルト締結が基本です。この判断を後回しにすると、ブスバーの形状(穴を開けるのか、重ね代を取るのか)が決まりません。

バッテリー用ブスバーの主な接合方法

方法 向いている部位 長所 気をつける点
レーザー溶接 セル端子・薄板同士 高速・非接触で、振動や電気的影響をワークに与えにくい すき間の管理が必須。治具と設備の初期費用が大きい
超音波接合 銅とアルミなど異種金属 溶かさずに固相のまま接合でき、脆い層ができにくい ホーンが当たる面積と押さえ方に制約がある
抵抗溶接 薄板・小電流部 設備が比較的簡素で量産に向く 銅は導電・熱伝導が良く、そのままでは溶接が難しい
ボルト締結 メイン回路・取り出し部 分解・点検・交換ができる 締付トルク管理と緩み対策が要る。穴加工が必要

バッテリー用ブスバーの主な接合方法

レーザー溶接 / セル端子・薄板同士

高速・非接触。すき間管理が必須で初期費用が大きい

超音波接合 / 銅とアルミなど異種金属

固相のまま接合でき脆い層ができにくい。当て面に制約

抵抗溶接 / 薄板・小電流部

設備が簡素。銅は熱が逃げやすく条件出しが難しい

ボルト締結 / メイン回路・取り出し部

分解・点検ができる。トルク管理と緩み対策が要る

コツ:締結部は「面圧」で考える

ボルト締結の接触抵抗は、見かけの重ね面積ではなくボルト周辺の実際の接触面圧で決まります。重ね代を広げるより、必要な本数のボルトを適切な間隔で配置し、規定トルクで締めるほうが効きます。座面が銅の場合は平座金を入れて面圧を分散させると、締付跡による変形を抑えられます。

要点:外すか外さないかで接合方法が決まり、それが穴・重ね代・板厚といったブスバー形状を決める。

銅とアルミをつなぐときに何に注意するか

銅とアルミを直接つなぐときは、溶かして混ぜる接合(溶融接合)を避けるのが原則です。銅とアルミを溶融させると界面に脆い金属間化合物の層ができ、強度と接続の信頼性が落ちるためです。軽量化のためにアルミ端子のセルを使う設計では、この点が最初の関門になります。

注意:異種金属の組み合わせで起きること

1つは上記の金属間化合物です。もう1つは電食(異種金属接触腐食)で、水分がある環境では電位の低いアルミ側が優先的に腐食します。さらに、銅とアルミは熱膨張率が違うため、温度サイクルを受けると接合部にせん断方向の力が繰り返しかかります。密閉パックでも結露は起こり得るため、いずれも「起きない前提」で設計しないほうが安全です。

取りうる対策

  • 超音波接合など固相のまま接合する方法を使う
  • 銅とアルミを貼り合わせたクラッド材を間に入れる
  • 接触面にすず・ニッケルめっきを施して直接接触を避ける
  • 接合部をシールし、水分が触れないようにする

避けたい設計

  • 銅とアルミを裸のままボルトで直接締める
  • 溶融溶接で銅とアルミを直接つなぐ
  • 温度サイクルの伸縮を逃がす部分がない固定
  • 点検できない位置に異種金属接合を置く

公差と伸縮の吸収には、薄い銅箔を積層した可とう導体(フレキシブルブスバー)を使う方法もあります。セルの位置ずれや膨張を吸収しながら大電流を通せるため、剛体のブスバーで無理に位置を合わせるより組立が安定します。

要点:銅とアルミは「溶かさない・直接触れさせない・伸縮を逃がす」の3点で設計する。

表面処理(すず・ニッケル・銀)はどう選ぶか

表面処理は、接続部の環境温度と腐食条件で選ぶのが基本です。おおまかには、一般的な環境ならすず、高温や腐食性がある環境ならニッケル、接触抵抗を最小にしたい特殊用途なら銀という順で検討します。

銅ブスバーの主な表面処理の使い分け

処理 向いている条件 接触抵抗 留意点
すずめっき 一般的な温度域・コスト重視 低く安定しやすい 柔らかいため厚膜だとクリープしやすい
ニッケルめっき 高温・腐食環境 すずよりやや高い 硬く、締付時になじみにくい
銀めっき 大電流・低接触抵抗が要る箇所 最も低い部類 費用が高い。硫黄分のある環境で変色
無処理(生地) すぐ組み立てて密閉する場合 初期は低い 酸化被膜が育つと接触抵抗が上がる

銅ブスバーの主な表面処理の使い分け

すずめっき / 一般的な温度域・コスト重視

接触抵抗が低く安定。柔らかいためクリープに注意

ニッケルめっき / 高温・腐食環境

耐熱・耐食に優れる。接触抵抗はすずよりやや高い

銀めっき / 大電流・低接触抵抗が要る箇所

接触抵抗は最も低い部類。費用が高く硫化に注意

無処理(生地) / すぐ組み立てて密閉する場合

初期は低いが、酸化被膜で接触抵抗が上がる

すずが選ばれやすいのは、金属として柔らかく、ボルトで締めたときにめっき層がつぶれて微細なすき間を埋め、実質的な接触面積が増えるためです。一方で膜厚が過大だと、温度サイクルで少しずつ材料が逃げて締付力が落ちることがあります。膜厚は「厚ければ良い」ではなく、用途に合わせた指定が要ります。処理の選び方は銅ブスバーへのめっきのページでも整理しています。

要点:一般環境はすず、高温・腐食環境はニッケル、低接触抵抗が最優先なら銀。膜厚まで指定する。

発注前に決めておく確認項目

発注前に決めておくべきことは、電流条件・接合方法・表面処理・公差の4つです。この4つが決まっていれば、図面が完成していなくても見積りと工程の当たりを付けられます。

見積り依頼の前に決めておくこと

  • 連続電流とピーク電流(値と継続時間)、想定する周囲温度
  • 使用部位(セル間/モジュール間/メイン回路)と、パック内の冷却の有無
  • 接合方法(溶接か締結か)。締結なら穴径・本数・締付トルクの想定
  • 相手側の材質(銅かアルミか)と、その表面処理
  • ブスバー側の材質(C1100/C1020)、質別、板厚
  • 表面処理の種類と膜厚、めっきを乗せない範囲(マスキング)の指定
  • 絶縁の要否(絶縁被覆・粉体塗装・熱収縮チューブなど)
  • 数量と時期(試作何個、量産で月何個)

コツ:試作段階では公差を欲張らない

試作の段階から穴位置の公差を厳しく指定すると、加工方法が限定されて費用と納期が伸びます。まず現物合わせで組み立ててみて、実際にどこが効いているかを確認してから公差を締めるほうが、結果的に早く安く着地することが多くあります。図面がまだ無い段階でも、手書きのスケッチや現物の写真からご相談いただけます。

材料調達の前提(2026年)

銅価格が高値圏にある局面では、見積りの有効期限や材料価格の変動をどう扱うかを、発注前に取り決めておくとお互いに動きやすくなります。板厚や幅を1段階変えるだけで材料費が変わるため、断面に余裕を持たせるかどうかはコストの話でもあります。

要点:電流条件・接合方法・表面処理・公差の4つが決まれば、図面前でも見積りできる。

よくあるご質問

EVバッテリー用のブスバーに銅とアルミのどちらを使うべきですか

導電性と接続の確実さを優先するなら銅、重量とコストを優先するならアルミが基本の考え方です。アルミは銅の約61%の導電率のため、同じ電流には約1.5〜1.6倍の断面積が必要になり、その分の設置スペースが要ります。相手側端子の材質と接合方法(溶融接合を避けられるか)も合わせて判断してください。

銅とアルミを直接ボルトで締めても問題ありませんか

裸のまま直接締めることは推奨されません。水分があると電位の低いアルミ側が優先的に腐食し(電食)、また熱膨張率の差で温度サイクル中に締付力が変化するためです。接触面にすずやニッケルのめっきを施す、クラッド材を間に入れる、接合部をシールするなどの対策を組み合わせてください。

セル接続のブスバーはなぜレーザー溶接が多いのですか

非接触で加工でき、セルに振動や電流を与えずに高速で接合できるためです。電池セルは内部が熱と電気に敏感なため、ワークへの影響が少ない方法が好まれます。ただし溶接部のすき間管理が品質を左右するので、治具の設計と部品の平面度が前提条件になります。

バッテリー用ブスバーの許容電流はどう決めればよいですか

連続して流れる電流を基準に断面積を決め、ピーク電流は温度上昇の時間的な余裕で吸収する考え方が実務的です。自然空冷で温度上昇30K程度なら電流密度2〜3A/mm²が出発点になりますが、密閉されたバッテリーパック内は空気が動きにくく周囲のセルも発熱するため、この値をそのまま使うと過大評価になります。最終的には実機測定か熱解析で確認してください。

試作1個だけでも対応してもらえますか

はい、試作・小ロットにも対応しています。図面が未完成でも、手書きのスケッチや現物の写真からご相談いただけます。電流条件と接合方法(溶接か締結か)が決まっていれば、板厚と表面処理の候補をこちらからご提案できます。

銅ブスバーの加工・お見積りは、お気軽にご相談ください

図面1枚から、手書きスケッチや現物の写真でもご相談いただけます。試作・小ロット・短納期にも対応しています。

お問い合わせ・見積り依頼はこちら

新着情報・新着コラム