材料・規格

JIS C 8480が定める母線の電流密度|規格の読み方と適用範囲

盤の母線サイズを決めるとき、多くの現場が根拠にしているのが「電流密度」です。その数値の出どころは JIS C 8480(キャビネット形分電盤)の表6で、基準定格電流に応じて 3.0/2.5/2.0/1.7 A/mm² と段階的に下がっていきます。この記事では、その条文が実際に何を定めていて、どこまで適用してよいのか、そして温度上昇試験で確認した場合に電流密度によらなくてよい理由までを、規格の側から整理します。許容電流の計算手順ではなく、その計算が寄りかかっている「根拠」を確認したい方向けの内容です。

JIS C 8480
電流密度
母線
銅ブスバー
分電盤
温度上昇
許容電流

JIS C 8480が定める母線の電流密度とは

JIS C 8480 が定める母線の電流密度とは、キャビネット形分電盤の母線・母線分岐導体・分岐導体に流してよい電流を、導体断面積1mm²あたりの電流値(A/mm²)で示した上限値です。JIS C 8480:2016 の表6では、基準定格電流の区分ごとに 3.0/2.5/2.0/1.7 A/mm² 以下と規定されています。電流が大きい区分ほど許される電流密度は小さくなります。

JIS C 8480:2016 表6 — 基準定格電流と電流密度

基準定格電流の区分 電流密度 断面積の目安(例)
125 A 以下 3.0 A/mm² 以下 125A なら約42mm² 以上
125 A 超え 250 A 以下 2.5 A/mm² 以下 250A なら約100mm² 以上
250 A 超え 400 A 以下 2.0 A/mm² 以下 400A なら約200mm² 以上
400 A 超え 630 A 以下 1.7 A/mm² 以下 630A なら約371mm² 以上

JIS C 8480:2016 表6 — 基準定格電流と電流密度

基準定格電流 125 A 以下

電流密度 3.0 A/mm² 以下(125A なら約42mm² 以上)

125 A 超え 250 A 以下

電流密度 2.5 A/mm² 以下(250A なら約100mm² 以上)

250 A 超え 400 A 以下

電流密度 2.0 A/mm² 以下(400A なら約200mm² 以上)

400 A 超え 630 A 以下

電流密度 1.7 A/mm² 以下(630A なら約371mm² 以上)

「基準定格電流」は定格電流そのものではない

表6の区分に使われている基準定格電流は、JIS C 8480:2016 の用語定義で「各定格電流を規定するための基準となる電流」とされています。盤の主開閉器の定格や実負荷電流とは別に、その盤の各定格を決めるための基準値として置かれた電流です。ここを実負荷電流と読み違えると、区分が1つずれて電流密度を大きく取ってしまうので注意してください。

注意:よくある読み違い

「うちの盤は実測350Aだから 2.0 A/mm² でよい」という判断は、基準定格電流が400Aを超える設計になっていれば誤りです。区分は実際に流れている電流ではなく、盤の定格を決める基準の電流で選びます。境界(125/250/400/630A)の直近では、どちらの区分に入るかで必要断面積が2割以上変わります。

要点:電流密度は3.0→1.7 A/mm² と段階的に下がる。区分の入口は「基準定格電流」であって実負荷電流ではない。

なぜ電流が大きいほど電流密度を下げるのか

電流が大きい区分ほど電流密度の上限が下がるのは、導体を太くしても放熱面が同じ割合では増えないからです。発熱量は断面積に反比例して減りますが、熱を捨てる表面積は断面の外周にしか依存しません。断面を大きくするほど「1mm²あたりが受け持てる放熱量」が目減りするため、規格は大電流側で電流密度を絞っています。

断面積 S (mm²) = 板厚 t (mm) × 幅 w (mm)
放熱に効く外周 L (mm) ≒ 2 × ( t + w )

断面積と外周の伸び方の違い

 5×20 = 100mm²   外周 50mm   → 外周/断面積 = 0.50
 5×40 = 200mm²   外周 90mm   → 外周/断面積 = 0.45
 5×75 = 375mm²   外周 160mm  → 外周/断面積 = 0.43
 10×40= 400mm²   外周 100mm  → 外周/断面積 = 0.25  ← 厚く積むと放熱が伸びない

同じ断面積でも、薄く広い形の方が外周が長く放熱に有利です。板厚10mmで断面を稼ぐより、板厚5〜6mmで幅を広げる方が温度が上がりにくいのは、この比の差によります。

基準定格電流の区分ごとの電流密度(JIS C 8480:2016 表6)

125A以下
3.0
〜250A
2.5
〜400A
2.0
〜630A
1.7

要点:放熱は断面積ではなく外周に依存する。だから大電流側ほど電流密度を絞る必要がある。

この電流密度はどこまで適用できるのか

JIS C 8480 の電流密度は、同規格の適用範囲に入る盤にだけそのまま使える数値です。JIS C 8480:2016 は定格電圧600V(対地電圧300V)以下、定格短時間耐電流35kA以下、基準定格電流630A以下のキャビネット形分電盤を対象としており、住宅用分電盤は適用外です。630Aを超える母線や高圧回路にこの表を外挿してはいけません。

JIS C 8480:2016 の適用範囲

項目 範囲
定格電圧 600 V(対地電圧300 V)以下
定格周波数 50 Hz 又は 60 Hz
定格短時間耐電流 35 kA 以下
基準定格電流 630 A 以下
対象外 住宅用分電盤

JIS C 8480:2016 の適用範囲

定格電圧

600 V(対地電圧300 V)以下

定格周波数

50 Hz 又は 60 Hz

定格短時間耐電流

35 kA 以下

基準定格電流

630 A 以下

対象外

住宅用分電盤

盤の種類ごとに参照先の規格が違う

母線の設計で参照される規格は1本ではありません。下表は「どれを開けばよいか」の対応です。

母線まわりで参照される主な規格

規格 対象 母線に関して見るところ
JIS C 8480 キャビネット形分電盤 電流密度・温度上昇限度・導体の導電率
JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備 絶縁距離・相別表示・接地母線
JEM 1265 低圧金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ 低圧盤としての構造・性能
JIS H 3140 銅ブスバー(材料) 材質・寸法許容差など材料側の規定

母線まわりで参照される主な規格

JIS C 8480(キャビネット形分電盤)

電流密度・温度上昇限度・導体の導電率

JIS C 4620(キュービクル式高圧受電設備)

絶縁距離・相別表示・接地母線

JEM 1265(低圧金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ)

低圧盤としての構造・性能

JIS H 3140(銅ブスバー・材料)

材質・寸法許容差など材料側の規定

注意:キュービクルの母線に表6をそのまま当てない

JIS C 4620:2018 が対象とするのは公称電圧6.6kV、系統短絡電流12.5kA以下、受電設備容量4,000kVA以下の受電設備です。変圧器容量が大きくなれば低圧主母線は容易に630Aを超えます。630A超の母線は JIS C 8480 の適用範囲外なので、電流密度の目安を延長して使うのではなく、温度上昇と短絡強度の検討で裏付けを取ってください。

要点:表6は「600V以下・630A以下の分電盤」の数値。高圧盤や大容量母線には別の裏付けが要る。

温度上昇を試験で確認すれば電流密度によらなくてよい

JIS C 8480:2016 の表6には、母線・母線分岐導体及び分岐導体の温度上昇が規格の温度上昇の規定に適合する場合は、この電流密度によらなくてよいという趣旨の除外条件が付いています。つまり電流密度は「温度上昇を満たすための簡便な代用指標」であって、温度上昇そのものを確認できるなら、そちらが優先される構造になっています。

JIS C 8480:2016 表3(抜粋) — 温度上昇限度 ※周囲温度40℃基準

場所・部材 温度上昇限度 最高許容温度
母線・母線分岐導体及び分岐導体 65 K 105 ℃
ねじ締めなどによる接続部(裸銅) 50 K 90 ℃
ねじ締めなどによる接続部(すずめっき) 65 K 105 ℃
ねじ締めなどによる接続部(銀・ニッケルめっき) 75 K 115 ℃
接触部(裸銅) 35 K 75 ℃
キャビネットの外郭 30 K 70 ℃

JIS C 8480:2016 表3(抜粋) — 温度上昇限度 ※周囲温度40℃基準

母線・母線分岐導体及び分岐導体

65 K(最高許容温度 105 ℃)

ねじ締めなどによる接続部(裸銅)

50 K(90 ℃)

ねじ締めなどによる接続部(すずめっき)

65 K(105 ℃)

ねじ締めなどによる接続部(銀・ニッケルめっき)

75 K(115 ℃)

接触部(裸銅)

35 K(75 ℃)

キャビネットの外郭

30 K(70 ℃)

この表で目を引くのは、母線本体(65K)より接続部・接触部の方が厳しいという点です。裸銅の接触部は35Kで、母線本体の半分程度しか許されていません。母線の断面積を確保しても、締結部の面圧や表面状態が悪ければそこが先に限界に達します。めっきで限度が緩和されるのは、接触抵抗の増加が抑えられるためです。接続面の処理の考え方は銅ブスバーへのめっきのページでも整理しています。

コツ:規格の数値は「周囲温度40℃基準」で読む

温度上昇限度は分電盤外部の周囲温度40℃を基準にした値です。屋外設置や高温環境で周囲温度が想定を超える現場では、同じ断面積でも余裕がなくなります。設計時は「盤内温度が何℃までの前提か」を必ず一緒に控えておいてください。

要点:電流密度は代用指標。温度上昇を確認できるなら温度上昇が優先。ただし限界になるのは母線本体より接続部。

母線に使う銅は導電率96%IACS以上

JIS C 8480:2016 は、帯状導体を母線に使う場合の材料として導電率96%IACS以上を求めています。この条件を満たす代表がタフピッチ銅 C1100 と無酸素銅 C1020 で、いずれも一般に約100%IACS前後の導電率をもつため、通常の銅ブスバーであれば問題なく満たせます。

C1100(タフピッチ銅)

  • ブスバーの標準材。流通量が多く入手しやすい
  • 導電率が高く、盤内母線の大半はこれで足りる
  • 還元性雰囲気での高温加熱では水素脆化に注意

C1020(無酸素銅)

  • 酸素をほとんど含まず、水素脆化が起きにくい
  • ろう付け・溶接を伴う接合や高信頼用途で選ばれる
  • C1100より入手性・価格の面で不利になりやすい

導体材料の導電率の目安(焼なまし銅=100%IACS基準)

無酸素銅 C1020
約100%
タフピッチ銅 C1100
約100%
規格の下限
96%
アルミ(純アルミ系)
約61%
黄銅(真鍮)
約26%以下

要点:96%IACS以上という条件はC1100/C1020なら通常満たす。質別は電気特性ではなく加工性で選ぶ。

規格から板厚と幅を逆算する手順

規格の電流密度から母線寸法を決める手順は、①基準定格電流を確定する→②区分から電流密度を引く→③必要断面積を計算する→④流通寸法の板厚×幅に割り付ける→⑤温度上昇・短絡強度・穴あけ後の断面で検証する、の5段階です。③までは電卓で終わりますが、実際に効いてくるのは④と⑤です。

母線サイズを決める5段階

  • ① その盤の基準定格電流を確定する(実負荷電流ではない)
  • ② 表6の区分から電流密度(3.0/2.5/2.0/1.7 A/mm²)を引く
  • ③ 必要断面積 = 電流 ÷ 電流密度 を計算する
  • ④ 板厚×幅の組合せに割り付ける(薄く広い方が放熱に有利)
  • ⑤ ボルト穴の欠損・支持間隔・短絡強度・盤内温度で検証する
必要断面積 S (mm²) = 電流 I (A) ÷ 電流密度 J (A/mm²)
例) 400A ÷ 2.0 A/mm² = 200 mm² → 5×40 (200mm²) が最小の目安

表6から逆算した必要断面積と銅帯寸法の例

基準定格電流 電流密度 必要断面積 寸法例(板厚×幅)
100 A 3.0 A/mm² 約34 mm² 3×15 = 45 mm²
125 A 3.0 A/mm² 約42 mm² 3×20 = 60 mm²
200 A 2.5 A/mm² 80 mm² 4×25 = 100 mm²
250 A 2.5 A/mm² 100 mm² 5×20 = 100 mm²
400 A 2.0 A/mm² 200 mm² 5×40 = 200 mm²
500 A 1.7 A/mm² 約295 mm² 5×60 = 300 mm²
630 A 1.7 A/mm² 約371 mm² 5×75 = 375 mm²

表6から逆算した必要断面積と銅帯寸法の例

100 A / 3.0 A/mm²

必要 約34 mm² → 3×15 = 45 mm²

125 A / 3.0 A/mm²

必要 約42 mm² → 3×20 = 60 mm²

200 A / 2.5 A/mm²

必要 80 mm² → 4×25 = 100 mm²

250 A / 2.5 A/mm²

必要 100 mm² → 5×20 = 100 mm²

400 A / 2.0 A/mm²

必要 200 mm² → 5×40 = 200 mm²

500 A / 1.7 A/mm²

必要 約295 mm² → 5×60 = 300 mm²

630 A / 1.7 A/mm²

必要 約371 mm² → 5×75 = 375 mm²

注意:ボルト穴の分だけ断面は減っている

上表は穴のない断面での計算です。実際の母線には接続用のボルト穴が開いており、穴の位置では有効断面積がその分だけ減ります。例えば板厚5mm・幅40mmの母線に φ11 の穴を1つ開ければ、その断面は 200mm² から 145mm² まで落ちます。穴の位置を電流経路の狭くなる場所に置かない、縁距離を確保する、といった配慮を図面段階で入れてください。

穴位置・縁距離・曲げ部の板厚変化は、図面と現物で最も食い違いやすいところです。当社では加工技術のページに挙げた工程で一貫して確認しています。役割から確認したい場合はブスバーとはもご覧ください。

要点:電流密度から出るのは「最小の目安」。穴・曲げ・支持で減る分を見込んで最終寸法を決める。

2026年の銅高で「余裕の取り方」がコストに直結する

2026年時点では、母線の断面積をどれだけ余裕を見て取るかが、そのまま材料費に跳ね返る局面にあります。

最新の状況(2026年8月時点)

国内の電気銅建値は2026年に入って過去最高値の更新が続いており、2026年8月には1トン当たり238万円へ改定されました。銅高と並行して、電線・ケーブルでは受注停止や納期回答の遅延も伝えられています。母線の断面積を一律に大きく取る設計は材料費の増加に直結するため、規格上の必要断面積を押さえたうえで、どこに余裕を置くかを意図的に決めることの価値が上がっています。相場は変動するため、見積りの有効期限と材料価格の扱いは発注時に確認してください。

コツ:余裕は「断面積」より「接続部」に置く

温度上昇の限界になりやすいのは母線本体ではなく接続部です(表3では裸銅の接触部が35K)。同じ費用を使うなら、断面積を一律に上げるより接続面積の確保・めっき・締結管理に配分した方が、発熱トラブルの抑制には効きやすくなります。

要点:材料高の局面では「一律に太くする」より「効くところに余裕を置く」設計が有利。

よくあるご質問

ブスバーの電流密度2A/mm²という数字はどこから来ているのですか

JIS C 8480(キャビネット形分電盤)の表6で、基準定格電流が250Aを超え400A以下の区分に対して「2.0 A/mm²以下」と規定されているのが出どころです。同じ表では125A以下が3.0、125A超250A以下が2.5、400A超630A以下が1.7 A/mm²以下と定められており、2A/mm²はあくまで特定の電流区分の値であって、すべての母線に使える万能値ではありません。

JIS C 8480の電流密度は配電盤やキュービクルにもそのまま使えますか

そのままは使えません。JIS C 8480 はキャビネット形分電盤を対象とし、定格電圧600V(対地電圧300V)以下、定格短時間耐電流35kA以下、基準定格電流630A以下の範囲に適用される規格です。キュービクル式高圧受電設備は JIS C 4620、低圧金属閉鎖形スイッチギヤは JEM 1265 が対応する規格であり、630Aを超える母線については温度上昇と短絡強度の検討で個別に裏付けを取る必要があります。

電流密度を守れば温度上昇の確認はしなくてよいのですか

逆で、温度上昇の確認ができる場合は電流密度の規定によらなくてよい、という関係です。JIS C 8480:2016 の表6には、母線・母線分岐導体及び分岐導体の温度上昇が規格の温度上昇の規定に適合する場合を除外する条件が付いています。電流密度は温度上昇を満たすための簡便な代用指標であり、盤内の実際の温度が確認できるならそちらが優先されます。

母線の温度上昇限度は何度までですか

JIS C 8480:2016 の表3では、母線・母線分岐導体及び分岐導体の温度上昇限度は65K(最高許容温度105℃)で、分電盤外部の周囲温度40℃を基準としています。同じ表で裸銅の接触部は35K、ねじ締めによる接続部(裸銅)は50Kと、母線本体より接続部の方が厳しく規定されています。実際の設計では規格原本で最新版の値を確認してください。

母線に使う銅の材質は規格で決まっていますか

JIS C 8480:2016 では、帯状導体を用いる場合に導電率96%IACS以上であることが求められています。タフピッチ銅C1100と無酸素銅C1020はいずれも約100%IACS前後の導電率をもつため、一般的な銅ブスバーであればこの条件を満たします。材料側の寸法や品質は JIS H 3140(銅ブスバー)が対応する規格です。

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