加工技術

銅ブスバーの絶縁紙・マイカシート挟み込み|耐熱クラスの選び方

銅ブスバー(バスバー)どうしを絶縁するとき、絶縁紙やマイカシートを間に挟み込む「挟み込み絶縁」は、粉体塗装や熱収縮チューブと並ぶ代表的な方法のひとつです。この記事では、挟み込み絶縁がどんな場面で選ばれるか、耐熱クラス(E種・B種・F種・H種)の区分と選び方、他の絶縁方法との使い分けを、2026年時点の需要動向も交えて整理します。結論としては、絶縁紙・マイカシートは「分解・点検がある箇所」「部分的に絶縁したい狭い箇所」に強く、全面を均一に絶縁したい場合は粉体塗装のほうが向いています。

銅ブスバー
バスバー
絶縁紙
マイカシート
耐熱クラス
JIS C 4003
盤内絶縁

挟み込み絶縁とは何か・使われる場面

挟み込み絶縁とは、銅ブスバーどうし、またはブスバーと盤体・支持物の間に、絶縁紙やマイカシートなどのシート状絶縁材を物理的に挟み込んで絶縁距離・絶縁性能を確保する方法です。盤内で複数枚のブスバーを近接配置する箇所や、分解・交換を前提にした接続部でよく使われます。

前提

挟み込み絶縁は「材料そのものの絶縁性能」と「挟み込む厚み・固定方法」の両方で絶縁距離が決まります。粉体塗装のように導体表面全体を均一に覆う方法とは、絶縁の考え方が異なる点に注意してください。

マイカ(雲母)は天然鉱石で、硬質マイカは電気絶縁性に優れ、軟質マイカは耐熱性に優れるという特性があります。この性質の違いから、用途に応じてマイカシートの構成(マイカ+接着材料+補強材)が選ばれます。近年はxEV(電動車)のバッテリーパック内でも、セル間の断熱やバスバー周辺の絶縁材料としてマイカシートの採用が広がっています。

 銅ブスバー ──┐
             │  絶縁紙 or マイカシート(挟み込み)
 銅ブスバー ──┘
   ※ボルト締結部は絶縁スリーブ・座金で別途絶縁距離を確保

挟み込み絶縁は、分解・点検がある箇所や、部分的・局所的に絶縁距離を確保したい箇所に向く方法です。

マイカシートの構成(硬質マイカ・軟質マイカ・補強材)

マイカシートは、マイカの薄片をそのまま重ねるのではなく、粉砕・再構成したマイカ(集成マイカ)を接着材料で一体化し、必要に応じてガラスクロスや樹脂フィルムで補強した複合材料として作られています。この構成の違いが、そのまま耐熱クラスや機械的な強さの違いになります。

硬質マイカ

  • 電気絶縁性に優れる
  • 板状で剛性があり、平面での絶縁に向く
  • 主に電気絶縁製品(端子台・基板用途など)に使用

軟質マイカ

  • 耐熱性・柔軟性に優れる
  • 曲面や狭い隙間への挟み込みに向く
  • 主に耐熱・耐火材料(断熱材など)に使用

ブスバーの挟み込み絶縁では、固定後に曲げ・振動が加わる箇所があるため、剛性だけでなく柔軟性・追従性も考慮してシートの種類と厚みを選ぶ必要があります。極端に硬いシートを無理に曲げて挟み込むと、割れやクラックの起点になることがあるため注意してください。

マイカシートは「硬質=絶縁性重視」「軟質=耐熱性・柔軟性重視」という構成の違いで選び分けます。

耐熱クラス(E/B/F/H)の区分と目安温度

絶縁材料の耐熱クラスとは、その材料が連続して使用に耐えられる許容最高温度によって区分された等級のことです。日本ではJIS C 4003(電気絶縁-熱的耐久性評価及び呼び方)で定義されており、盤内の絶縁材料を選ぶときはこの区分を基準に周囲温度・通電による温度上昇を見積もります。

注意

耐熱クラスは「瞬間的に耐えられる温度」ではなく「連続使用で劣化が許容範囲に収まる上限温度」です。短時間の異常発熱で破損しないことを保証するものではないため、通常運転時の想定温度に十分な余裕を見て選定してください。

耐熱クラスと許容最高温度の目安(JIS C 4003)

耐熱クラス 許容最高温度 主な構成材料の例
E種 120℃ ポリエステルフィルムなど
B種 130℃ マイカ・ガラス繊維+接着材料
F種 155℃ マイカ・ガラス繊維+シリコーンアルキッド系接着材料
H種 180℃ マイカ・ガラス繊維+けい素樹脂系接着材料

耐熱クラスと許容最高温度の目安(JIS C 4003)

E種

許容最高温度 120℃ / ポリエステルフィルムなど

B種

許容最高温度 130℃ / マイカ・ガラス繊維+接着材料

F種

許容最高温度 155℃ / マイカ・ガラス繊維+シリコーンアルキッド系接着材料

H種

許容最高温度 180℃ / マイカ・ガラス繊維+けい素樹脂系接着材料

マイカシートは、挟み込んで固定した状態での耐熱温度が500℃台まで達する製品もあり、難燃性もUL94のV-0クラス相当を取得している製品が流通しています。ただし実際にブスバーへ適用するときは、マイカシート単体の最高耐熱ではなく、接着材料・補強材を含めた製品全体としての耐熱クラス(B種・F種・H種など)で判断する必要があります。

マイカシート単体の耐熱性だけでなく、接着材料を含めた製品としての耐熱クラス表示を確認することが選定の基本です。

絶縁紙・マイカシートと他の絶縁方法の使い分け

盤内絶縁の方法は、挟み込み絶縁(絶縁紙・マイカシート)のほかに、熱収縮チューブ、粉体塗装があります。加工技術のページでも紹介しているとおり、当社ではこれらを用途に応じて使い分けています。

挟み込み絶縁(絶縁紙・マイカシート)が向く場面

  • 分解・点検・交換を前提とする接続部
  • 狭いスペースで部分的に絶縁したい箇所
  • 高耐熱が必要な箇所(F種・H種クラス)

粉体塗装・熱収縮チューブが向く場面

  • 導体表面全体を均一に絶縁したい場合
  • 露出面が多く、絶縁被膜の密着性を重視する場合
  • 量産品で外観・耐久性を揃えたい場合

コツ

挟み込み絶縁と粉体塗装は併用もできます。導体全体は粉体塗装で絶縁しつつ、特に絶縁距離が厳しい箇所だけマイカシートを追加で挟み込む、という組み合わせ方も現場ではよく見られます。

盤内絶縁方法の比較(目安)

方法 耐熱クラスの目安 分解・交換のしやすさ
絶縁紙 A種〜E種(105〜120℃) しやすい
マイカシート B種〜H種(130〜180℃) しやすい
熱収縮チューブ 製品により異なる 交換はやや手間
粉体塗装 製品により異なる 原則、再加工前提ではない

盤内絶縁方法の比較(目安)

絶縁紙

耐熱クラス A種〜E種(105〜120℃) / 分解・交換 しやすい

マイカシート

耐熱クラス B種〜H種(130〜180℃) / 分解・交換 しやすい

熱収縮チューブ

耐熱クラスは製品により異なる / 交換はやや手間

粉体塗装

耐熱クラスは製品により異なる / 原則、再加工前提ではない

めっきは絶縁ではなく接触抵抗や酸化防止が目的なので、絶縁の要否とは別軸の検討になります。銅ブスバーへのめっきとの役割の違いを混同しないよう、図面段階で絶縁要求とめっき要求を分けて指示することをおすすめします。

挟み込み絶縁は部分的・局所的な絶縁、粉体塗装は全体的・均一な絶縁に向くという役割分担で考えると選びやすくなります。

選定で確認すべきポイント

絶縁紙・マイカシートを選ぶときは、周囲温度・通電による温度上昇・絶縁距離の3点を先に確定してから、耐熱クラスと厚みを決めるのが基本の順番です。

図面・発注前に確認する項目

  • 想定される最高使用温度(周囲温度+温度上昇分)
  • 必要な耐熱クラス(B種・F種・H種のいずれか)
  • 挟み込む箇所の絶縁距離(空間距離・沿面距離)
  • 固定方法(ボルト締結での圧縮固定か、接着か)
  • 点検・分解の頻度(頻繁なら交換しやすい構成に)

注意

挟み込んだ絶縁紙・マイカシートがずれる、もしくは経年で角が欠ける・割れることで絶縁距離が設計値を下回る事故が起こり得ます。固定方法(圧縮代・位置決め)まで図面で指示し、組立時・点検時に目視確認する運用にしておくことが重要です。

絶縁距離には、空気を介した最短距離である「空間距離」と、絶縁物の表面に沿った最短距離である「沿面距離」の2種類があり、挟み込み絶縁ではこの両方をシートの厚み・形状で確保する必要があります。必要な絶縁距離は、使用電圧・汚損度・設置環境(屋内外)によって変わるため、個別の数値は社内規定や関連規格を確認したうえで決定してください。

必要絶縁厚みの考え方 = 要求される沿面距離 ÷ 形状係数(平板挟み込みか、迂回構造かで変わる)

コツ

平板を1枚挟むだけでは沿面距離が足りない場合、シートの縁に段差や溝を設けて這わせる距離を稼ぐ「迷路構造」にする方法もあります。狭いスペースで絶縁距離を確保したいときは、このような形状の工夫も合わせて相談すると選択肢が広がります。

耐熱クラスだけでなく、空間距離・沿面距離の確保と固定方法まで含めて選定することが、挟み込み絶縁を長く機能させる条件です。

2026年時点の動向

最新の状況(2026年)

2026年は、データセンターのAI需要拡大や蓄電池(BESS)・EVの電動化により、受配電設備・電池まわりの大電流化が進み、限られたスペースでの絶縁材料への要求が高まっています。一方で、絶縁材料を含む上流コストの上昇が変圧器など電力機器の供給に影響を与えているとの指摘もあり、絶縁材の選定・調達は従来以上に計画的な検討が必要な局面です。xEV分野でもマイカ材料の採用が広がっており、自動車以外の大電流用途(蓄電池・データセンター電源)でも同様の絶縁設計の知見が応用され始めています。

こうした背景から、挟み込み絶縁は「狭い場所で、必要な箇所だけ確実に絶縁距離を確保する」手段として、今後も大電流化が進む設備で選ばれる場面が増えると考えられます。ブスバーとはのページもあわせてご覧いただくと、絶縁以外の基礎知識も含めて確認いただけます。

よくあるご質問

絶縁紙とマイカシートは何が違いますか

絶縁紙は紙を基材にした絶縁材料で耐熱クラスが比較的低く、コストを抑えたい箇所に使われます。マイカシートは雲母を基材にしており、より高い耐熱クラス(F種・H種)が必要な箇所や、長期の信頼性が求められる箇所で選ばれる傾向があります。

耐熱クラスはどのように決めればよいですか

周囲温度に、通電によって生じる温度上昇分を加えた「想定最高使用温度」を見積もり、それを下回る耐熱クラス(B種130℃・F種155℃・H種180℃など)を選びます。想定温度ぎりぎりのクラスを選ぶと余裕がないため、一般的には見積もった温度より一段階上のクラスを選ぶ設計も行われます。

挟み込み絶縁と粉体塗装はどちらが良いですか

どちらが優れているかではなく、用途による使い分けです。分解・点検がある接続部や部分的な絶縁には挟み込み絶縁、導体全体を均一に絶縁したい場合は粉体塗装が向いています。両方を組み合わせる設計も可能です。

マイカシートは経年劣化しますか

マイカ自体は無機材料で劣化しにくい一方、シート化する際の接着材料・補強材は熱・振動により劣化する場合があります。定期点検で割れ・ずれ・変色がないかを確認し、必要に応じて交換することをおすすめします。

板厚・形状に合わせたマイカシート・絶縁紙の加工は依頼できますか

はい、ブスバーの形状・絶縁距離の図面指示があれば、挟み込み箇所に合わせた絶縁材料の選定・手配を含めてご相談いただけます。現物や手書きスケッチからのご相談も可能です。

銅ブスバーの加工・お見積りは、お気軽にご相談ください

図面1枚から、手書きスケッチや現物の写真でもご相談いただけます。試作・小ロット・短納期にも対応しています。

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