銅ブスバーに再生銅(リサイクル銅)は使えるか|JIS規格と導電率
銅ブスバーの材料として「再生銅(リサイクル銅)」を使ってよいか、気になったことはないでしょうか。結論から言うと、JIS H3100などの規格が定める化学成分・導電率の基準を満たしていれば、原料が新地金(バージン材)か再生銅かによって銅ブスバーの性能に差は生じません。銅は劣化しにくく何度でも溶かし直せる金属のため、もともとリサイクル率が高い素材です。ただし、環境配慮調達の広がりで「再生材比率」や「カーボンフットプリント(CFP)」を確認したい発注者が増えており、証明の仕方には今のところ業界共通のルールが整っていない、という点が実務上の注意点になります。この記事では、再生銅の品質の考え方と、発注時に再生材を指定したい場合の進め方を整理します。
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この記事の内容
再生銅(リサイクル銅)とは何か
再生銅とは、使用済みの銅製品や製造工程で生じたくず銅(スクラップ)を溶解・精製して作り直した銅地金のことです。
銅は劣化しにくく何度でも溶かし直せる金属のため、電線・基板・伸銅品などの端材や使用済み製品から回収した銅スクラップを原料に、電気銅(カソード銅)や各種銅合金の地金として再生産されています。これに対して、鉱石から製錬した銅を「新地金(バージン材)」と呼びます。
前提
再生銅は「質の落ちる銅」ではありません。精製の工程で不純物を取り除くため、原料がスクラップであっても、最終的にできる電気銅・伸銅品の純度・成分は規格値まで整えられます。ブスバーとはどのような部材かを含め、導体として求められる性能は原料の出どころではなく、最終製品の成分・導電率で決まります。
再生銅ができるまで:スクラップから銅ブスバー用地金へ
再生銅は、回収したくず銅を溶解炉で溶かし、不純物を取り除く精製工程を経て、新地金と同じ規格の電気銅・伸銅品として市場に出ます。
再生銅の原料には、工場の製造工程で出る端材・切粉(「新スクラップ」と呼ばれます)と、電線や家電・設備などの使用を終えた製品から回収する「旧スクラップ」の2種類があります。いずれも、そのまま使われるのではなく、溶解・精製の工程を経て、規格に適合する地金に作り直されたうえで、伸銅メーカーが板・条・棒などに加工し、ブスバー加工用の材料として流通します。
工程の大まかな流れ
銅スクラップ(新・旧) ─→ 溶解・精製 ─→ 電気銅(地金)
│
JIS規格の成分・導電率を確認
│
伸銅加工(板・条・棒)
│
銅ブスバーとして切断・曲げ・穴あけ
この流れの中で、成分・導電率が規格値に達していなければ、そもそも電気銅・伸銅品として出荷できません。つまり、ブスバー加工の材料として手元に届いた時点の銅は、原料が新地金か再生銅かにかかわらず、同じ品質基準をクリアしたものである、という理解が実務上は妥当です。
新地金(バージン材)の特徴
- 鉱石の製錬から一貫して生産される
- 原料の組成が比較的安定しやすい
- 製錬工程でのCO2排出量は相対的に大きい
再生銅(リサイクル銅)の特徴
- スクラップの溶解・精製で作られる
- 原料の組成がロットにより変動しやすく、精製管理がより重要になる
- 製錬段階からの製造に比べてCO2排出量を抑えやすいとされる
再生銅を使うと導電率は落ちるのか
JIS H3100などの規格が定める化学成分・導電率の基準を満たしていれば、再生銅を原料にしたC1100・C1020でも導電率に差は生じません。
JIS H3100「銅及び銅合金の板及び条」は、材質ごとに化学成分(銅含有率・不純物の上限)、機械的性質、導電率(体積抵抗率)を規定しています。この規格は原料が新地金か再生銅かを区別していません。製錬・精製の工程で規定の純度まで不純物を除去できれば、どちらの原料から作られた地金でも同じ規格値をクリアできます。
ブスバーで使われる主な材質と導電率の目安(原料にかかわらず共通の規格値)
| 材質 | 銅含有率の目安 | 導電率(IACS)の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| C1100(タフピッチ銅) | 99.90%以上 | 約97%以上 | 流通量が多く最も一般的 |
| C1020(無酸素銅) | 99.96%以上 | 約100%(基準) | 水素脆化を避けたい高信頼用途 |
ブスバーで使われる主な材質と導電率の目安(原料にかかわらず共通の規格値)
C1100(タフピッチ銅) / 銅含有率99.90%以上
導電率(IACS)約97%以上
C1020(無酸素銅) / 銅含有率99.96%以上
導電率(IACS)約100%(基準)
銅の導電率を下げる要因は、原料の出どころではなく「不純物の残留量」です。リン・鉄・ヒ素・アンチモンなどの不純物は、わずかな量でも導電率を大きく下げます。再生銅であっても、精製工程でこれらを規格値まで除去できていれば問題ありません。逆に新地金であっても、製錬・精製が不十分であれば規格を満たせません。判断材料にすべきは原料の由来ではなく、ミルシート(材料証明書)に記載された成分・導電率の実測値です。
注意
「再生銅=無酸素銅(C1020)より導電率が低い」という誤解がありますが、これは原料ではなく材質記号(C1100かC1020か)による差です。同じC1100であれば、原料が新地金でも再生銅でも規格上の導電率は同等として扱われます。
一方で、スクラップには由来の異なる複数の銅が混ざっている分、精製が不十分だと不純物のばらつきが出やすいという側面もあります。特にC1020(無酸素銅)は、水素を含む雰囲気での高温加工時に「水素脆化」(内部の酸素と水素が反応して割れやすくなる現象)を避けるために酸素含有量を極めて低く管理した材質です。再生銅を原料にする場合も、この酸素量の管理がきちんとなされているかは、新地金以上に精製工程の品質に依存します。
補足
JIS H3100は、こうしたリスクに対応するため、材質ごとに化学成分の上限値・下限値を具体的に規定しています。規格に適合した地金である限り、水素脆化を起こしやすい酸素量にはなっていない、という前提で材料を選定できます。不安な場合は、ミルシートで該当ロットの化学成分値を確認するのが確実です。
再生材であることをどう確認・証明するか
成分・導電率はミルシートで確認できますが、「再生材比率」そのものの証明は対応できるメーカーが限られているのが2026年時点の実情です。
通常の材料証明書(ミルシート)には、化学成分・引張強さ・導電率などの実測値が記載され、JIS規格への適合を確認できます。しかし、これはあくまで「できあがった地金が規格を満たしているか」を証明するもので、「原料に再生銅が何%使われているか」までは示していません。
再生材比率やカーボンフットプリント(CFP)を開示するには、原料の投入段階から再生材と新地金を区分管理するか、「マスバランス方式」(投入量と産出量の帳簿上の対応づけで環境価値を割り当てる方式)に対応している必要があります。国内の大手電気銅メーカーがCFP算定・第三者検証の体制を整え始めた段階であり、伸銅品・ブスバー材のレベルまで一律に対応できる状況には至っていません。
通常の発注でトレーサビリティを確保したい場合は、材料証明書でロット番号・成分値を記録し、必要に応じて検査記録と突き合わせる方法が現実的です。品質管理のページでも触れているとおり、当社では成分・寸法の検査記録を保管しており、材料証明が必要な案件では発注時にご相談いただければ対応範囲をご案内できます。
コツ
再生材比率やCFP開示が必須条件の案件では、見積もり依頼の早い段階でその旨を伝えるのが近道です。対応可否は材料の調達ルート次第で変わるため、図面確定後に確認すると手戻りが大きくなります。
2026年時点の動向:相場・需要・CFP開示要請
2026年は再生銅の需要拡大と、取引先からのCFP(カーボンフットプリント)開示要請の広がりが同時に進んでいます。
最新の状況(2026年)
再生銅の世界市場は2026年時点で約984万トン規模とされ、送電網配線・データセンター向けブスバー・インバータなど高純度導電材の需要を背景に、2031年にかけて年平均9%程度の成長が見込まれています。国内の銅建値(銅相場の指標)は2026年10月時点で1kgあたり237〜238万円/トン台で推移しており、再生地金もLME(ロンドン金属取引所)の国際価格と連動して変動するため、新地金と同様に相場上昇の影響を受けます。あわせて、国内の大手電気銅メーカーが電気銅のカーボンフットプリントを算定し第三者検証を受ける動きが始まっており、自動車・電機業界を中心に取引先へCFP開示を求める企業も増えています。
再生銅市場の規模イメージ(世界・トン)
銅は非鉄金属の中でもリサイクル率が高く、資源循環の観点から再生銅の活用は今後さらに広がる見通しです。一方で、ブスバー加工の現場で確認できるのはあくまで出来上がった材料の成分・導電率であり、「再生材かどうか」はサプライチェーンの上流(製錬・伸銅メーカー側の管理体制)に依存する、という構造は当面変わらないと考えられます。
再生材比率を指定して発注したいときの進め方
成分・導電率は通常のミルシートで確認し、再生材比率やCFP開示が必要な場合は見積もり段階で要望を伝えて対応可否を確認するのが実務的な進め方です。
発注時に確認・相談する流れ
- まず通常どおり、必要な導電率・材質(C1100/C1020など)と寸法・数量を整理する
- 再生材比率やCFP開示が要件にある場合は、その旨を見積もり依頼の時点で明記する
- 対応可否・追加の書類(証明書等)の有無を事前に確認する
- 成分・導電率はミルシートで、環境価値の証明が必要な場合は別途その対応状況を確認する
当社でも材料のミルシートに基づく成分・導電率の確認を行ったうえで加工技術を提供しています。再生材比率やCFP開示を含むご相談がある場合も、まずは現状の要件を伺ったうえで、対応できる範囲を確認させていただく形になります。
よくあるご質問
再生銅(リサイクル銅)とは何ですか?
使用済みの銅製品や製造工程で生じたくず銅(スクラップ)を溶解・精製し直して作られた銅地金のことです。鉱石から製錬した「新地金(バージン材)」と対比して使われます。
再生銅を使った銅ブスバーは、新地金のものより導電率が低くなりますか?
JIS H3100などの規格を満たす成分・導電率まで精製されていれば、原料が再生銅でも新地金でも導電率に差は生じません。導電率を左右するのは原料の由来ではなく、不純物の残留量です。
材料が再生材であることを証明してもらえますか?
通常のミルシートでは成分・導電率の規格適合は確認できますが、「再生材比率」自体の証明にはマスバランス方式などの区分管理の仕組みが必要で、対応できるメーカーは2026年時点ではまだ限られています。要件がある場合は見積もり段階で確認することをおすすめします。
銅スクラップの相場が上がると、再生銅ブスバーも値上がりしますか?
再生地金もLME(ロンドン金属取引所)の国際銅価格や国内の銅建値と連動して取引されるため、新地金と同様に相場上昇の影響を受けます。
環境配慮調達でCFP(カーボンフットプリント)の開示を求められた場合、どうすればよいですか?
見積もり依頼の段階でCFP開示の要否を伝え、対応可否を確認してください。電気銅メーカー側での算定・第三者検証の体制整備が進んでいる段階のため、要件によっては調達ルートの調整が必要になる場合があります。
