アースバーとは?接地バー・銅ブスバーとの違いを整理
「アースバー」「接地バー」「銅ブスバー」という言葉は、盤内の図面や見積り依頼の中で混ざって出てくることが多く、同じものなのか別物なのか迷う方が少なくありません。結論から言うと、アースバーと接地バーは同じものを指し、どちらも銅ブスバー(バスバー)の一種です。ただし「接地専用」という役割の違いがあるため、サイズの決め方や発注時に確認すべき点が通常のブスバーとは異なります。この記事では、3つの言葉の関係を整理したうえで、規格上の考え方や発注前のチェックポイントまでを解説します。
アースバー
接地バー
銅ブスバー
接地
PE
盤内部材
JIS
この記事の内容
アースバーとは何か
アースバーとは、盤内に散らばる複数の接地線を一点に集めてまとめる銅製の導体部材です。
配電盤や制御盤の中には、機器や筐体から伸びる接地線(アース線)が何本も集まってきます。これを1本ずつバラバラに接地極へつなぐのではなく、まず1枚の銅板に集約してからまとめて外部へ接地する、その集約点になる部材がアースバーです。棒状ではなく平らな板(バー)に複数の穴をあけ、端子やY端子で接地線を1本ずつ固定できるようにしてあるのが典型的な形です。
前提
アースバーの役割は「電気を流すこと」そのものより、「漏電時に大電流を安全に大地へ逃がす経路を確保すること」にあります。感電防止・火災防止に直結する部材のため、断面積や締結の信頼性が通常の通電用ブスバー以上にシビアに問われます。
アースバーと接地バーは同じものか
アースバーと接地バーは呼び方が違うだけで、指している部材は同じです。
「アースバー」は英語の earth(アース)に由来し、「接地バー」は日本語の「接地」をそのまま使った呼び方です。社内資料や発注書では会社や担当者によってどちらの表記も使われますが、意味の違いはありません。見積り依頼や図面で混在して使われていても、同じ部材として扱って問題ないケースがほとんどです。検索時も「アースバー」「接地バー」のどちらで調べても、ほぼ同じ内容にたどり着きます。
コツ
社内文書では表記を1つに統一しておくと、図面・見積り・発注の間で「別部材かどうか」の確認が不要になり手戻りが減ります。
アースバーと銅ブスバーの違い
アースバーは銅ブスバー(バスバー)の一種で、「接地専用」という使い道に特化したものです。
銅ブスバー(バスバー)は、配電盤や制御盤の中で電源や負荷へ電気を分配するための導体の総称です。アースバーもこの銅ブスバーの一種ですが、用途が「通電・分配」ではなく「接地・保護」に限定されている点が異なります。この違いは、サイズの決め方にもそのまま表れます。通常の通電用ブスバーは定格電流から断面積を決めるのに対し、アースバーは「通常時に流れる電流」ではなく「故障時(短絡・地絡時)に一時的に流れる大電流に耐えられるか」を基準にサイズを決めます。
通電用ブスバーとアースバーの違い(PC版)
| 観点 | 通電用ブスバー | アースバー(接地バー) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 電源・負荷への通電分配 | 接地線の集約・故障電流の逃がし道 |
| サイズの基準 | 定格電流・温度上昇 | 想定される故障電流に耐える断面積 |
| 通電状態 | 常時通電 | 通常時はほぼ無通電、異常時のみ大電流 |
| 形状の特徴 | 幅広で長尺な場合が多い | 多数の穴をあけた短めの板が多い |
| 表面処理・識別 | 用途に応じて選定 | 緑など接地であることが分かる識別がされる場合がある |
通電用ブスバーとアースバーの違い(スマホ版)
主な役割
通電用:電源・負荷への通電分配 / アースバー:接地線の集約・故障電流の逃がし道
サイズの基準
通電用:定格電流・温度上昇 / アースバー:想定される故障電流に耐える断面積
通電状態
通電用:常時通電 / アースバー:通常時はほぼ無通電、異常時のみ大電流
形状の特徴
通電用:幅広で長尺な場合が多い / アースバー:多数の穴をあけた短めの板が多い
アースバーの規格・サイズの考え方
アースバーのサイズは、関連規格が示す保護導体の断面積の考え方をもとに決めます。断定的な「正解寸法」は無く、設備ごとの確認が必要です。
国内では、保護導体(接地線・アースバー)の断面積に関する考え方は JIS C 60364-5-54(建築電気設備 — 接地設備及び保護導体)などに示されています。銅製アースバーの構造目安としては25mm×3mm以上がよく使われますが、これは「最低限このくらい」という目安であり、実際には想定する故障電流の大きさ・遮断時間・他の接地線との共用状況によって必要な断面積は変わります。2026年時点でも、個別設備の接地母線サイズは内線規程や設計基準との照合が前提で、カタログ値のみで断定すべきではありません。
注意
厚さ3mm程度のアースバーにM5以上のタップ加工をすると、ねじ山の有効長が不足して締結強度が出にくくなることがあります。複数本のタップ穴をあける図面では、板厚とねじサイズの組み合わせを加工会社に事前確認すると手戻りを防げます。
PE(保護接地)とSG(信号グランド)の違い
同じ「アース」でも、感電・火災防止のためのPEと、ノイズ対策のためのSGでは目的が異なり、原則として分けて設計します。
盤内の「アース」には大きく2種類の目的があります。1つはPE(Protective Earth、保護接地)で、漏電時に大電流を安全に大地へ逃がし、感電や火災を防ぐことが目的です。もう1つはSG(Signal Ground、信号グランド)で、制御・通信系のノイズを安定させることが目的です。PE用のアースバーに通信機器のノイズ対策用の配線を混在させると、ノイズが回り込んで誤動作の原因になることがあるため、盤内では両者を別のアースバーとして分けて設計するのが基本です。
アース線・アースバーの識別色
保護接地線の識別色は緑と黄の組み合わせが原則で、アースバー自体にも緑色塗装などで接地であることを示す場合があります。
JIS C 0446などでは、保護接地線(アース線)の識別色として緑/黄のしま模様を基本とし、例外的に緑色単色も認められています。アースバー本体についても、他のブスバーと取り違えないよう、表面処理として緑色塗装を選ぶケースがあります。盤内で複数の銅バーが並ぶ場合、色や刻印による識別をしておくと、保守・点検時に「どれが接地用か」をひと目で判断でき、誤って通電部として扱ってしまうリスクを減らせます。
補足
色分けは電線側(アース線)の識別ルールが先にあり、アースバー本体の塗装色はそれに合わせて「分かりやすくする」ための実務上の工夫という位置づけです。盤メーカーごとに運用ルールが異なる場合があるため、社内基準があればそちらを優先してください。
アースバーの材質・表面処理の選び方
アースバーの材質は通電用ブスバーと同じくタフピッチ銅(C1100)や無酸素銅(C1020)が中心で、表面処理は用途に応じて選びます。
アースバーの素材は、通電用の銅ブスバーの加工と基本的に同じで、タフピッチ銅(C1100)が一般的に使われます。高い信頼性が求められる設備では無酸素銅(C1020)が選ばれることもあります。表面処理は、屋内で腐食の心配が少ない環境なら無処理のまま使われることもありますが、長期の接触信頼性を重視する場合はすず・ニッケルめっきを施すケースもあります。識別のために緑色塗装を選ぶ場合は、めっきと塗装のどちらを優先するか(接触抵抗の安定性を取るか、識別のしやすさを取るか)を発注前に整理しておくと、仕様がぶれません。
補足
めっきの有無・種類は「通電用ブスバーの記事で解説している接触抵抗の考え方」がそのまま当てはまります。接地用だからといって接触抵抗を軽視してよいわけではなく、締結部の発熱・緩みは通電用と同様に注意が必要です。
盤内でのアースバーの配置イメージ
PE用とSG用のアースバーは離して配置し、それぞれに集まる接地線の本数に見合った穴数を確保するのが基本です。
盤内配置の例(簡略図)
[機器A]-接地線-┐ [機器B]-接地線-┼──[ PEアースバー ]──接地極へ [機器C]-接地線-┘ [通信機器]-SG線-┬──[ SGアースバー ]──(PEとは別経路) [制御機器]-SG線-┘
このように、PE(保護接地)とSG(信号グランド)の系統を物理的に分けてアースバーを設置することで、ノイズの回り込みや、点検時の系統の取り違えを防ぎやすくなります。盤が小さく分離が難しい場合でも、少なくとも端子台やラベルで系統を区別しておくことをおすすめします。
既製品と特注品、どちらを選ぶか
穴数・穴ピッチ・板厚が標準品と合わない場合や、短納期・少数が必要な場合は特注品が向いています。
アースバーはカタログ品(既製品)も流通していますが、「接地線の本数に対して穴数が足りない」「既存の盤に合わせて穴ピッチを変えたい」「厚みを変えて締結強度を確保したい」といった要望は、既製品だけでは対応しきれないことがあります。こうした場合は、板厚・穴数・穴ピッチ・表面処理を個別に指定できる特注加工が選択肢になります。規格基準の詳細や既製品との比較は、当サイトのアースバー選定ガイド記事でも詳しく解説しています。
発注前に確認しておきたいこと
接地線の本数・想定故障電流・取付スペースの3点を事前に整理しておくと、見積りと図面確認がスムーズになります。
発注前チェックリスト
- 集約する接地線の本数と、それぞれの端子サイズ(丸端子・Y端子など)
- 想定している故障電流・遮断時間(分かる範囲でよい。不明なら設計担当へ確認)
- 盤内の取付スペースと、既存の穴ピッチに合わせる必要があるか
- 表面処理(無処理・めっき・緑色塗装など)の指定有無
- PE用とSG用を分ける必要があるか
よくあるご質問
アースバーと接地バーは別の部材ですか?
いいえ、同じ部材です。「アースバー」は英語由来、「接地バー」は日本語の呼び方で、意味の違いはありません。
アースバーは銅ブスバーと同じ材料で作られますか?
はい、多くの場合アースバーも銅(C1100・C1020など)で作られます。アースバーは銅ブスバーの一種で、用途が接地に特化している点が違いです。
アースバーのサイズは何を基準に決めますか?
定格電流ではなく、想定される故障電流(短絡・地絡時)に耐えられる断面積を基準に決めます。銅製アースバーの構造目安として25mm×3mm以上がよく使われますが、最終的な寸法は設備ごとの条件で確認が必要です。
アースバーの色は決まっていますか?
電線側の保護接地線は緑/黄のしま模様(または緑単色)が基本です。アースバー本体も、識別のために緑色塗装を選ぶケースがあります。
PE用とSG用のアースバーは分ける必要がありますか?
原則として分けます。保護接地(PE)と信号グランド(SG)を同じバーにまとめると、ノイズが回り込み制御機器の誤動作につながることがあります。
アースバーの材質は何を選べばよいですか?
通電用の銅ブスバーと同じく、タフピッチ銅(C1100)が一般的です。より高い信頼性が求められる設備では無酸素銅(C1020)が選ばれることもあります。
