金属ダクトとバスダクトの違いとは?工事区分と選び方
「金属ダクト工事」と「バスダクト工事」は名前が似ているため、電気工事士試験の学習中や設備の仕様検討の場でしばしば混同されます。結論から言うと、金属ダクト工事は電線・ケーブルを収める配線方式、バスダクト工事は銅やアルミの帯状導体(ブスバー・バスバー)そのものを収めた大電流用の幹線システムです。対象物も適用場所も断面積の考え方も異なります。この記事では両者の違いを規定・数値で整理し、実務でどちらを選ぶかの判断基準まで解説します。
金属ダクト工事
バスダクト工事
銅ブスバー
JIS C 8364
幹線設計
電気設備技術基準
この記事の内容
金属ダクト工事とバスダクト工事は何が違うか
金属ダクト工事は絶縁電線・ケーブルを金属製の樋(とい)に収める配線方式で、バスダクト工事は銅帯・アルミ帯の導体を絶縁して金属ケースに収めた製品を幹線として敷設する工事です。どちらも「金属の箱に収める」点は共通しますが、中に入っているものが電線かむき出しに近い導体(ブスバー)かで、適用規定・許容電流・設置場所の扱いがまったく異なります。
金属ダクト工事とバスダクト工事の比較
| 項目 | 金属ダクト工事 | バスダクト工事 |
|---|---|---|
| 収めるもの | 絶縁電線・ケーブル | 銅/アルミの帯状導体(ブスバー) |
| 主な用途 | 多回路の配線をまとめる | 大電流の屋内幹線1本を通す |
| 断面積の考え方 | ダクト内部断面積の20%以下(制御回路等は50%以下) | 導体そのものの断面積で許容電流が決まる |
| 設置場所 | 乾燥した場所のみ | 300V以下は湿気の多い場所・水気のある場所も可 |
| 接地 | D種(300V以下)/C種(300V超) | D種(300V以下)/C種(300V超) |
| 電流の目安 | 数十A程度の配線が中心 | 最大6000A程度まで対応 |
| 適用規格 | 電気設備技術基準・内線規程 | JIS C 8364(2025年5月改正) |
金属ダクト工事とバスダクト工事の比較
収めるもの
金属ダクト:絶縁電線・ケーブル / バスダクト:銅・アルミの帯状導体
主な用途
金属ダクト:多回路配線の集約 / バスダクト:大電流の屋内幹線
断面積の考え方
金属ダクト:内部断面積の20%以下(制御回路等は50%以下) / バスダクト:導体断面積で許容電流が決まる
設置場所
金属ダクト:乾燥場所のみ / バスダクト:300V以下は湿気の多い場所も可
電流の目安
金属ダクト:数十A程度 / バスダクト:最大6000A程度
適用規格
金属ダクト:電気設備技術基準・内線規程 / バスダクト:JIS C 8364
金属ダクトは「電線をまとめる箱」、バスダクトは「大電流用の帯状導体そのものを収めた幹線」という位置づけの違いが根本にある。
金属ダクト工事とは―電線を収める配線方式
金属ダクト工事は、幅5cmを超え鉄板厚1.2mm以上の堅ろうな金属製の樋に、絶縁電線をまとめて収める工事方法です。多数の回路を1か所に集約できるため、盤まわりや天井裏の配線整理でよく使われます。
前提:金属ダクトの主な規定
- ダクト内に収める電線の断面積の総和は、内部断面積の20%以下(電光サイン装置・制御回路などの配線のみを収める場合は50%以下)
- 造営材への支持点間距離は3m以下(取扱者以外が出入りできない場所で垂直に取り付ける場合は6m以下)
- 設置場所は乾燥した場所に限られ、湿気の多い場所には施工できない
金属ダクト工事は電線を整理・集約するための配線方式であり、大電流を単独で流すための導体そのものではない。
バスダクト工事とは―帯状導体を収めた大電流幹線
バスダクト工事とは、銅帯やアルミ帯の導体を絶縁物で固定し、金属製のケースに収めた製品(バスダクト)を幹線として敷設する工事です。工場・ビルなどで比較的大きな電流を通す屋内幹線に使われ、JIS C 8364では定格電圧が交流1000V以下(周波数1000Hz以下)または直流1500V以下のバスダクトとその附属品が規定されています。同規格は2026年時点で2025年5月改正版が最新です。
注意:バスダクトは「金属ダクト工事+湿潤場所」が加わったもの
バスダクト工事は、金属ダクト工事の適用範囲に「300V以下で展開した場所における湿気の多い場所又は水気のある場所」への施設が加わったものと整理できます。ただし、これは施設場所の話であり、中身の導体は金属ダクトの電線とはまったくの別物(むき出しに近い帯状導体)である点は変わりません。
前提:バスダクトの接地
バスダクトは電線管・ケーブルラックと同様、電気設備技術基準および内線規程に基づき接地を施します。使用電圧300V以下ではD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事が求められます。
バスダクトは工場・ビルの大電流屋内幹線を、1本の帯状導体でまとめて通すための専用システムであり、JIS C 8364が構造・性能を規定している。
バスダクトは用途によっていくつかの種類に分かれます。変圧器から分電盤まで電流を分岐せずにまとめて送る「フィーダ用」、途中の任意の位置でプラグインユニットを差し込み分岐できる「プラグイン用」、天井走行クレーンなどの給電に使う「トロリー用」が代表的です。設計の初期段階では、まず幹線の役割(分岐が必要かどうか)を確認してから種類を選ぶ流れになります。
バスダクトの主な種類と用途
| 種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| フィーダ用 | 途中で分岐せず一括で送電 | 変圧器〜主分電盤の幹線 |
| プラグイン用 | 任意の位置でプラグインユニットにより分岐可能 | 工場ラインなど負荷が分散する設備 |
| トロリー用 | 移動体への給電に対応した構造 | 天井走行クレーンなどの給電 |
バスダクトの主な種類と用途
フィーダ用
途中で分岐せず一括で送電。変圧器〜主分電盤の幹線に使用
プラグイン用
任意の位置で分岐可能。工場ラインなど負荷が分散する設備に使用
トロリー用
移動体への給電に対応。天井走行クレーンなどに使用
バスダクトはフィーダ用・プラグイン用・トロリー用に大別され、幹線に分岐が必要かどうかで選ぶ種類が変わる。
なぜ混同されやすいのか
両者が混同されやすいのは、電気工事士試験の「工事の種類」の学習で同じ並びに登場し、名前にどちらも「ダクト」が付くためです。しかし対象は「配線方式(電線をどう収めるか)」と「導体製品(電流をどう流すか)」というまったく別の階層にあります。
区別のチェックポイント
- 収めているのは絶縁電線か、帯状導体そのものか
- 目的は「配線の集約」か「大電流1本を通すこと」か
- 適用規格は電気設備技術基準・内線規程(金属ダクト)か、JIS C 8364(バスダクト)か
「収めている中身が電線か、導体そのものか」で判断すれば、名前が似ていても迷わない。
使い分けの判断基準
設計段階では、電流値と用途で選び分けます。多回路の配線をまとめて整理したいだけなら金属ダクト工事、盤から負荷設備まで大電流を1本の幹線でまとめて通したいならバスダクト工事が対象になります。
対応できる電流の目安(イメージ)
コツ:迷ったら「幹線か分岐か」で考える
変圧器二次側から主分電盤までのような大電流・1本の幹線ルートはバスダクト、盤内や末端負荷への多回路配線は金属ダクトやケーブル工事、という切り分けで検討すると判断しやすくなります。
大電流を1本の幹線でまとめて通すならバスダクト、多回路配線の整理なら金属ダクト、という切り分けが実務での基本線になる。
銅ブスバーとバスダクトの関係
バスダクトの内部で電流を流しているのは、銅やアルミで作られた帯状導体です。この導体部分の設計・加工(板厚・幅の選定、曲げ、穴あけ、めっきなど)はブスバー(バスバー)そのものの技術領域であり、当社が変圧器・配電盤・受配電設備向けに手掛けている加工技術と直結しています。バスダクト製品としての箱(ケース)は専門メーカーが製造しますが、内部導体の板厚・断面積・接続部の設計は、許容電流や短絡強度の計算に基づく個別の検討が必要です。
補足:バスダクトと単体ブスバーの違い
バスダクトは導体・絶縁物・金属ケースが一体になった「製品」ですが、盤内配線や機器間接続では、ケースを介さず銅ブスバー単体を支持碍子で固定する構成も広く使われます。どちらを選ぶかは、必要な電流値・施設場所・保守性(点検のしやすさ)によって変わります。
バスダクトの心臓部にあるのは銅・アルミの帯状導体であり、その設計・加工は銅ブスバー加工の技術領域そのものである。
大電流化でバスダクト需要はどう変わっているか
2026年時点では、AIデータセンターの高密度化により、単純な電源ケーブルでは必要な電力を確保しにくくなり、大電流を1本でまとめて供給できるバスダクトの採用が広がっています。世界のデータセンター向けバスウェイ(バスダクト)市場は2024年の約7.2億ドルから2025年に約7.6億ドルへ拡大し、年平均成長率6.2%で2031年には約10.9億ドルに達すると予測されています。
最新の状況(2026年時点)
JIS C 8364(バスダクト規格)は2025年5月に改正されており、規格自体も継続的に更新されています。データセンター・蓄電池・EV充電インフラなど大電流用途の拡大に伴い、バスダクト内部の導体設計・加工の相談も増える傾向にあります。数量・板厚・めっき仕様は案件ごとに確認が必要です。
AIデータセンターなど大電流用途の拡大により、バスダクトおよびその内部導体の設計・調達ニーズは2026年も伸びる傾向にある。
よくあるご質問
金属ダクト工事とバスダクト工事の一番の違いは何ですか?
金属ダクト工事は絶縁電線・ケーブルを金属製の樋に収める配線方式で、バスダクト工事は銅やアルミの帯状導体(ブスバー)を絶縁して金属ケースに収めた製品を大電流幹線として敷設する工事です。収めている中身が「電線」か「導体そのもの」かが最大の違いです。
バスダクトは湿気の多い場所に設置できますか?
300V以下で展開した場所であれば、湿気の多い場所や水気のある場所への施設が認められています。乾燥した場所に限られる金属ダクト工事とは異なる点です。
バスダクトの最大電流はどのくらいですか?
JIS C 8364は定格電圧が交流1000V以下(周波数1000Hz以下)または直流1500V以下のバスダクトを対象としており、製品としては最大6000A程度まで対応するものがあります。実際の選定は負荷電流・設置環境・メーカー仕様の確認が必要です。
バスダクトの接地はどう決まりますか?
電気設備技術基準・内線規程に基づき、使用電圧300V以下ではD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事を施します。電線管やケーブルラックと同様の考え方です。
銅ブスバーの加工はバスダクトとどう関係しますか?
バスダクト内部で電流を流している帯状導体そのものが銅ブスバー(バスバー)です。板厚・断面積の選定、曲げ、穴あけ、めっきといった加工は、バスダクト全体の性能を左右する要素になります。
