ブスバーの相識別・色分け(R・S・T)とは?規格と現場での運用
配電盤や制御盤の内部で銅ブスバー(バスバー)を見ると、赤・白・青(または黒)の帯やチューブが巻かれていることがあります。これは三相交流のR相・S相・T相を見分けるための「相識別」で、感電・誤結線・逆相接続を防ぐための表示です。この記事では、色の割り当てがどの規格で決まっているのか、高圧側と低圧側で扱いが違う理由、海外規格との違い、そして現場での実際の色の付け方までをまとめます。
ブスバー
バスバー
相識別
R S T
JEM 1134
JEM 1135
配電盤
この記事の内容
相識別とは何か・なぜ必要か
相識別とは、三相交流のR相・S相・T相(またはU・V・W)を色や記号で見分けられるようにする表示のことで、誤結線や感電事故を防ぐために行います。
銅そのものには相の情報がないため、無処理のブスバーだけでは「どれがR相でどれがT相か」を見た目で判断できません。作業者が停電後に別回路と誤って接続したり、系統連系で相順を取り違えたりすると、モーターの逆回転や地絡・短絡の原因になります。そこで配電盤・制御盤・受変電設備の内部では、色・記号・配置(配列順)の3つを組み合わせて相を識別できるようにするのが一般的です。
前提
相の呼び方は「R・S・T」(電力会社・盤メーカー系でよく使われる)と「U・V・W」(モーター・機器端子でよく使われる)の2系統があり、対応関係も現場や機器によって決まっています。本記事では配電盤・制御盤内のブスバーで広く使われる「R・S・T」表記で説明します。
低圧盤の色分けはJEM 1134・1135が基準
配電盤・制御盤内の相表示は、JEM 1134(相及び極性の配置・名称)とJEM 1135(色彩)という日本電機工業会の規格が実務上の標準になっており、R相=赤、S相=白、T相=青(または黒)とするのが一般的です。
JEM(Japan Electrical Manufacturers’ Association Standard)は日本電機工業会が定める民間規格で、法律や国家規格(JIS)そのものではありませんが、盤メーカー各社がこれに準拠して製作しているため、実質的な業界標準として機能しています。
JEM 1134が定めること
- 交流の相(R・S・T)・直流の極性による、器具・導体の配置ルール
- 盤の奥行方向・上下方向・左右方向で、どの順番に相を並べるか
- 名称の付け方(記号の統一)
JEM 1135が定めること
- 配電盤・制御盤およびその取付器具の色彩
- 相ごとの標準色(R=赤、S=白、T=青または黒)
- 中性線・接地線など、相以外の導体の色の扱い
配電盤・制御盤内でよく使われる相別の色(JEM系の考え方)
| 相 | 記号 | 標準色 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第1相 | R | 赤 | 電力会社系でもR相=赤が広く使われる |
| 第2相 | S | 白 | 灰色に近い白系で表示される場合もある |
| 第3相 | T | 青(または黒) | 盤メーカー・電力会社により黒表示の場合あり |
| 中性線 | N | 黒 | 相ではないため、相色とは別に扱う |
配電盤・制御盤内でよく使われる相別の色(JEM系の考え方)
第1相(R)
標準色: 赤
第2相(S)
標準色: 白
第3相(T)
標準色: 青(または黒)
中性線(N)
標準色: 黒(相色とは別扱い)
注意
上表は業界で広く使われている色の組み合わせであり、全国一律に強制される国家規格ではありません。電力会社・盤メーカーごとに独自の標準を持っている場合があるため、既設設備を増設・改修するときは、その設備の設計図書や既存の色分けに合わせることが最優先です。自己判断で色を変えると、他の相と誤認される危険があります。
高圧・特別高圧母線は「望ましい」扱い
高圧・特別高圧の母線(ブスバー)については、発変電規程(JEAG)が相表示を「望ましい」としているだけで、色や記号を義務付ける規定にはなっていません。
電気学会が発行する発変電規程では、特別高圧母線・高圧母線について「その見やすい箇所に相別の表示を行うことが望ましい」とされ、表示方法としては「識別(赤・白・青)、記号別(A-B-C またはR-S-T)などによるのが普通」と説明されています。つまり「望ましい」という努力目標であり、低圧の配電盤ほど画一的な色分けが徹底されているわけではありません。
この背景もあり、高圧受変電設備では電力会社や設備の設計者ごとに、色の使い方に幅があります。ブスバーとはのページで解説しているとおり、母線は電流を流す導体としての機能が第一であり、色表示はあくまで安全管理・保守のための付加情報という位置づけです。
電線の色(JIS C 0446)とブスバーの色表示の違い
電線の被覆色を定めるJIS C 0446と、盤内ブスバーの色を定めるJEM 1135は、対象が異なる別の規格であり、混同すると誤った理解になります。
JIS C 0446は「色又は数字による電線の識別」を定めた規格で、主にケーブル・電線の被覆色(接地線=緑、中性線=白または薄い灰色、など)を対象にしています。一方、配電盤・制御盤の中の裸のブスバーや母線には被覆がないため、JIS C 0446の電線色をそのまま当てはめることはできず、JEM 1135のような盤・器具向けの色彩規格や、絶縁チューブ・マーキングテープによる後付けの色表示が使われます。
「色の規格」を混同しやすいポイント
- JIS C 0446 … 電線・ケーブルの被覆色の識別(相そのものの色ではなく、線の種類の識別が中心)
- JEM 1134 … 盤内の相・極性の配置ルール(どの順番で並べるか)
- JEM 1135 … 盤・器具の色彩(相ごとの標準色)
- 発変電規程(JEAG) … 高圧・特別高圧母線の相表示は「望ましい」という努力目標
海外規格(IEC)との違いと注意点
IEC(国際電気標準会議)系の欧州規格では、L1=茶、L2=黒、L3=灰、中性線(N)=青が標準で、日本のT相の「青」と欧州の中性線の「青」が意味的に逆転するため、輸出設備や海外製盤との混在では特に注意が必要です。
日本国内の配電盤ではT相(第3相)に青(または黒)を使う運用が広く見られますが、IEC 60446系の流れをくむ欧州の配電盤結線色(HD 308など)では、L1・L2・L3にはそれぞれ茶・黒・灰を使い、青は中性線(N)専用として扱われます。同じ「青」という色でも、日本では相の一つ、欧州では中性線という、まったく異なる意味を持つ点は覚えておく必要があります。
日本(JEM系・実務慣行)
- R相(第1相): 赤
- S相(第2相): 白
- T相(第3相): 青 または 黒
- 中性線: 黒
IEC/欧州系(HD 308ベース)
- L1: 茶
- L2: 黒
- L3: 灰
- 中性線(N): 青
注意
海外向けの盤や、輸入機器を組み込んだ設備を扱う場合は、どちらの色体系に従っているかを設計図書で必ず確認してください。「青だから中性線だろう」「青だからT相だろう」という思い込みでの作業は、地域が変わると逆の結果を招きます。
銅ブスバーへの実際の色の付け方
銅ブスバー自体は素材の色(赤みがかった金属色、またはめっき後の銀色)しか持たないため、実務では熱収縮チューブ・絶縁テープ・相表示ラベルのいずれかを後から取り付けて色分けします。
塗装で色を付ける方法もありますが、通電部分に塗膜が乗ると接触抵抗や放熱性に影響する場合があるため、接続面を避けて絶縁被覆材で色分けするのが一般的です。加工技術のページで紹介しているように、当社では曲げ・穴あけなどの機械加工に加えて、絶縁・表面処理まで含めた仕上げの相談にも対応しています。
主な色分け方法
- 熱収縮チューブ(赤・白・青・黒)を通電部を避けてかぶせる
- 絶縁テープを巻いて色帯を作る
- 相表示ラベル・プレートを取り付ける
- 盤の配置図・銘板で相順を明示する(色だけに頼らない)
選ぶときの考え方
- 屋内・盤内 → 熱収縮チューブやテープで十分なことが多い
- 屋外・振動あり → 剥がれにくい表示方法を優先する
- 点検頻度が高い → ラベルは読みやすい位置・向きに統一する
- 改修・増設時 → 既設の色分けルールに合わせる
コツ
色だけに頼ると、退色・汚れ・照明条件によって見誤ることがあります。相順(配置)・記号・色の3つを重ねて表示しておくと、色が薄れても記号や配置から判別できるため安全です。JEM 1134が配置の順番まで定めているのは、この「色が読み取れない状況」への備えという側面もあります。
相順を間違えるとどうなるか
相順(R-S-T)を取り違えて接続すると、三相モーターの回転方向が逆になったり、系統連系設備で位相が一致せず投入できなくなったりするトラブルにつながります。
配電盤の増設・更新や、仮設電源の接続作業では、相順を誤ったまま通電すると、ポンプやファンといった三相モーター機器が逆回転し、機器や配管系統を損傷させる恐れがあります。また、非常用発電機や太陽光発電設備などを既設系統と並列にする場面では、相順・位相が一致していないと保護継電器が動作し、投入自体ができない、あるいは事故につながることもあります。色分けはこうした人為的な取り違えを減らすための一次的な防止策であり、最終的には検相器などによる確認と組み合わせて運用するのが基本です。
ブスバーの相識別・色分けは、素材や加工の話とは別に、品質管理の一環として社内ルールを決めておくと、複数人・複数現場での作業でも表示のばらつきを防げます。
よくあるご質問
ブスバーの相識別の色は何色ですか?
配電盤・制御盤内では、JEM系の考え方に基づきR相(第1相)=赤、S相(第2相)=白、T相(第3相)=青または黒とするのが広く使われています。ただし国家規格による全国一律の義務ではなく、電力会社や盤メーカーごとの標準に従うのが基本です。
相識別の色分けは法律や国家規格で決まっていますか?
低圧の配電盤・制御盤の色彩は、日本電機工業会が定める民間規格JEM 1135が実務上の基準になっています。高圧・特別高圧母線については発変電規程(JEAG)が相表示を「望ましい」としているのみで、いずれも法律による全国一律の義務ではありません。
電線の色を決めるJIS C 0446と、ブスバーの色分けは同じ規格ですか?
別の規格です。JIS C 0446は主にケーブル・電線の被覆色を対象にしており、盤内の裸のブスバーには適用しづらいため、盤・器具向けのJEM 1135や、絶縁チューブ・ラベルによる後付けの色表示が使われます。
海外の盤と日本の盤で色分けの意味が違うことはありますか?
あります。日本ではT相に青(または黒)を使う運用が一般的ですが、IEC系の欧州規格では青は中性線(N)専用の色です。海外製の盤や輸出設備を扱う場合は、どちらの色体系に基づいているかを図面で必ず確認してください。
銅ブスバー自体に色を付ける方法はありますか?
熱収縮チューブや絶縁テープを通電部を避けて取り付ける方法、相表示ラベル・プレートを取り付ける方法が一般的です。塗装は接触抵抗や放熱に影響する場合があるため、接続面には行いません。
