銅ブスバーの抵抗値の計算方法|導電率と温度係数の使い方
銅ブスバーの抵抗値は、抵抗率(ρ)×長さ(L)÷断面積(A) で求められます。20℃の標準軟銅の体積抵抗率は 0.017241 Ω・mm²/m(JIS C 3001)で、これを基準に導電率(%IACS)で割り戻すと実際の材料の値になります。さらに温度が上がると抵抗も増えるため、20℃の値だけで損失や電圧降下を見積もると、実運用では小さく見積もりすぎることになります。
この記事では、抵抗値の計算式、導電率からの換算、温度係数(0.00393/℃)による補正、そこから導く損失と電圧降下の求め方までを、数値例と早見表で順に整理します。許容電流や断面積を決める前段の「抵抗をどう扱うか」に絞った内容です。
銅ブスバー
抵抗値 計算
導電率
%IACS
温度係数
導体損失
電圧降下
JIS C 3001
この記事の内容
銅ブスバーの抵抗値はどう計算するか
銅ブスバーの抵抗値は、抵抗率に長さを掛け、断面積で割って求めます。断面が一定の平角銅バーであれば、次の1式だけで計算できます。
A (mm²) = 板厚 (mm) × 幅 (mm)
体積抵抗率とは、断面積1mm²・長さ1mの導体1本が持つ電気抵抗です。JIS C 3001(電気用銅材の電気抵抗)は、20℃における標準軟銅の体積抵抗率を 0.017241 Ω・mm²/m(= 1.7241×10⁻⁸ Ω・m)と定めており、この値が導電率100%IACSの基準になっています。同規格では標準軟銅の密度を 8.89 g/cm³ としています。
単位を混ぜないための整理
Ω・mm²/m の抵抗率を使うときは、長さを m、断面積を mm² で入れます。ここを Ω・m と mm² で混ぜると10⁶倍ずれるため、桁が合わないと感じたらまず単位を確認してください。
計算例:板厚5mm×幅50mmのブスバー1m
断面積は 5 × 50 = 250 mm²。20℃の抵抗値は次のとおりです。
大電流用の導体では抵抗値がマイクロオーム(μΩ)の単位になるため、Ωのままだと桁を追いにくくなります。実務では μΩ/m で持っておくと、長さを掛けるだけで済み、比較もしやすくなります。
断面積別・1m当たりの抵抗値(導電率100%IACSとして計算)
| 寸法(板厚×幅) | 断面積 | 20℃ | 75℃ |
|---|---|---|---|
| 3 × 20 mm | 60 mm² | 287 μΩ/m | 349 μΩ/m |
| 5 × 30 mm | 150 mm² | 115 μΩ/m | 140 μΩ/m |
| 5 × 50 mm | 250 mm² | 69 μΩ/m | 84 μΩ/m |
| 6 × 80 mm | 480 mm² | 36 μΩ/m | 44 μΩ/m |
| 10 × 100 mm | 1,000 mm² | 17 μΩ/m | 21 μΩ/m |
断面積別・1m当たりの抵抗値(導電率100%IACSとして計算)
3 × 20 mm / 60 mm²
20℃ 287 μΩ/m → 75℃ 349 μΩ/m
5 × 30 mm / 150 mm²
20℃ 115 μΩ/m → 75℃ 140 μΩ/m
5 × 50 mm / 250 mm²
20℃ 69 μΩ/m → 75℃ 84 μΩ/m
6 × 80 mm / 480 mm²
20℃ 36 μΩ/m → 75℃ 44 μΩ/m
10 × 100 mm / 1,000 mm²
20℃ 17 μΩ/m → 75℃ 21 μΩ/m
要点:抵抗値は ρL/A の1式で出る。大電流導体では μΩ/m で持つと扱いやすい。
導電率(%IACS)から抵抗率を出す方法
材料の抵抗率は、カタログの導電率(%IACS)から換算できます。導電率が高いほど抵抗率は小さくなり、両者は逆数の関係です。
%IACS とは、20℃の標準軟銅の導電率を100としたときの相対値です(IACS = International Annealed Copper Standard)。ブスバーに使われるタフピッチ銅(C1100)や無酸素銅(C1020)はいずれも導電率が高い材料ですが、実際の値は質別や加工履歴で幅があるため、精密な損失計算をするときはミルシートや材料メーカーの規格値を確認してください。下表は「導電率が数%違うと抵抗値がどれだけ変わるか」を見るための計算例です。
導電率の違いが抵抗値に与える影響(断面積250mm²・20℃・1m)
| 導電率 | 抵抗率 | 1m当たり抵抗 | 100%比 |
|---|---|---|---|
| 97 %IACS | 0.017774 | 71.1 μΩ | +3.1 % |
| 98 %IACS | 0.017593 | 70.4 μΩ | +2.0 % |
| 100 %IACS | 0.017241 | 69.0 μΩ | 基準 |
| 101 %IACS | 0.017070 | 68.3 μΩ | −1.0 % |
| 102 %IACS | 0.016903 | 67.6 μΩ | −2.0 % |
導電率の違いが抵抗値に与える影響(断面積250mm²・20℃・1m)
97 %IACS(ρ = 0.017774)
71.1 μΩ / 100%比 +3.1 %
98 %IACS(ρ = 0.017593)
70.4 μΩ / 100%比 +2.0 %
100 %IACS(ρ = 0.017241)
69.0 μΩ / 基準
101 %IACS(ρ = 0.017070)
68.3 μΩ / 100%比 −1.0 %
102 %IACS(ρ = 0.016903)
67.6 μΩ / 100%比 −2.0 %
コツ
導電率の数%差より、次章の温度補正のほうが影響がはるかに大きくなります。設計段階では、まず温度を押さえてから材料の導電率を詰めると、手戻りが少なくて済みます。
要点:抵抗率 = 0.017241 × 100 ÷ 導電率。導電率±2%は抵抗値±2%程度の差。
温度が上がると抵抗はどれだけ増えるか
銅の抵抗は温度に比例して増え、20℃の抵抗値に対して1℃当たり約0.393%増加します。JIS C 3001 は標準軟銅の電気抵抗の定質量温度係数を1℃につき 0.00393 と規定しており、換算式は次のとおりです。
t:導体温度(℃) / R20:20℃での抵抗値
盤内の母線は、周囲温度に対して30〜50K程度の温度上昇を見込んで断面積を決めるのが一般的です。周囲温度40℃で40K上昇すれば導体温度は80℃で、抵抗は20℃比で約1.24倍になります。損失は抵抗に比例するため、この2割強の増加を無視すると発熱量を過小に見積もることになります。
導体温度による抵抗倍率(20℃基準・α=0.00393)
| 導体温度 | 20℃からの差 | 抵抗倍率 | 250mm²・1m |
|---|---|---|---|
| 20 ℃ | 0 K | 1.000 | 69.0 μΩ |
| 40 ℃ | 20 K | 1.079 | 74.4 μΩ |
| 60 ℃ | 40 K | 1.157 | 79.8 μΩ |
| 75 ℃ | 55 K | 1.216 | 83.9 μΩ |
| 90 ℃ | 70 K | 1.275 | 88.0 μΩ |
| 105 ℃ | 85 K | 1.334 | 92.0 μΩ |
導体温度による抵抗倍率(20℃基準・α=0.00393)
20 ℃(+0 K)
倍率 1.000 / 69.0 μΩ
40 ℃(+20 K)
倍率 1.079 / 74.4 μΩ
60 ℃(+40 K)
倍率 1.157 / 79.8 μΩ
75 ℃(+55 K)
倍率 1.216 / 83.9 μΩ
90 ℃(+70 K)
倍率 1.275 / 88.0 μΩ
105 ℃(+85 K)
倍率 1.334 / 92.0 μΩ
導体温度と抵抗値の関係(105℃を100%とした比較)
注意:温度と損失は循環している
電流が流れて温度が上がる → 抵抗が増える → 損失が増えてさらに温度が上がる、という関係にあります。厳密には熱平衡の計算が必要ですが、実務では「想定する最高導体温度で抵抗を評価する」という安全側の扱いで足りることが多いです。20℃の抵抗値で損失を出したまま設計を進めないことが要点です。
要点:1℃で約0.393%増。温度上昇40Kなら抵抗は約1.16〜1.24倍で見る。
損失と電圧降下をどう見積もるか
抵抗値が出れば、損失は P = I²R、電圧降下は ΔV = I × R で求められます。電流の2乗で効くため、電流が2倍になると損失は4倍になります。
電圧降下 ΔV (V) = I × R
計算例:5×50mmの銅バー2m・導体温度75℃
断面積250mm²、長さ2mの20℃抵抗は 0.017241 × 2 ÷ 250 = 138 μΩ。導体温度75℃では倍率1.216を掛けて 約168 μΩ になります。この値を使うと、電流ごとの損失と電圧降下は下表のとおりです。
電流別の損失と電圧降下(250mm²・2m・75℃・R=168 μΩ)
| 電流 | 電圧降下 | 損失(2m分) | 1m当たり損失 |
|---|---|---|---|
| 500 A | 0.084 V | 42 W | 21 W/m |
| 1,000 A | 0.168 V | 168 W | 84 W/m |
| 1,500 A | 0.252 V | 377 W | 189 W/m |
| 2,000 A | 0.336 V | 671 W | 336 W/m |
電流別の損失と電圧降下(250mm²・2m・75℃・R=168 μΩ)
500 A
電圧降下 0.084 V / 損失 42 W(21 W/m)
1,000 A
電圧降下 0.168 V / 損失 168 W(84 W/m)
1,500 A
電圧降下 0.252 V / 損失 377 W(189 W/m)
2,000 A
電圧降下 0.336 V / 損失 671 W(336 W/m)
250mm²の断面で2,000Aを流すと電流密度は8A/mm²で、盤内母線の目安としては高い側です。この条件では1mあたり300W超の発熱になり、放熱が追いつかず温度上昇が想定を超える可能性があります。損失の計算値は「その断面積で無理をしていないか」を判断する材料としても使えます。
2026年時点の状況
2026年はAI向けデータセンターの増設と系統用蓄電池・再エネ関連の投資が重なり、電力設備向けの銅需要が強い状態が続いています。LME銅価格は2026年初に一時14,500ドル/t超の水準を付け、国内建値も2,100円/kgを超える高水準で推移しました。材料費が上がるほど「断面積を増やして損失を下げる」判断のコスト影響が大きくなるため、損失(W)と材料費の両方を数値で比べる場面が増えています。運転時間の長い設備では、損失の削減分が電力量として回収できるかを併せて確認しておくと判断しやすくなります。
要点:P = I²R、ΔV = IR。電流2倍で損失4倍。損失値は断面積の妥当性チェックにも使える。
交流と接続部で計算値がずれる理由
ρL/A で求めた抵抗は直流に対する値です。交流では表皮効果と近接効果で電流が導体の表面側に偏り、実効抵抗が直流抵抗より大きくなります。商用周波数(50/60Hz)でも、板厚が厚い導体や複数枚を近接して並べた構成では、この差が無視できなくなります。
計算値より大きくなる要因
- 表皮効果・近接効果(交流時の実効抵抗の増加)
- 導体温度の上昇(1℃で約0.393%)
- ボルト穴による有効断面積の減少
- 締結部・接続部の接触抵抗
- 酸化被膜による接触面の劣化
計算値に近づける工夫
- 厚板1枚より薄板を複数枚に分けて配置する
- 想定最高温度で抵抗を評価する
- 穴位置を電流経路の妨げにならない位置にする
- 接続面を平坦に仕上げ、規定トルクで締結する
- 接続面にすず・ニッケル等のめっきを施す
もう一つ見落としやすいのが接続部です。長い母線では導体そのものの抵抗が支配的ですが、短い連結バーや端子接続では、締結部1か所の接触抵抗が導体本体の抵抗と同程度以上になることもあります。接触抵抗は面の平坦度・締め付け力・酸化状態で変わり、計算だけでは決まりません。
接続部で抵抗が生じる場所
導体A ─────┐
├─ ① 接触面(平坦度・酸化・めっき)
├─ ② 締結力(ボルト・座金・トルク)
導体B ─────┘
└─ ③ 穴による断面減少
抵抗 = 導体Aの抵抗 + ①②の接触抵抗 + 導体Bの抵抗
接触面の状態を安定させる手段として、接続部へのめっきは効果が分かりやすい対策です。詳しくは銅ブスバーへのめっきで扱っています。穴あけや端面の仕上げ精度が接触面に効く点は加工技術もあわせてご覧ください。
要点:計算値は下限。交流・温度・穴・接触抵抗の分だけ実測は大きくなる。
図面・見積で確認しておきたい項目
抵抗値と損失の検討を進めるには、寸法以外の条件も必要になります。次の項目が決まっていれば、材料や加工方法の相談がそのまま進められます。
抵抗・損失を詰めるときに揃えておく情報
- 定格電流と、直流か交流か(交流なら周波数)
- 板厚 × 幅 × 長さ、曲げがある場合は展開長
- 周囲温度と、許容できる導体温度(または温度上昇の上限)
- 材質(C1100 / C1020 など)と質別。導電率の指定があるか
- ボルト穴の位置・径・数(有効断面積に影響する)
- 接続部のめっき指定(すず・ニッケル・銀)と範囲(全面/部分)
- 複数枚並列にする場合の枚数と間隔
当社は名古屋市守山区で、変圧器・配電盤・受配電設備・電池関連向けの銅ブスバー加工を手がけています。切断・曲げ・穴あけからめっき手配までを一括で見るため、「この断面で損失がこの程度なら成立するか」といった段階のご相談でも、加工上の制約とあわせてお答えできます。ブスバーそのものの役割からご確認になる場合はブスバーとはをご覧ください。
図面がまだ固まっていない段階でも
「電流値と設置スペースだけ決まっている」状態からでも、断面積と抵抗値の候補を並べてご相談いただけます。手書きスケッチや現物写真でも対応しています。
要点:電流・寸法・温度条件・材質・穴・めっきの6点が揃えば損失の検討まで進められる。
よくあるご質問
抵抗率と導電率の違いは何ですか
抵抗率は電流の流れにくさを表す値(単位:Ω・mm²/m など)で、導電率は流れやすさを表す値です。両者は逆数の関係にあり、銅では導電率を%IACSで表します。20℃の標準軟銅の体積抵抗率 0.017241 Ω・mm²/m が導電率100%IACSに相当し、ρ = 0.017241 × 100 ÷ 導電率(%IACS)で換算できます。
銅の抵抗温度係数はいくつですか
JIS C 3001(電気用銅材の電気抵抗)では、標準軟銅の電気抵抗の定質量温度係数を20℃において1℃につき0.00393と規定しています。20℃の抵抗値に対して1℃当たり約0.393%増えるという意味で、換算式は Rt = R20 ×{1 + 0.00393 ×(t − 20)}です。導体温度75℃なら約1.22倍になります。
銅ブスバーの1m当たりの抵抗値はどのくらいですか
導電率100%IACSとして計算すると、断面積250mm²(板厚5mm×幅50mm)で20℃なら約69μΩ/m、断面積1,000mm²(板厚10mm×幅100mm)なら約17μΩ/mです。断面積に反比例するため、断面積が2倍になれば抵抗値は半分になります。導体温度75℃ではそれぞれ約84μΩ/m、約21μΩ/mとなります。
抵抗値の計算だけで断面積を決められますか
決められません。抵抗値から分かるのは損失と電圧降下で、断面積の決定にはさらに温度上昇(放熱条件)、短絡時の熱的・機械的強度、取付姿勢や支持間隔の検討が必要です。抵抗値の計算は、それらを検討する前段の共通の入力値として使います。
交流で使う場合、計算値と実測値はどれくらいずれますか
条件次第で一律には言えませんが、交流では表皮効果と近接効果によって実効抵抗が直流抵抗より大きくなります。板厚が厚い導体や、複数枚を近接して並べた構成でその差が出やすくなります。厚板1枚を薄板複数枚に分けて配置すると、断面積が同じでも実効抵抗の増加を抑えやすくなります。
締結部の接触抵抗はどう扱えばよいですか
導体本体の抵抗とは別に加算して考えます。接触抵抗は接触面の平坦度・締め付け力・酸化状態で変わるため計算では決まらず、短い連結バーでは導体本体と同程度以上になることもあります。接続面を平坦に仕上げ、規定トルクで締結し、必要に応じてめっきを施すことで安定させます。
