銅ブスバーのボルト・座金選定|皿ばね座金が効く条件と使い方
銅ブスバーの締結部は、ボルトのサイズだけでなく「どの座金を、どの順で入れるか」で緩みやすさが変わります。特にばね座金(スプリングワッシャ)と皿ばね座金は見た目が似ていますが、効く条件がまったく違います。この記事では、座金のJIS規格上の区分、皿ばね座金が効く条件と効かない条件、銅ならではの「陥没緩み」への対策、そして組付け順序までを整理します。
銅ブスバー
ボルト締結
皿ばね座金
ばね座金
平座金
緩み防止
JIS B 1251
締付けトルク
この記事の内容
ブスバーの締結に座金は必要か
銅ブスバーの締結には、原則として平座金を入れます。銅は鉄より軟らかく、ボルト頭やナットの座面が直接当たると面圧が集中して銅側がへこみ、その分だけ軸力(締め付けの力)が抜けるためです。緩み止めの部品を足すかどうかは、その次に考える話になります。
用語:締結部で起きている「緩み」は2種類ある
回転緩みはボルトやナットが実際に回って戻る現象、非回転緩みは回らないまま軸力だけが落ちる現象です。ブスバーの締結部で問題になりやすいのは後者で、接触面の微小な凹凸がつぶれる「へたり」や、座面が塑性変形する「陥没緩み」が該当します。座金の選び方は、このどちらに効かせたいかで変わります。
平座金に期待できること
- 座面の面圧を広い面積に分散する
- 銅表面の傷・へこみを防ぐ
- 穴が大きめのときに座面を確保する
平座金だけでは足りない場面
- 振動・衝撃が繰り返し加わる
- 通電による温度変化(熱膨張・収縮)が大きい
- 点検・増し締めの周期が長い、または開けられない
要点:平座金は基本装備。緩み止め部品はその上に足すかを判断する。
座金の種類とJIS規格上の区分
締結部で使う座金は、平座金(JIS B 1256)・ばね座金(JIS B 1251)・皿ばね座金(JIS B 1251)の3系統に分かれます。図面や部品表で指定するときは、規格番号と種別まで書いておくと調達での取り違えが防げます。
座金の種類とJIS上の区分
| 種類 | 規格 | 区分 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| 平座金 | JIS B 1256:2008 | 並形など。部品等級と硬さ(200HV / 300HV など)で区分 | 面圧の分散・座面の保護 |
| ばね座金 | JIS B 1251:2018 | 2号(一般用) / 3号(重荷重用) | 戻り回転の抑制(条件付き) |
| 皿ばね座金 | JIS B 1251:2018 | 1種(ねじ用) / 2種(キャップボルト用)、それぞれ軽荷重用・重荷重用 | 軸力低下の補填(ばね反力) |
座金の種類とJIS上の区分
平座金 / JIS B 1256:2008
並形など。部品等級と硬さ(200HV / 300HV など)で区分。役割は面圧の分散・座面の保護
ばね座金 / JIS B 1251:2018
2号(一般用) / 3号(重荷重用)。役割は戻り回転の抑制(条件付き)
皿ばね座金 / JIS B 1251:2018
1種(ねじ用) / 2種(キャップボルト用)、それぞれ軽荷重用・重荷重用。役割は軸力低下の補填
補足:平座金の硬さは相手のボルト強度区分で選ぶ
JIS B 1256では、並形・部品等級Aの硬さ200HVのものが強度区分8.8以下の六角ボルトやステンレス製締結部品に適用されるといった対応づけがあります。より高い面圧がかかる用途や、穴のすきまが大きく食い込みが心配な箇所では、硬さの高い区分(300HVなど)が選ばれます。銅ブスバーの締結部は面圧が問題になりやすい部位なので、この使い分けが効いてきます。
注意:呼びに括弧が付いた区分は避ける
JIS B 1251では、呼びに括弧を付けた皿ばね座金は使用しないのが望ましいとされています。また、JIS規格として寸法が示されているのはメートル呼びで39までで、それ以上のサイズはメーカーの参考規格になります。大型の締結部を設計するときは、規格の範囲内かどうかを先に確認してください。
要点:座金は3系統。指定は「規格番号+種別+荷重区分」まで書く。
皿ばね座金が効く条件・効かない条件
皿ばね座金は、締付け軸力に匹敵するばね反力を持つため、へたりや熱による軸力低下を「ばねが伸びて追いかける」ことで補えます。ただし、完全に平らになるまで押しつぶしてしまうと、ばねとしての機能は残りません。
皿ばね座金の働き方
締付け直後 時間経過(へたり・熱膨張後) ボルト頭 ボルト頭 ▼ ▼ ┌────┐ ┌────┐ \ / ← 皿ばね \ / ← ばねが伸びて ━━━━━━━ ブスバー ━━━━━━━ 軸力の低下を補う ━━━━━━━ 相手側 ━━━━━━━ (たわみが残っている) (たわみが残っていれば効く)
たわみが残っていることが効果の条件です。全押しつぶし(フラット)まで締めると、以降は単なる硬い座金として働きます。
効く条件
- 締付け後もたわみが残る荷重範囲で使っている
- 軸力低下の原因が「へたり」「熱膨張・収縮」である
- 荷重区分(軽荷重用/重荷重用)が用途に合っている
- 平座金と併用し、座面の陥没を抑えている
効かない・逆効果になる条件
- フラットになるまで締めきっている
- 緩みの原因が締付け不足そのもの
- 相手材が軟らかく、ばね反力で食い込んでしまう
- 変形した現品を再使用している
要点:皿ばね座金は「たわみが残る使い方」でだけ効く。潰しきったら効果は消える。
ばね座金はなぜ効きにくいと言われるのか
ばね座金(スプリングワッシャ)は、座面に密着するまで締め付けた時点で、軸力低下を補う機能も戻り回転を防ぐ機能もほとんど働かなくなるとされています。実務ではほぼ必ず密着まで締めるため、期待した緩み止め効果が得られないという指摘につながっています。
注意:再使用で悪化することがある
ばね座金は、その角がボルト・ナットの座面や被締結部材の表面を傷つけながら変形します。そのため、繰り返し取り外す箇所での再使用は、かえって緩みを誘発する恐れがあります。銅ブスバーのように相手材が軟らかい場合、傷が接続面に及ぶと接触状態にも影響します。点検で外した座金は、原則として新品に交換してください。
緩み止め部品の選び分け(考え方)
| 状況 | 優先して検討するもの | 理由 |
|---|---|---|
| 通電による温度変化が大きい | 皿ばね座金 + 平座金 | 軸力低下をばね反力で補える |
| 振動・衝撃が主因 | 回り止め機構を持つ部品 | 戻り回転そのものを止める |
| 点検・増し締めができる | 平座金 + トルク管理 | 管理で担保するほうが確実 |
| 開けられない・保守間隔が長い | 皿ばね座金 + 記録の残る締結 | 初期の軸力を長く保つ |
緩み止め部品の選び分け(考え方)
通電による温度変化が大きい
皿ばね座金 + 平座金 — 軸力低下をばね反力で補える
振動・衝撃が主因
回り止め機構を持つ部品 — 戻り回転そのものを止める
点検・増し締めができる
平座金 + トルク管理 — 管理で担保するほうが確実
開けられない・保守間隔が長い
皿ばね座金 + 記録の残る締結 — 初期の軸力を長く保つ
要点:ばね座金は密着締めで機能が失われる。原因に合わせて部品を選ぶ。
銅は軟らかい:陥没緩みと面圧分散
陥没緩みとは、ボルト頭やナットの座面の面圧が高すぎて接触面が塑性変形し、その沈み込み分だけ軸力が失われる現象です。銅ブスバーは相手材が銅なので、鉄板を締めるときより起きやすくなります。
式のとおり、同じ軸力でも接触面積を広げれば面圧は下がります。平座金を入れる、外径の大きい平座金を選ぶ、硬さの高い区分を選ぶ、といった手が有効なのはこのためです。
座面の接触面積を広げると面圧はどう下がるか(面積比に対する面圧の相対値)
※面圧は接触面積に反比例するという関係を図にしたものです。実際の接触面積は座金の外径・内径・穴径で決まるため、選定時は現品寸法で確認してください。
コツ:通電面と締結面は別物として考える
ボルトの軸力は「接続面同士を押し付ける力」であって、電流はボルトではなくブスバー同士の接触面を流れます。したがって、座金の選定で守りたいのは「接続面の面圧が長期間保たれること」です。接触抵抗と発熱の関係については銅ブスバーのメリットのページも参考にしてください。
注意:めっきの有無で締結条件が変わる
接続面にめっきがあるかどうかで、酸化被膜の育ち方も表面の硬さも変わります。生地のまま組む場合は、組付け直前に接続面を清掃する運用とセットで考えてください。表面処理の選び方は銅ブスバーへのめっきのページにまとめています。
要点:銅は軟らかい。面圧を下げる設計が、そのまま緩み対策になる。
締付けトルクの目安と管理
締付けトルクは、機器・盤メーカーが指定した値がある場合、それが最優先です。ブスバーの締結部は端子台・遮断器・変圧器など相手側の機器仕様に従うのが原則で、汎用のボルト強度から計算した値をそのまま当てると、相手側の端子を痛めることがあります。
端子部の締付けトルクの例(あくまで一例)
| ねじの呼び | 締付けトルクの例 | 備考 |
|---|---|---|
| M6 | 機器指定による | 相手機器の取扱説明書を確認 |
| M8 | 7.8〜11.8 N・m | ある機器メーカーの端子部の例 |
| M10 | 14.7〜19.6 N・m | 同上 |
| M12以上 | 機器指定による | 座面寸法・材質の影響が大きくなる |
端子部の締付けトルクの例(あくまで一例)
M6
機器指定による — 相手機器の取扱説明書を確認
M8
7.8〜11.8 N・m(ある機器メーカーの端子部の例)
M10
14.7〜19.6 N・m(同上)
M12以上
機器指定による — 座面寸法・材質の影響が大きくなる
注意:上の数値は一般解ではありません
掲載した値はある機器の端子部で示されていた範囲の例であり、すべてのブスバー締結部に当てはまる値ではありません。実際の設計では、相手機器の指定値、ボルトの強度区分、座金の有無、被締結部材の材質を確認したうえで決めてください。値が示されていない場合は、機器メーカーまたは盤メーカーへの確認が必要です。
トルク管理で残しておきたい記録
- どのトルク値で締めたか(工具の設定値)
- 使用した工具と、その校正の状況
- 締付け後のマーキング(合いマーク)の有無
- 座金の種別と、新品交換したかどうか
要点:トルクは機器指定が最優先。数値と工具、マーキングを記録で残す。
組付け順序と現場での確認
座金の並び順は「ボルト頭 → 平座金 → (皿ばね座金) → 被締結部材」が基本です。ばね系の座金を被締結部材に直接当てると、軟らかい銅側に食い込んで傷や陥没の原因になります。
締結部の積み順(例)
ボルト頭
↓
平座金 ← 面圧を広げる
↓
皿ばね座金 ← 軸力低下を補う(使う場合)
↓
平座金 ← ばね座金が銅に当たらないように
↓
ブスバー(銅)
ブスバー(銅) ← ここが通電する接触面
↓
平座金
↓
ナット
皿ばね座金には向き(凸側・凹側)があります。向きを逆に入れると設計どおりのばね特性になりません。
組付け時のチェックリスト
- 接続面に切粉・油分・酸化被膜が残っていないか
- 座金の種別・荷重区分が図面どおりか
- 皿ばね座金の向きが揃っているか
- ばね系の座金が銅に直接当たっていないか
- 指定トルクで締めたあと、合いマークを入れたか
- 複数ボルトの締結では、対角順に段階的に締めたか
コツ:締結部の穴は「設計値どおり」が前提
座金の面圧計算は、穴径が図面どおりであることを前提にしています。穴が大きすぎると平座金の有効な接触面積が減り、面圧が上がります。穴径・縁距離・穴ピッチの精度は、締結の信頼性にも直結します。当社(株式会社石垣商店)では切断から曲げ・穴あけまでを一貫して行い、締結部の寸法を含めて確認しています。詳しくは品質管理のページをご覧ください。
要点:並び順・向き・清掃・対角締め。現場の4点で締結品質はほぼ決まる。
よくあるご質問
銅ブスバーの締結に、ばね座金(スプリングワッシャ)は使わないほうがよいですか?
使ってはいけないわけではありませんが、期待される緩み止め効果は限定的です。ばね座金は座面に密着するまで締め付けると、軸力低下を補う機能も戻り回転を防ぐ機能もほとんど働かなくなるとされているためです。熱による軸力低下を補いたい場合は皿ばね座金、振動による戻り回転を止めたい場合は回り止め機構を持つ部品を検討してください。
皿ばね座金とばね座金の違いは何ですか?
皿ばね座金は傘状の形をしていて、締付け軸力に匹敵するばね反力で軸力の低下を補う部品です。ばね座金は一部が切り欠かれてねじれた形で、戻り回転を抑えることを主目的としています。どちらもJIS B 1251で規定されていますが、皿ばね座金は1種(ねじ用)・2種(キャップボルト用)と軽荷重用・重荷重用に、ばね座金は2号(一般用)・3号(重荷重用)に区分されています。
ブスバーの締結で平座金は省略できますか?
推奨しません。銅は鉄より軟らかいため、ボルト頭やナットの座面が直接当たると面圧が集中し、接触面が塑性変形して軸力が抜ける「陥没緩み」が起きやすくなります。平座金は面圧を広い面積に分散し、この沈み込みを抑える役割を持ちます。穴径が大きめの設計になっている場合は特に必要性が高くなります。
締付けトルクはどうやって決めればよいですか?
相手側の機器・盤メーカーが指定した値がある場合は、それに従うのが原則です。ブスバーは遮断器や端子台などの端子に接続されることが多く、汎用のボルト強度から計算した値をそのまま使うと相手側の端子を痛める可能性があります。指定値が見当たらない場合は、機器メーカーまたは盤メーカーに確認してください。
点検で外した座金は再使用してよいですか?
ばね座金・皿ばね座金は新品交換を推奨します。ばね座金は座面を傷つけながら変形するため、再使用すると緩みを誘発する恐れがあると指摘されています。皿ばね座金も、一度たわみきった現品は設計どおりのばね特性が残っていない可能性があります。平座金も、変形や食い込み跡があるものは交換してください。
