設計・計算

キュービクル主母線・分岐母線のサイズの決め方|容量から逆算

キュービクルの母線サイズは、主母線は変圧器二次側の定格電流から、分岐母線は各分岐回路の遮断器定格から決めます。同じ盤の中にあっても両者は決め方の出発点が違い、そこを揃えてしまうと過大設計か容量不足のどちらかになります。この記事では、受電容量から低圧主母線の電流を逆算する手順を段階で示し、分岐母線で追加検討が必要になる点、そして「分岐母線は細くてよいが短絡強度は主母線と同じ」という見落としやすい落とし穴までを整理します。

キュービクル
主母線
分岐母線
受電設備
銅ブスバー
変圧器二次電流
JIS C 4620

主母線と分岐母線は何が違うのか

主母線とは、盤の主開閉器から各分岐回路の分岐点までを結ぶ、その盤の全負荷電流が通る母線です。これに対して分岐母線は、主母線から分岐して個々の遮断器へ電気を配る母線で、流れるのはその分岐回路分の電流だけです。したがって主母線は「盤全体の容量」で、分岐母線は「その回路の容量」で決めます。

主母線(メインバー)

  • 盤の全負荷電流が通る
  • 変圧器二次側の定格電流、または主遮断器の定格から決める
  • 長く、支持間隔と熱伸縮の検討が要る
  • ここが不足すると盤全体が容量不足になる

分岐母線(ブランチバー)

  • その分岐回路の電流だけが通る
  • 分岐遮断器の定格電流から決める
  • 短く、曲げ・穴あけ形状が複雑になりやすい
  • 細くしてよいが短絡強度は主母線と同条件

盤内の電流の流れ方

 受電 → 変圧器 →[主遮断器]
                    │
        ━━━━━━━ 主母線(全負荷電流) ━━━━━━━
          │            │            │
       分岐母線      分岐母線      分岐母線
          │            │            │
        MCCB         MCCB         MCCB
          ↓            ↓            ↓
        負荷A         負荷B         負荷C

主母線は「合計」を、分岐母線は「1回路分」を運びます。ただし短絡電流は分岐点まで同じ大きさで到達するため、機械的な強度の条件は分岐側でも緩みません。

要点:主母線は盤全体の容量、分岐母線は回路ごとの容量。ただし短絡時の条件は共通。

受電容量から主母線の電流を逆算する

低圧主母線に必要な電流は、変圧器容量(kVA)を二次電圧と相数で割って求めます。三相の場合は「定格電流(A)=容量(kVA)×1000÷(√3×二次電圧(V))」、単相3線式では「定格電流(A)=容量(kVA)×1000÷二次電圧(V)」です。この値が主母線に常時流れる電流の基準になります。

三相:I (A) = kVA × 1000 ÷ ( √3 × V )
単相3線:I (A) = kVA × 1000 ÷ V

変圧器容量と二次側定格電流(三相・二次電圧210Vの場合)

変圧器容量 二次側定格電流 主母線に求める電流の目安
50 kVA 約137 A 150 A 級
75 kVA 約206 A 225 A 級
100 kVA 約275 A 300 A 級
150 kVA 約412 A 400〜500 A 級
200 kVA 約550 A 600 A 級
300 kVA 約825 A 900 A 級
500 kVA 約1,375 A 1,500 A 級

変圧器容量と二次側定格電流(三相・二次電圧210Vの場合)

50 kVA

約137 A → 150 A 級

75 kVA

約206 A → 225 A 級

100 kVA

約275 A → 300 A 級

150 kVA

約412 A → 400〜500 A 級

200 kVA

約550 A → 600 A 級

300 kVA

約825 A → 900 A 級

500 kVA

約1,375 A → 1,500 A 級

電灯変圧器(単相3線式)の場合

単相3線式210/105Vの電灯変圧器では、√3で割らない分だけ同じ容量でも電流が大きく出ます。50kVAで約238A、75kVAで約357A、100kVAで約476Aが目安です。動力と電灯で同じ容量でも母線サイズが変わるため、単線結線図で相数と二次電圧を必ず確認してください。

注意:主遮断器の定格と母線の定格を混同しない

変圧器二次側の主遮断器は、一般に変圧器定格二次電流の1.5倍以下で選定されます。これは短時間の過負荷や励磁突入を通すための余裕であって、母線に常時その電流を流してよいという意味ではありません。一方で、遮断器が動作する前の過負荷状態にどこまで耐えるかという観点も要るため、母線の定格は変圧器二次電流と主遮断器定格の両方を見て決めます。

要点:主母線の電流は変圧器容量÷(√3×二次電圧)から出す。単相3線は√3で割らない。

電流から断面積、そして板厚×幅へ

必要電流が決まったら、電流密度で割って必要断面積を出し、流通している板厚×幅の組合せに割り付けます。低圧盤の母線で使われる電流密度は、電流が大きいほど小さくする段階的な値で、JIS C 8480(キャビネット形分電盤)では基準定格電流125A以下で3.0、125A超250A以下で2.5、250A超400A以下で2.0、400A超630A以下で1.7 A/mm²以下と規定されています。

必要断面積 S (mm²) = 電流 I (A) ÷ 電流密度 J (A/mm²)
例) 550A ÷ 1.7 A/mm² ≒ 324 mm² → 5×75 (375mm²) または 6×60 (360mm²)

変圧器容量から主母線寸法までの割り付け例(三相210V)

変圧器容量 二次電流 必要断面積の目安 銅帯寸法の例
75 kVA 約206 A 約83 mm²(2.5A/mm²) 4×25 = 100 mm²
100 kVA 約275 A 約138 mm²(2.0A/mm²) 5×30 = 150 mm²
150 kVA 約412 A 約242 mm²(1.7A/mm²) 5×50 = 250 mm²
200 kVA 約550 A 約324 mm²(1.7A/mm²) 5×75 = 375 mm²
300 kVA 約825 A 個別検討 6×100 または 2枚並列

変圧器容量から主母線寸法までの割り付け例(三相210V)

75 kVA / 約206 A

必要 約83 mm²(2.5A/mm²) → 4×25 = 100 mm²

100 kVA / 約275 A

必要 約138 mm²(2.0A/mm²) → 5×30 = 150 mm²

150 kVA / 約412 A

必要 約242 mm²(1.7A/mm²) → 5×50 = 250 mm²

200 kVA / 約550 A

必要 約324 mm²(1.7A/mm²) → 5×75 = 375 mm²

300 kVA / 約825 A

個別検討 → 6×100 または 2枚並列

注意:630Aを超えたら目安の外挿をやめる

JIS C 8480 の適用範囲は基準定格電流630A以下です。300kVA級以上の主母線はこの範囲を超えるため、1.7 A/mm² をそのまま延長して使わないでください。この領域では温度上昇の検討、複数枚並列時の電流の偏り、交流での表皮効果といった要素が効いてきます。実測または個別計算での裏付けが必要です。

同じ断面積でも「薄く広い」方が有利

断面積が同じでも、放熱に効くのは断面の外周です。板厚10mm×幅40mm(400mm²)より、板厚5mm×幅75mm(375mm²)の方が外周が長く、温度が上がりにくくなります。断面積を厚みで稼ぐと放熱面が伸びないため、盤の奥行きが許すなら幅で稼ぐのが定石です。

断面積が近い寸法での外周の違い(放熱面の目安)

5×75(375mm²)
外周160mm
6×60(360mm²)
外周132mm
10×40(400mm²)
外周100mm

要点:断面積は電流密度で出す。同じ断面積なら薄く広い形の方が放熱に有利。

分岐母線の決め方と、短絡強度という落とし穴

分岐母線のサイズは、その分岐回路の遮断器定格電流から決めます。主母線が600A級でも、分岐が100A回路なら分岐母線は100A相当で構いません。ただし短絡電流は分岐遮断器が動作するまで分岐母線にも流れるため、電磁力と熱的強度の検討では主母線と同じ短絡電流を前提にする必要があります。ここが分岐母線で最も見落とされる点です。

分岐母線を決める手順

  • ① 分岐遮断器の定格電流(フレームではなく定格)を確認する
  • ② 電流密度から必要断面積を出す
  • ③ 主母線への接続方法(重ね締め・T字接続)と接続面積を決める
  • ④ 短絡時の電磁力に耐える支持・固定を検討する(短絡電流は主母線と同じ)
  • ⑤ ボルト穴の縁距離と、穴による有効断面の減少を確認する

注意:分岐部の接続面積が母線断面より小さくなっていないか

分岐母線を主母線にボルト1本で留めると、そこが電流の通り道として最も細い箇所になります。接続面の実効面積が母線断面積を下回れば、そこが発熱源になります。分岐部はボルト本数・座面の広さ・締付トルクを含めて、母線断面と同等以上の通電能力を確保してください。締結部の温度上昇限度は母線本体より厳しく規定されており(裸銅の接触部で35K)、実際に先に限界を迎えるのはこちらです。

コツ:分岐は「電気」より「形状」で難しくなる

分岐母線は短い割に、曲げ・ひねり・段差・複数の穴が集中します。電気的には余裕がある寸法でも、曲げRが取れずに割れる、穴の縁距離が足りない、隣接相との離隔が確保できないといった形で成立しなくなることがあります。設計の早い段階で加工側と形状を詰めると手戻りが減ります。当社の対応範囲は加工技術のページにまとめています。

要点:分岐母線は回路電流で細くしてよい。ただし短絡強度と接続部の通電能力は妥協できない。

JIS C 4620が母線に求めていること

キュービクル式高圧受電設備の規格である JIS C 4620:2018 は、母線の断面積そのものより、相の識別・絶縁距離・接地母線といった安全側の要求を定めています。同規格は公称電圧6.6kV、系統短絡電流12.5kA以下、受電設備容量4,000kVA以下の受電設備を対象としています。

JIS C 4620:2018 が母線・配線に関して定める主な数値

項目 規定
適用範囲(公称電圧) 6.6 kV
適用範囲(系統短絡電流) 12.5 kA 以下
適用範囲(受電設備容量) 4,000 kVA 以下
高圧充電部相互間の絶縁距離 90 mm
高圧充電部と大地間の絶縁距離 70 mm
低圧主回路の絶縁距離 空間距離・沿面距離とも10 mm以上
高圧主回路導体の公称断面積 CB形 38 mm²以上 / PF・S形 14 mm²以上
相の表示 主回路電線及び銅帯に相別の表示を行う
接地母線 銅帯を使用することができる

JIS C 4620:2018 が母線・配線に関して定める主な数値

適用範囲

公称電圧6.6kV / 系統短絡電流12.5kA以下 / 受電設備容量4,000kVA以下

高圧充電部相互間の絶縁距離

90 mm

高圧充電部と大地間の絶縁距離

70 mm

低圧主回路の絶縁距離

空間距離・沿面距離とも10 mm以上

高圧主回路導体の公称断面積

CB形 38 mm²以上 / PF・S形 14 mm²以上

相の表示

主回路電線及び銅帯に相別の表示を行う

接地母線

銅帯を使用することができる

補足:接地母線の太さの考え方

B種接地工事の接地母線の太さは、その接地母線に接続する接地線のうち最も太いもの以上とする、という考え方が JIS C 4620:2018 に示されています。接地母線は事故時にしか電流が流れないため常時電流での断面積計算にはなじまず、接続する接地線を基準に決める形になっています。

要点:JIS C 4620は断面積ではなく、絶縁距離・相表示・接地母線を規定している。断面積の根拠は別に要る。

図面・見積りで伝えるべき情報

母線の見積り・製作を依頼するとき、寸法と数量に加えて「電流・接続方法・めっき・曲げ」の4点が揃っていれば、ほぼ手戻りなく進みます。逆にこの4点が抜けていると、確認のやり取りだけで数日かかります。

相談時に揃っていると早い情報

  • 板厚×幅×長さと数量(相数分、予備の有無)
  • 通電電流と使用環境(盤内温度・屋内屋外)
  • 穴の径・位置・縁距離、長穴の有無
  • 曲げの角度・向き・曲げR(ひねりの有無)
  • めっきの種類と範囲(全面か接続面のみか)
  • 材質・質別の指定(C1100 O材など。指定がなければ相談で決められます)

最新の状況(2026年8月時点)

国内の電気銅建値は2026年に入って過去最高値の更新が続き、2026年8月には1トン当たり238万円へ改定されました。同時期には電線・ケーブルで受注停止や納期回答の遅延も伝えられています。母線の断面積を一律に1サイズ上げる設計は材料費に直結するため、必要断面積を押さえたうえで、余裕をどこに置くかを意図的に決めることの価値が上がっています。相場は変動するため、見積りの有効期限と材料価格の扱いは発注時にご確認ください。

図面が未確定の段階でも、単線結線図と変圧器容量が分かれば母線電流の目安は出せます。手書きのスケッチや現物写真からの相談も承っています。品質確認の進め方は品質管理のページをご覧ください。

要点:電流・接続・めっき・曲げの4点を先に決めておくと、見積りも製作も速い。

よくあるご質問

キュービクルの主母線のサイズはどうやって決めますか

変圧器二次側の定格電流を求め、そこから必要断面積を計算して銅帯寸法に割り付けます。三相なら「定格電流(A)=容量(kVA)×1000÷(√3×二次電圧(V))」で、例えば200kVA・二次電圧210Vなら約550Aです。この電流を電流密度(400A超630A以下の区分では1.7A/mm²以下)で割ると約324mm²となり、板厚5mm×幅75mm(375mm²)などが候補になります。

主母線と分岐母線でサイズの決め方はどう違いますか

主母線は盤の全負荷電流(変圧器二次側の定格電流や主遮断器の定格)から決め、分岐母線はその分岐回路の遮断器定格電流から決めます。分岐母線は流れる電流が小さいぶん細くできますが、短絡電流は分岐母線にも同じ大きさで到達するため、電磁力や熱的強度の検討では主母線と同じ短絡条件を前提にする必要があります。

分岐母線は主母線より細くしても問題ありませんか

常時電流の観点では問題ありません。分岐回路の定格電流に見合った断面積があれば十分です。ただし短絡強度と接続部は別で、分岐点の接続がボルト1本で接触面積が不足していると、そこが最も細い通電経路になって発熱します。接続面はボルト本数と座面の広さで、母線断面と同等以上の通電能力を確保してください。

単相3線式と三相で母線サイズは変わりますか

変わります。三相は容量を√3×二次電圧で割るのに対し、単相3線式は二次電圧で割るため、同じ容量でも電流が大きくなります。二次電圧210Vの場合、100kVAの三相は約275Aですが、単相3線式では約476Aとなり、必要な断面積は1.7倍以上になります。単線結線図で相数と二次電圧を必ず確認してください。

JIS C 4620には母線の断面積が規定されていますか

低圧母線の断面積そのものは規定されていません。JIS C 4620:2018 が定めているのは、高圧充電部相互間90mm・大地間70mmの絶縁距離、低圧主回路で空間距離・沿面距離とも10mm以上、主回路電線及び銅帯への相別表示、接地母線に銅帯を使用できること、高圧主回路導体の公称断面積(CB形38mm²以上、PF・S形14mm²以上)などです。低圧母線の電流容量の根拠は、電流密度や温度上昇の検討で別に確保する必要があります。

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