銅ブスバーの電圧降下の計算|大電流で効く損失と許容値の考え方
ブスバーの電圧降下は導体1mあたり「電流密度 × 抵抗率」で決まります。70℃の銅なら電流密度2A/mm²のとき1mあたり約41mV(片道)。盤内の数mでは「率」はほとんど問題になりませんが、同じ電圧降下が損失(発熱)としては数百W〜数kWになります。計算式・サイズ別の抵抗値・計算例3つ・内線規程の許容値・交流リアクタンスまでを数値で整理します。
銅ブスバー
電圧降下
大電流
母線設計
電流密度
内線規程
リアクタンス
導体損失
この記事の内容
ブスバーの電圧降下はどう計算するか
基本形は抵抗率 ρ × 導体長さ L ÷ 断面積 A × 電流 Iで、あとは電気方式の係数を掛けます。直流と単相2線式は往復2本ぶんで2倍、三相3線式は線間電圧で見るため√3倍です。
三相3線式(線間): e (V) = √3 × ρ × L × I ÷ A
導体で失われる電力: P (W) = e × I
ρ は抵抗率(Ω·mm²/m)、L は片道の導体長さ(m)、A は1相あたりの断面積(mm²)、I は負荷電流(A)です。銅(タフピッチ銅C1100など、導電率はおおむね100%IACS前後)の抵抗率は20℃で約0.0172 Ω·mm²/m(標準軟銅の1/58)です。
この式は1段階まとめられる
A と I をまとめると電流密度 J = I ÷ A。つまり導体1mあたりの電圧降下は、サイズに関係なくρ × J だけで決まります。
(70℃の銅なら ρ ≒ 0.0206、J = 2A/mm² で 約0.041 V/m)
板厚10×幅100mm でも 5×50mm でも、同じ電流密度で使うかぎり1mあたりの電圧降下は同じです。
実務用に、電流密度別の1mあたり電圧降下を先に置きます(導体温度70℃)。
電流密度別・導体1mあたりの電圧降下(銅・70℃)
| 電流密度 | 導体1m(片道) | 三相3線 線間1m | 直流・単相2線 1m |
|---|---|---|---|
| 1.5 A/mm² | 31 mV | 54 mV | 62 mV |
| 2.0 A/mm² | 41 mV | 71 mV | 82 mV |
| 2.5 A/mm² | 52 mV | 89 mV | 103 mV |
| 3.0 A/mm² | 62 mV | 107 mV | 124 mV |
電流密度別・導体1mあたりの電圧降下(銅・70℃)
電流密度 1.5 A/mm²
導体1m 31mV / 三相3線 54mV / 直流・単相 62mV
電流密度 2.0 A/mm²
導体1m 41mV / 三相3線 71mV / 直流・単相 82mV
電流密度 2.5 A/mm²
導体1m 52mV / 三相3線 89mV / 直流・単相 103mV
電流密度 3.0 A/mm²
導体1m 62mV / 三相3線 107mV / 直流・単相 124mV
注意:「片道」「線間」「往復」を取り違えない
三相3線式で往復ぶんの2倍を掛けると実際の約1.15倍(2÷√3)に、直流で×2を忘れると実際の半分になります。L に入れるのは常に片道長さ、係数は電気方式で決める、と手順を固定してください。
銅ブスバーの抵抗値はいくらか(サイズ別・温度別)
銅ブスバーの直流抵抗は、20℃で断面積1000mm²(10×100mm)なら約17.2 μΩ/m、実運転に近い70℃では約20.6 μΩ/mです。常温値のまま計算すると、電圧降下も損失も2割ほど小さく見積もることになります。
(銅の抵抗温度係数 α20 ≒ 0.00393 /℃)
銅ブスバーのサイズ別 直流抵抗(1mあたり)
| 寸法 (板厚×幅) | 断面積 | 20℃ | 70℃ |
|---|---|---|---|
| 3 × 20 mm | 60 mm² | 287 μΩ/m | 343 μΩ/m |
| 5 × 50 mm | 250 mm² | 68.8 μΩ/m | 82.4 μΩ/m |
| 8 × 80 mm | 640 mm² | 26.9 μΩ/m | 32.2 μΩ/m |
| 10 × 100 mm | 1000 mm² | 17.2 μΩ/m | 20.6 μΩ/m |
| 10 × 150 mm | 1500 mm² | 11.5 μΩ/m | 13.7 μΩ/m |
銅ブスバーのサイズ別 直流抵抗(1mあたり)
3×20mm(60mm²)
20℃ 287μΩ/m → 70℃ 343μΩ/m
5×50mm(250mm²)
20℃ 68.8μΩ/m → 70℃ 82.4μΩ/m
8×80mm(640mm²)
20℃ 26.9μΩ/m → 70℃ 32.2μΩ/m
10×100mm(1000mm²)
20℃ 17.2μΩ/m → 70℃ 20.6μΩ/m
10×150mm(1500mm²)
20℃ 11.5μΩ/m → 70℃ 13.7μΩ/m
いずれも導電率100%IACS・直流での計算値です。交流では表皮効果で実効抵抗が上乗せされ、板厚が厚いものほど表の値より大きくなる点に注意してください。
導体温度と抵抗の関係(20℃を100%とした場合)
コツ:計算に使う温度は「最悪条件」で決める
周囲温度40℃・温度上昇30Kなら導体は70℃です。この70℃の抵抗値を使うのが安全側。20℃で計算してぎりぎりに収めた設計は、夏場の全負荷時に計算値を約2割超えます。
材料を変えると電圧降下は導電率に反比例します。銅を1.0とすると、アルミ(導電率 約61%)は約1.6倍、黄銅(約27%)は約3.7倍です。銅を選ぶ理由は銅ブスバーのメリットで整理しています。
要点:1000mm²の銅ブスバーは70℃で約20.6μΩ/m。抵抗は20℃→70℃で約1.2倍になるので、計算温度を先に決める。
電圧降下の計算例(盤内母線・長尺母線・直流大電流)
数値を入れると、盤内の短い母線では「率」はほぼ問題にならず、損失(発熱)が主役になることがはっきりします。以下いずれも導体温度70℃(ρ = 0.0206 Ω·mm²/m)で計算しています。
例1:盤内の主母線(三相3線 420V / 2000A / 6m / 1相2000mm²=10×100mm 2枚並列)
計算の手順
- 1相の抵抗 R = 0.0206 × 6 ÷ 2000 = 61.8 μΩ
- 線間電圧降下 e = √3 × 2000 × 61.8μΩ = 約0.21 V(420Vに対して約0.05%)
- 導体損失 P = 3 × 2000² × 61.8μΩ = 約740 W
0.05%は規程上まったく問題にならない値ですが、盤の中で740Wが熱になっていることになり、盤内温度上昇と換気設計に直結します。盤内母線で電圧降下を計算する意味はここにあります。
例2:建屋内の長尺母線(三相3線 420V / 1000A / 片道40m / 1相800mm²=10×80mm)
計算の手順
- 1相の抵抗 R = 0.0206 × 40 ÷ 800 = 1.03 mΩ
- 線間電圧降下(抵抗ぶんのみ) e = √3 × 1000 × 1.03mΩ = 約1.78 V(約0.42%)
- 導体損失 P = 3 × 1000² × 1.03mΩ = 約3.1 kW
距離が伸びると率も無視できず、損失は3.1kWに達します。交流ではさらにリアクタンスぶんが上乗せされます(後述)。
例3:蓄電池まわりの直流母線(48V / 1500A / 片道1.5m / 1000mm²=10×100mm)
計算の手順
- 往復の抵抗 R = 0.0206 × 3 ÷ 1000 = 61.8 μΩ
- 電圧降下 e = 1500 × 61.8μΩ = 約0.093 V(48Vに対して約0.19%)
- 損失 P = 1500² × 61.8μΩ = 約139 W
低電圧・大電流ほど「率」が効きにくく「熱」が効く
例1 盤内 2000A 降下 0.05% ←小さい 損失 740W ←大きい 例2 長尺 1000A 降下 0.42% ←効く 損失 3100W ←大きい 例3 DC48V 1500A 降下 0.19% ←小さい 損失 139W ←無視できない
電圧降下と損失はP = e × I で結ばれます。「数%以内だから大丈夫」と判断する前に、必ずWに換算してください。
要点:盤内数mの母線は電圧降下0.1%未満だが損失は数百W。判断は「%」ではなく「W」で行う。
電圧降下の許容値は何%か
低圧配線の電圧降下は、内線規程1310-1により幹線・分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下が原則です。ただし電気使用場所内に設けた変圧器から供給される場合の幹線は3%以下まで認められ、こう長が60mを超える場合は長さに応じて緩和されます。
こう長による電圧降下の許容値(内線規程1310-2の考え方)
| 供給変圧器からのこう長 | 構内変圧器から供給 | 電気事業者から低圧引込 |
|---|---|---|
| 60 m 以下 | 3 % | 2 % |
| 120 m 以下 | 5 % | 4 % |
| 200 m 以下 | 6 % | 5 % |
| 200 m 超 | 7 % | 6 % |
こう長による電圧降下の許容値(内線規程1310-2の考え方)
こう長 60m以下
構内変圧器 3% / 低圧引込 2%
こう長 120m以下
構内変圧器 5% / 低圧引込 4%
こう長 200m以下
構内変圧器 6% / 低圧引込 5%
こう長 200m超
構内変圧器 7% / 低圧引込 6%
注意:数値は必ず最新版で確認する
内線規程は改定が入ります。上表は考え方を掴むための整理で、設計時にはその時点で有効な版を確認してください。またこの許容値は「変圧器二次側から最終負荷まで」の合計枠であり、盤内母線はその一部を使う位置づけです。
電池・データセンター向けの低電圧大電流回路では、内線規程の枠とは別に効率目標から逆算した上限を持つのが実務的です。48V系の1%は0.48Vしかありません。
2026年の動向:電圧降下が「損失」として評価されはじめている
2026年時点で、データセンター向け高圧配電機器の市場は世界で年率10%超の成長が見込まれ、国内のデータセンター電力需要も2030年代半ばに数十TWh規模へ拡大すると試算されています。あわせて2026年度提出分から、省エネ法に基づく電力消費量やPUEの報告が求められる枠組みが動き始めました。
つまり受配電設備の導体損失が「盤が熱くなるかどうか」だけでなく、施設全体の効率指標として数字に残るようになります。母線の断面積を1ランク上げる判断が以前より通りやすくなっている背景がここにあります。
要点:低圧配線は原則2%(構内変圧器供給の幹線は3%)以下。直流大電流系では効率から逆算した独自の上限を持つ。
交流ではリアクタンスも効く(大断面ほど無視できない)
交流の電圧降下は抵抗だけでは決まりません。大断面のブスバーでは、リアクタンスによる電圧降下が抵抗ぶんを上回ることがあります。断面積を増やしても、リアクタンスはほとんど下がらないためです。
R:1mあたり抵抗 (Ω/m) X:1mあたりリアクタンス (Ω/m) θ:力率角
リアクタンスは導体の配置(相間距離)で決まり、1mあたりの目安は次式で概算できます。
D:相間距離 (m) GMR ≒ 0.2235 ×(板厚 + 幅)
相間距離とリアクタンスの目安(10×80mm・60Hz)
| 相間距離 D | リアクタンス X | 抵抗Rとの比(70℃) |
|---|---|---|
| 100 mm | 約 0.12 mΩ/m | 約 4.7 倍 |
| 150 mm | 約 0.15 mΩ/m | 約 5.9 倍 |
| 300 mm | 約 0.20 mΩ/m | 約 7.8 倍 |
相間距離とリアクタンスの目安(10×80mm・60Hz)
相間距離 100mm
X 約0.12mΩ/m(抵抗の約4.7倍)
相間距離 150mm
X 約0.15mΩ/m(抵抗の約5.9倍)
相間距離 300mm
X 約0.20mΩ/m(抵抗の約7.8倍)
50Hzでは上表の約0.83倍です。10×80mm(800mm²)の70℃抵抗は0.0258mΩ/mなのでリアクタンスは抵抗の5〜8倍。ただし寄与は力率で重み付けされます。例2で確かめます。
例2にリアクタンスを加えた再計算(1000A / 40m / 力率0.9)
- 抵抗ぶん R·cosθ = 1.03mΩ × 0.9 = 0.93 mΩ
- リアクタンスぶん X·sinθ = (0.15mΩ/m × 40m) × 0.436 = 2.62 mΩ
- 合計 e = √3 × 1000 × 3.55mΩ = 約6.1 V(約1.46%)
抵抗だけの1.78V(0.42%)に対し、リアクタンスを含めると6.1V(1.46%)で約3.4倍。長尺の交流母線を抵抗だけで計算すると大幅に見誤ります。
コツ:リアクタンスを下げたいなら「相間を詰める」
リアクタンスは相間距離の対数で効くため、導体を近づけるほど下がります。ラミネート(積層)ブスバーでは相間が数mmまで縮まり1桁小さくなります。ただし相間を詰めるほど絶縁距離と短絡電磁力の検討は厳しくなります。
注意:リアクタンスの目安値をそのまま設計に使わない
上表は代表的な配置での概算です。実際の値は配列(水平・垂直)、枚数、相順、鉄板との距離で変わるため、確定段階では実配置での計算か実測データを使ってください。
接続部の電圧降下は見落としやすい
ブスバーの電圧降下には、母材の抵抗に加えてボルト締結部の接触抵抗が乗ります。良好な接続部の抵抗は同じ長さの母材と同程度以下が目安で、これを大きく超えるなら施工か表面状態に問題があります。
接続部が電圧降下に効く仕組み
母材 接続部 母材 接続部 母材 ──────┤▓▓▓▓├──────┤▓▓▓▓├────── R1 Rc1 R2 Rc2 R3 電圧降下 = I ×( R1 + Rc1 + R2 + Rc2 + R3 ) → Rc だけが経年で増え、その1点が局所発熱する
母材の抵抗 R は以後変わりませんが、接触抵抗 Rc は経年で増えます。運用中に電圧降下が増えたなら、疑うのは接続部です。
Rcを下げる
- 十分な重ね代(接触面積)
- 規定トルクでの締結と締結力の維持
- 錫・銀めっきによる酸化皮膜の抑制
Rcを上げる
- 締結不足・オーバートルクによる変形
- 表面の酸化・硫化・汚れ
- 熱サイクルによるボルトの緩み
接続部を減らすこと自体も対策になります。曲げ加工で1本の導体として通せば、電圧降下も将来の劣化リスクも同時に下がります。当社の曲げ・穴あけ・めっきの対応範囲は加工技術にまとめています。
電圧降下を減らす5つの手段
手段は5つあり、効果が大きい順に「断面積を増やす」「経路を短くする」「相間を詰める(交流)」「接続部を減らす」「導体温度を下げる」です。どれも設計段階なら安く、製作後の変更は高くつきます。
電圧降下を減らす手順(検討順)
- ① 断面積を増やす(電流密度を下げる) — 電圧降下は電流密度に正比例する。2A/mm²を1.5A/mm²にすれば降下は25%減る。増やす順序は「幅 → 枚数(並列) → 板厚」。交流では表皮効果のため板厚を増やしても期待どおりに抵抗が下がらない
- ② 経路を短くする — 盤レイアウトで母線長を詰める。長さに正比例して効く
- ③ 相間を詰める・積層する(交流のみ) — リアクタンスを下げる。長尺母線では①より効く
- ④ 接続部を減らす — 曲げ加工で一体化し、締結箇所そのものを減らす
- ⑤ 導体温度を下げる — 70℃→50℃で抵抗は約7%下がる。換気・配置・離隔の見直し
注意:断面積を増やすと材料費・重量・加工性がすべて動く
断面積を1.5倍にすれば材料費もおおむね1.5倍、板厚が増えれば曲げRやスプリングバックも変わります。電圧降下の目標値と材料費・重量・加工性のバランスは、設計初期に一緒に決めるのが結局いちばん安く済みます。
よくあるご質問
ブスバーの電圧降下はどう計算しますか
電圧降下 e は、銅の抵抗率 ρ(20℃で約0.0172 Ω·mm²/m)× 導体長さ L(m)× 電流 I(A)÷ 断面積 A(mm²)に電気方式の係数を掛けて求めます。直流と単相2線式は往復ぶんで2倍、三相3線式は線間電圧で見るため√3倍です。導体温度70℃で計算する場合は ρ を約0.0206 に読み替えます。
盤内の短い母線でも電圧降下を計算する必要がありますか
電圧の「率」としてはほぼ問題になりませんが、損失(発熱)を把握するために計算する価値があります。三相3線420V・2000A・母線長6m・1相2000mm²なら電圧降下は約0.21V(0.05%)にすぎませんが、導体で失われる電力は約740Wに達します。盤内温度上昇と換気設計に直結するため、W単位での確認をおすすめします。
電圧降下の許容値は何%ですか
内線規程1310-1では、低圧配線の電圧降下は幹線・分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下が原則で、電気使用場所内の変圧器から供給される幹線は3%以下まで認められています。こう長が60mを超える場合は長さに応じて緩和されます(120m以下で5%など)。数値は改定されるため、設計時に有効な版を確認してください。
交流と直流でブスバーの電圧降下の計算式は違いますか
違います。直流は抵抗だけで決まりますが、交流では抵抗に加えてリアクタンスが寄与し、さらに表皮効果で実効抵抗も増えます。断面積が大きく距離の長い交流母線ではリアクタンスぶんが抵抗ぶんを上回ることがあり、抵抗だけで計算すると実際の3倍以上小さく見積もる場合があります。
銅とアルミではブスバーの電圧降下がどれくらい違いますか
同じ断面積・同じ電流であれば、アルミの電圧降下は銅の約1.6倍です(アルミの導電率が銅の約61%のため)。同じ電圧降下に抑えるには断面積を約1.6倍にする必要があり、重量は銅の約半分に収まる一方で盤内の体積は大きくなります。スペース制約のある盤内母線で銅が選ばれるのは、この体積効率が理由です。
設計値を詰める段階では、狙う電流値・母線長・盤内の寸法制約をあわせてご相談ください。断面の取り方や接続部の減らし方まで、製作側の視点でご提案します。ブスバーの役割や銅を使う理由はブスバーとはもご覧ください。
