加工技術

銅ブスバーの曲げ展開長の計算方法|伸び値と中立面の考え方

銅ブスバーの展開長(曲げる前の材料の長さ)は、「外側寸法の合計 − 伸び値」で求めます。伸び値は板厚と内Rから計算できますが、中立面の位置を表す係数(λ・K係数)の取り方で結果が0.5〜1mm 変わるため、最終的には実測で確定させるのが実務です。この記事では、外側寸法加算法と中立面基準法の使い分け、90°と45°の計算例、板厚別の伸び値の目安、そして図面にどう書けば手戻りが起きないかを、数値つきで整理します。

銅ブスバー
曲げ加工
展開長
伸び値
中立面
K係数
曲げR
図面指示

展開長とは何か(なぜ足し算だけでは合わないのか)

展開長とは、曲げ加工をする前の平らな状態での材料の長さのことです。曲げた後の外側寸法をそのまま足し合わせると、必ず実際より長くなります。曲げ部では材料の外側が伸び、内側が縮むため、板の中ほどにある「伸びも縮みもしない面(中立面)」の長さが、曲げ前の材料長に対応するからです。

この差を伸び値(伸び補正値)と呼びます。板厚6mm・内R6mm のL字を90°に曲げる場合、伸び値はおよそ11mm あります。つまり外側寸法を足しただけの長さで材料を切ると、11mm 長い部品ができてしまいます。ブスバーは相手側の端子とボルトで合わせる部品なので、この11mm はそのまま組付け不良になります。

曲げ部で起きていること

     曲げ外側 … 引き伸ばされる(長くなる)
   ───────────────
   ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─   中立面 … 長さが変わらない
   ───────────────
     曲げ内側 … 押し縮められる(短くなる)

   中立面の長さ = 曲げ前の材料の長さ

要点:展開長は中立面の長さで決まる。外側寸法の単純な足し算では必ず長すぎる。

展開長の基本式 — 外側寸法加算法

展開長は「外側寸法A + 外側寸法B − 伸び値α」で求めます。これが板金・ブスバー加工で最も広く使われている外側寸法加算法です。ここでいう外側寸法とは、曲げの角を延長して交わる点(仮想交点)までの、外側の面に沿った長さを指します。

展開長 L = A + B − α   (A・B:仮想交点までの外側寸法、α:伸び値)

伸び値αそのものは、板厚 t・内側の曲げ半径 R・曲げ角度から次のように求められます。90°曲げの場合の式は次のとおりです。

α = 2 × (R + t) − (π ÷ 2) × (R + λt)

前半の「2 × (R + t)」は、仮想交点から曲げ部の外側をぐるりと回った分の長さ。後半の「(π ÷ 2) × (R + λt)」は、中立面が描く円弧の実際の長さです。この差が、曲げによって余分に見えている量、つまり伸び値になります。

コツ:曲げが複数ある場合は伸び値も本数分

曲げが2か所あるコの字なら、伸び値も2か所分を引きます。3辺の外側寸法を A・B・C とすると、展開長は A + B + C − α₁ − α₂ です。曲げごとに内Rや角度が違えば、伸び値もそれぞれ別に計算します。曲げ本数が多い部品ほど、伸び値の見積り誤差が累積するため、実測値の精度が効いてきます。

要点:展開長 = 外側寸法の合計 − 伸び値。伸び値は曲げの数だけ引く。

中立面はどこにあるか(λ・K係数の意味)

中立面は板厚のちょうど真ん中ではなく、曲げ内側に寄っています。その位置を表すのが λ(ラムダ)、あるいは K係数と呼ばれる値です。内側の面から中立面までの距離を板厚で割った比率で、板厚の中央なら λ = 0.5、内側に寄るほど小さくなります。

λ が0.5より小さくなる理由は、曲げ外側の引張と内側の圧縮が対称ではないためです。内R が板厚に対して小さいほど λ は小さく(内側寄りに)なり、内R が大きいほど 0.5 に近づきます。実務では 0.33〜0.5 程度の範囲が使われ、材質・板厚・曲げ方法(V曲げか、金型による押さえ曲げか)によっても変わります。

λ(K係数)の違いで伸び値がどれだけ変わるか(板厚5mm・内R5mm・90°)

λ の値 中立面の円弧長 伸び値 α 展開長への影響
0.33(内側寄り) 10.45mm 9.55mm 基準
0.40 11.00mm 9.00mm +0.55mm 長くなる
0.50(板厚中央) 11.78mm 8.22mm +1.33mm 長くなる

λ(K係数)の違いで伸び値がどれだけ変わるか(板厚5mm・内R5mm・90°)

λ = 0.33(内側寄り)

円弧長 10.45mm / 伸び値 9.55mm(基準)

λ = 0.40

円弧長 11.00mm / 伸び値 9.00mm(展開長 +0.55mm)

λ = 0.50(板厚中央)

円弧長 11.78mm / 伸び値 8.22mm(展開長 +1.33mm)

注意:λ の仮定だけで量産に入らない

上の表のとおり、λ を 0.33 と見るか 0.5 と見るかだけで、曲げ1か所あたり 1.3mm 以上の差が出ます。曲げが3か所ある部品なら4mm 近い誤差になり、ボルト穴のピッチはまず合いません。計算値は初品を作るための出発点であり、量産の展開値は実測で確定させるのが原則です。

要点:中立面は板厚中央より内側。λ の取り方1つで曲げ1か所あたり1mm 以上ずれる。

板厚別の伸び値を計算してみる(90°・内R=板厚)

内R を板厚と同じにした90°曲げの場合、伸び値はおおむね板厚の1.8倍前後になります。λ = 0.4 として計算した値を板厚別に並べると、次のようになります。ブスバーでよく使う板厚域をカバーしています。

板厚別の伸び値(90°曲げ・内R = 板厚・λ = 0.4 で計算)

板厚 t 内R 外側の回り込み 2(R+t) 中立面の円弧長 伸び値 α
3mm 3mm 12.00mm 6.60mm 5.40mm
5mm 5mm 20.00mm 11.00mm 9.00mm
6mm 6mm 24.00mm 13.19mm 10.81mm
8mm 8mm 32.00mm 17.59mm 14.41mm
10mm 10mm 40.00mm 21.99mm 18.01mm

板厚別の伸び値(90°曲げ・内R = 板厚・λ = 0.4 で計算)

板厚 3mm / 内R 3mm

伸び値 5.40mm(外側の回り込み 12.00mm − 円弧長 6.60mm)

板厚 5mm / 内R 5mm

伸び値 9.00mm(外側の回り込み 20.00mm − 円弧長 11.00mm)

板厚 6mm / 内R 6mm

伸び値 10.81mm(外側の回り込み 24.00mm − 円弧長 13.19mm)

板厚 8mm / 内R 8mm

伸び値 14.41mm(外側の回り込み 32.00mm − 円弧長 17.59mm)

板厚 10mm / 内R 10mm

伸び値 18.01mm(外側の回り込み 40.00mm − 円弧長 21.99mm)

計算例:板厚6mm のL字ブスバー

外側寸法 A = 200mm、B = 120mm、板厚 6mm、内R 6mm、90°曲げの場合。
展開長 L = 200 + 120 − 10.81 = 309.19mm となり、実務では切断代を見て 309mm 前後で材料を取ります。単純に 200 + 120 = 320mm で切ると、約11mm 長い部品になります。

この表は内R が板厚と等しいという条件での値です。内R を板厚より大きく取れば伸び値は小さくなり、小さく取れば大きくなります。内R を変えたら伸び値も計算し直す、と覚えておいてください。

要点:内R = 板厚の90°曲げなら、伸び値は板厚の約1.8倍が目安。

90°以外の角度をどう計算するか

90°以外の角度では、外側の回り込み量に tan(θ/2) を掛けて計算します。θ は曲げ角(直線からの振り角)です。90°なら tan45° = 1 なので、前節の式と一致します。

α = 2 × (R + t) × tan(θ ÷ 2) − (θ ÷ 180) × π × (R + λt)

板厚5mm・内R5mm・λ0.4 で角度を変えて計算すると、次のようになります。

曲げ角度と伸び値の関係(板厚5mm・内R5mm・λ = 0.4)

曲げ角 θ 外側の回り込み 中立面の円弧長 伸び値 α
30° 5.36mm 3.67mm 1.69mm
45° 8.28mm 5.50mm 2.79mm
60° 11.55mm 7.33mm 4.22mm
90° 20.00mm 11.00mm 9.00mm

曲げ角度と伸び値の関係(板厚5mm・内R5mm・λ = 0.4)

曲げ角 30°

伸び値 1.69mm(回り込み 5.36mm − 円弧長 3.67mm)

曲げ角 45°

伸び値 2.79mm(回り込み 8.28mm − 円弧長 5.50mm)

曲げ角 60°

伸び値 4.22mm(回り込み 11.55mm − 円弧長 7.33mm)

曲げ角 90°

伸び値 9.00mm(回り込み 20.00mm − 円弧長 11.00mm)

角度が浅いほど伸び値は急速に小さくなります。30°曲げの伸び値は90°曲げの2割程度しかありません。逆に言えば、浅い角度の曲げでは展開長の計算誤差が寸法に与える影響も小さく、角度精度そのものの方が問題になりやすい、ということでもあります。

注意:角度の呼び方が食い違いやすい

「45°の曲げ」と言ったとき、直線から45°振ることを指す場合と、板と板のなす開き角が45°(=135°振る)ことを指す場合があります。計算式のθは振り角です。図面のやり取りでも同じ食い違いが起きるので、角度は必ず図示し、寸法線でどちらの角かを示してください。

要点:θは振り角。90°以外は tan(θ/2) を掛ける。浅い角度ほど伸び値は小さい。

外側寸法加算法と中立面基準法の使い分け

内R が板厚の5倍未満なら外側寸法加算法、5倍以上なら中立面基準法を使うのが一般的な目安です。板金加工の実務でもこの切り分けが使われています。

外側寸法加算法(内R < 板厚×5)

  • 外側寸法を足して伸び値を引く
  • ブスバーの曲げはほぼこちら
  • 図面の寸法(外側基準)をそのまま使える
  • 伸び値を実測値で持てば精度が高い

中立面基準法(内R ≧ 板厚×5)

  • 直線部 + 中立面の円弧長を足し上げる
  • 大きな R の緩い曲げに向く
  • 伸び値という補正を使わない
  • λ の精度がそのまま結果に効く

銅ブスバーの曲げは、盤内の納まりの都合から内R を板厚と同程度〜数倍に取ることが多いため、実務上はほぼ外側寸法加算法で計算します。大きな R の緩い曲げ(たとえば板厚6mm に対して内R 40mm など)を指示された場合に、中立面基準法へ切り替えます。

要点:内R が板厚の5倍未満なら外側寸法加算法。ブスバーはほぼこちら。

銅ならではの注意点(質別・厚板・圧延方向)

同じ寸法・同じ内Rでも、質別が変われば展開長の実測値は変わります。軟質材(O)と半硬質材(1/2H)では曲げ部の変形の仕方が異なり、中立面の位置も一致しません。展開値を実績として蓄えるときは、「材質・質別・板厚・内R・曲げ方法」の5つをセットで記録する必要があります。

展開値を記録するときの条件セット

記録する条件 変わると展開長は
材質 C1100 / C1020 わずかに変わる
質別 O / 1/2H 明確に変わる
板厚 3 / 5 / 6 / 8 / 10mm 大きく変わる
内R 板厚と同等 / 2倍 大きく変わる
曲げ方法 V曲げ / 型曲げ 明確に変わる

展開値を記録するときの条件セット

材質(C1100 / C1020)

展開長への影響:わずかに変わる

質別(O / 1/2H)

展開長への影響:明確に変わる

板厚(3 / 5 / 6 / 8 / 10mm)

展開長への影響:大きく変わる

内R(板厚と同等 / 2倍)

展開長への影響:大きく変わる

曲げ方法(V曲げ / 型曲げ)

展開長への影響:明確に変わる

注意:厚板 × 小R の組み合わせ

タフピッチ銅(C1100)は微量の酸素を含み、その酸化物が結晶粒界に存在します。板厚が厚く内R が小さい曲げでは、曲げ外側に微細な割れが出ることがあります。展開長が合っていても、割れてしまえば製品になりません。厚板を小さいRで曲げる設計は、展開長の計算より前に、その内Rで曲げられるかどうかの確認が先です。当社の対応範囲は加工技術のページにまとめています。

また、圧延材である銅板には圧延方向があり、曲げ線を圧延方向に対してどう取るかで割れやすさが変わります。大きな板から複数本を取る場合、部品ごとに曲げ線と圧延方向の関係が変わらないよう板取りを揃えることも、寸法と品質を安定させる要素です。

要点:展開値は「材質・質別・板厚・内R・曲げ方法」のセットで記録する。

伸び値は実測で確定させる

計算で出した伸び値は初品を作るための出発点であり、量産の展開値は実測で決めます。手順は次のとおりです。

伸び値を実測で確定させる手順

  • 1. 計算値で試験片を切る…本番と同じ材質・質別・板厚で、余裕をみた長さの短冊を用意する
  • 2. 本番と同じ条件で曲げる…同じ金型・同じ内R・同じ曲げ角度・同じ加工速度で曲げる
  • 3. 曲げ後の外側寸法を測る…A外・B外を測定し、切断前の長さと比較する
  • 4. 実測の伸び値を出す…α実測 =(A外 + B外)− 切断前の長さ
  • 5. 条件とセットで記録する…材質・質別・板厚・内R・曲げ方法とあわせて残す

コツ:曲げ順を決めてから実測する

曲げが複数ある部品では、どの曲げから加工するか(曲げ順)によって、後工程の突き当て位置や材料の逃げ方が変わり、実測の伸び値もわずかに変わります。試作の段階で曲げ順を決め、量産でも同じ順で加工すると、ロット間のばらつきが小さくなります。

2026年時点では、AIデータセンター向けの受配電設備や蓄電システムの需要拡大を背景に、大電流化にともなう厚板・大断面のブスバーの引き合いが増えています。板厚が増えると伸び値の絶対量も大きくなり(板厚10mm・内R10mm で約18mm)、計算値と実測値のわずかな差が寸法に効いてきます。厚板の曲げでは、実測による展開値の管理がいっそう重要になります。

要点:計算値で初品を作り、実測で展開値を確定。条件とセットで記録して量産へ。

図面にはどう書けばよいか

発注時に展開寸法を計算して書く必要はありません。仕上がり寸法・曲げ角度・内R・寸法の測定基準の4点を書いていただければ十分です。展開長は加工側が自社の実測値で計算した方が精度が出ます。

曲げ品の図面に書いていただきたい4点

  • 仕上がり寸法…展開寸法ではなく、曲げた後の完成寸法
  • 曲げ角度…振り角か開き角かが分かるよう図示する
  • 内側の曲げ半径(内R)…無指示だと加工側の標準Rになり、ロット間で変わる可能性がある
  • 寸法の測定基準…内寸/外寸/仮想交点のいずれか。注記に一行入れる

展開寸法で支給される場合

お客様側で展開計算をされた寸法で発注いただくこともあります。その場合は「この寸法は展開寸法である」と明記し、あわせて仕上がり寸法も併記してください。展開寸法だけだと、当社の実測値と前提が違ったときに検算ができず、仕上がりが図面意図とずれても気づけません。両方あれば、差異を発見した時点でご相談できます。詳しい図面の書き方は品質管理の考え方ともあわせてご確認ください。

要点:仕上がり寸法・角度・内R・測定基準の4点。展開寸法は加工側に任せてよい。

よくあるご質問

ブスバーの展開長はどうやって計算しますか

仮想交点までの外側寸法を足し合わせ、そこから伸び値を引いて求めます。90°曲げの伸び値は「2×(内R+板厚) −(π÷2)×(内R+λ×板厚)」で計算でき、λ は中立面の位置を表す係数で実務では0.33〜0.5程度が使われます。

板厚6mmの銅ブスバーを90°に曲げると、展開長はどれくらい短くなりますか

内Rを板厚と同じ6mm、λを0.4として計算すると、伸び値は約10.8mm です。外側寸法の合計から約10.8mm を引いた長さが展開長になります。内Rを大きく取れば伸び値は小さくなるため、内Rを変えたら計算し直してください。

K係数(λ)はいくつを使えばよいですか

実務では0.33〜0.5の範囲が使われ、内Rが板厚に対して小さいほど小さい値(内側寄り)になります。ただし板厚5mm・内R5mmの90°曲げでは、0.33と0.5で伸び値が約1.3mm 変わるため、量産では計算値ではなく実測で確定させることが前提です。

展開寸法を図面に書いて発注した方がよいですか

仕上がり寸法での指示をおすすめします。展開長は板厚・内R・質別・曲げ方法によって変わり、加工側が自社の実測値で計算した方が精度が出ます。展開寸法で発注される場合は、その旨を明記したうえで仕上がり寸法も併記してください。

曲げが複数ある部品の展開長はどう計算しますか

各辺の外側寸法をすべて足し、曲げの数だけ伸び値を引きます。3辺のコの字なら「A+B+C−α₁−α₂」です。曲げごとに内Rや角度が違えば伸び値も個別に計算し、曲げ本数が多い部品ほど実測値の精度が結果に効いてきます。

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