加工技術

銅ブスバーの絶縁方法|粉体塗装と熱収縮チューブの違いと選び方

銅ブスバーの絶縁方法は、大きくエポキシ粉体塗装熱収縮チューブの2つに分かれます。結論から言うと、直線に近い単純形状で数量が少なければ熱収縮チューブ、曲げや分岐のある立体形状・高電圧・量産なら粉体塗装が基本の判断軸です。この記事では、両者の違いを膜厚・耐電圧・形状追従性・コストで比較し、チューブサイズの選び方、マスキング指示、図面の書き方までを数値と手順で整理します。

銅ブスバー
絶縁
粉体塗装
熱収縮チューブ
エポキシ
配電盤
マスキング

銅ブスバーの絶縁方法はどちらを選べばよいか

銅ブスバーの絶縁は、形状が単純で本数が少ないなら熱収縮チューブ、曲げ・ねじれ・分岐がある立体形状や、絶縁距離を詰めて盤を小型化したい場合はエポキシ粉体塗装を選ぶのが基本です。判断を分けているのは価格差よりも「形状に密着して膜厚が安定するか」という一点です。

絶縁の目的は感電防止だけではありません。相間・対地に必要だった隙間を被覆で縮められるため、絶縁方法の選定はそのまま盤のサイズとコストに跳ね返ります

熱収縮チューブが向く条件

  • 直線・単純な曲げのみの形状
  • 試作・小ロット、短納期
  • 低圧盤(600V級)が中心
  • 相ごとに色を分けたい
  • 現地で被覆をやり直す可能性がある

粉体塗装が向く条件

  • 三次元の曲げ・分岐・積層がある
  • 膜厚を均一に管理したい
  • 相間距離を詰めて小型化したい
  • 振動・温度サイクルが厳しい
  • 量産で品質を揃えたい

2026年の状況:絶縁材料は「高電圧化」に合わせて更新が進んでいる

2026年3月には、比較トラッキング指数(CTI)900Vをうたう電気絶縁用エポキシ粉体塗料の開発が国内材料メーカーから公表されました。従来の粉体塗料のCTIは一般に300〜600V程度とされており、EVの800V化やeVTOL、大規模蓄電池システムなど1kV級の用途拡大に対応する動きです。データセンターやEV急速充電インフラの大電流化と合わせて、「絶縁は既存品でよい」と決め打ちせず、その年の材料仕様を確認してから選定することが2026年時点では重要になっています。

形状の複雑さ・電圧・数量の3つで、絶縁方法はほぼ決まる。

粉体塗装と熱収縮チューブの違いは何か

両者の決定的な違いは「被覆のでき方」です。熱収縮チューブは筒状の材料を熱で縮めて密着させるのに対し、エポキシ粉体塗装は静電気で粉体塗料を付着させて焼き付けるため、角部や曲げの内外まで同じ工程で膜がつくという差が出ます。

粉体塗装とは、静電塗装や流動浸漬によって粉末状の塗料を導体表面に付着させ、加熱炉で溶融・硬化させて絶縁被膜をつくる表面処理です。溶剤を使わないため厚膜が得やすく、下地の銅と反応して強い密着が得られます。

絶縁方法の比較(一般的な傾向)

比較項目 熱収縮チューブ エポキシ粉体塗装
形状追従性 直線は良好/複雑形状はしわ・浮きが出やすい 三次元形状でも均一に付く
膜厚の安定性 収縮量により部位差が出やすい 狙いの膜厚に管理しやすい
初期費用 低い(治具不要) マスキング治具の準備が必要
量産単価 本数に比例して増える 数量が増えるほど有利
相の色分け 色付きチューブで容易 塗料色の切替が必要
やり直し 切って付け替え可能 剥離してから再塗装
納期 短い 焼付・マスキング工程の分かかる
向く用途 低圧盤・試作・単純形状 高電圧・積層・量産・振動環境

絶縁方法の比較(一般的な傾向)

形状追従性

チューブ:直線は良好、複雑形状はしわ・浮き / 粉体塗装:三次元形状でも均一

膜厚の安定性

チューブ:部位差が出やすい / 粉体塗装:狙いの膜厚に管理しやすい

初期費用

チューブ:低い(治具不要) / 粉体塗装:マスキング治具が必要

量産単価

チューブ:本数に比例 / 粉体塗装:数量が増えるほど有利

相の色分け

チューブ:色付き品で容易 / 粉体塗装:塗料色の切替が必要

やり直し

チューブ:切って付け替え可 / 粉体塗装:剥離して再塗装

納期

チューブ:短い / 粉体塗装:焼付・マスキング工程の分かかる

向く用途

チューブ:低圧盤・試作・単純形状 / 粉体塗装:高電圧・積層・量産・振動環境

数量に対する1本あたりコストのイメージ(相対値・傾向を示すもの)

チューブ 10本

塗装 10本

チューブ 1000本

塗装 1000本
より低

チューブは1本ごとに材料と作業が積み上がりますが、粉体塗装は段取りが済めば数量効果が効きます。試作でチューブ、量産で塗装という進め方が現実的です。ただし切り替えで被覆の外形寸法が変わるため、盤側のクリアランスは量産側の仕様で押さえておきます。

単純形状・少量はチューブ、複雑形状・量産は塗装が有利。

熱収縮チューブはどんなときに向くか・サイズの選び方

熱収縮チューブは、直線や単純な曲げのブスバーを、治具なしで短納期に絶縁したいときに向きます。サイズ選定の原則は、「収縮前の内径が対象物の最大外形より大きく、収縮後の内径が対象物の最小外形より小さい」ものを選ぶことです。

平角の銅ブスバーは円ではないため、チューブ径との対応を周長で考えます。断面の周長を円に置き換えたときの直径が、目安となる下限です。

必要な収縮前内径 ≧ 2 ×(幅 W + 厚み T)÷ π

たとえば幅50mm × 厚み5mmのブスバーであれば、周長は 2×(50+5)=110mm、これを円に置き換えると 110 ÷ 3.14 ≒ 35mm。したがって収縮前内径が35mmを十分上回るチューブを選び、収縮後内径が対象より小さくなることを確認します。角部でチューブが張るため、実際にはこの計算値より一回り余裕を見るのが通例です。

平角ブスバー断面と、周長から求めた収縮前内径の目安

幅 × 厚み 断面積 周長 2(W+T) 換算径の目安
20 × 3 mm 60 mm² 46 mm 約15 mm
30 × 5 mm 150 mm² 70 mm 約23 mm
40 × 5 mm 200 mm² 90 mm 約29 mm
50 × 5 mm 250 mm² 110 mm 約35 mm
60 × 10 mm 600 mm² 140 mm 約45 mm
100 × 10 mm 1000 mm² 220 mm 約70 mm

平角ブスバー断面と、周長から求めた収縮前内径の目安

20 × 3 mm(断面積 60mm² / 周長 46mm)

換算径の目安 約15mm

30 × 5 mm(断面積 150mm² / 周長 70mm)

換算径の目安 約23mm

40 × 5 mm(断面積 200mm² / 周長 90mm)

換算径の目安 約29mm

50 × 5 mm(断面積 250mm² / 周長 110mm)

換算径の目安 約35mm

60 × 10 mm(断面積 600mm² / 周長 140mm)

換算径の目安 約45mm

100 × 10 mm(断面積 1000mm² / 周長 220mm)

換算径の目安 約70mm

上表の換算径は幾何計算による目安です。実際の選定はメーカーの選定表と収縮率(2:1、3:1など)に従ってください。

注意:チューブは「使用温度」と「電圧仕様」を必ず確認する

市販の汎用チューブには連続使用温度 −55〜125℃、耐電圧600V級といった仕様の製品が多くあります。銅ブスバーは通電で温度が上がるため、周囲温度ではなく導体の到達温度で選ぶ必要があります。高圧側には耐電圧と耐トラッキング性が規定されたブスバー用・高圧用を選び、汎用の配線用チューブで代用しないでください。

コツ:曲げ部と端部の2か所が弱点になる

チューブは曲げの外側で薄く伸び、内側でしわになりがちです。曲げRが小さい箇所や分岐部は分割して被せるか、高収縮率品を使うと安定します。端部は、導体の角でチューブが裂けないようバリ取り・面取りを済ませてから被せます。

チューブは周長から径を決め、温度と電圧仕様をカタログで確認する。

エポキシ粉体塗装はどんなときに向くか・膜厚と耐電圧

エポキシ粉体塗装は、三次元に曲がった形状や積層(ラミネート)構造を、均一な膜厚で一括して絶縁したいときに向きます。エポキシ樹脂粉体塗料の絶縁破壊の強さは30〜40kV/mm程度とされており、膜厚を設計変数として扱えるのが大きな特徴です。

被膜の絶縁耐力(目安)= 絶縁破壊の強さ(kV/mm)× 膜厚(mm)

絶縁破壊の強さを30kV/mmとすると、膜厚0.3mmで理論上は約9kV、0.5mmで約15kVという計算になります。ただしこの値をそのまま設計値にしてはいけません。実際の被膜は角部で膜厚が薄くなりやすく、経年・温度・湿度・汚損によって性能が下がるため、必要な耐電圧に対して十分な安全率を取り、実機での試験値で確認するのが前提です。

膜厚と理論上の絶縁耐力(絶縁破壊の強さ30kV/mmで換算した目安)

膜厚 理論値(30kV/mm換算) 位置づけ
0.2 mm 約6 kV 薄膜。低圧用途・省スペース重視
0.3 mm 約9 kV 低圧盤で一般的な狙い値
0.4 mm 約12 kV 余裕を持たせたい低圧・準高圧
0.5 mm 約15 kV 厚膜。高電圧・過酷環境
1.0 mm 約30 kV 流動浸漬などによる厚膜仕様

膜厚と理論上の絶縁耐力(30kV/mm換算の目安)

膜厚 0.2mm

約6kV — 薄膜。低圧用途・省スペース重視

膜厚 0.3mm

約9kV — 低圧盤で一般的な狙い値

膜厚 0.4mm

約12kV — 余裕を持たせたい低圧・準高圧

膜厚 0.5mm

約15kV — 厚膜。高電圧・過酷環境

膜厚 1.0mm

約30kV — 流動浸漬などによる厚膜仕様

注意:表の値は「材料の潜在能力」であって設計耐圧ではない

絶縁破壊の強さは、平滑な試験片を規定条件で測った値です。実際のブスバーではエッジ部の膜厚低下、ピンホール、汚損、結露、部分放電の影響を受けます。要求耐電圧に対して大きな安全率を取り、実際の製品形状で耐電圧試験を行って確認してください。表の数値だけを根拠に膜厚を決めないことが重要です。

耐トラッキング性(CTI)も見る

沿面での炭化導電路(トラッキング)に対する強さは、CTI(比較トラッキング指数)で表されます。従来のエポキシ粉体塗料のCTIは一般に300〜600V程度とされてきましたが、2026年にはCTI 900Vをうたう材料の開発が公表されました。EVの800V化や大規模蓄電池のように、沿面距離を詰めながら電圧を上げる用途では、絶縁破壊の強さだけでなくCTIも選定条件に入れるのが2026年時点の考え方です。

前提:粉体塗装の前工程が仕上がりを決める

粉体塗装の密着性と膜厚均一性は、塗る前の状態でほぼ決まります。バリ・鋭利なエッジは膜厚が乗らず弱点になるため、面取りとバリ取りを済ませておくこと。油分・酸化膜が残ると密着不良や膨れの原因になるため、脱脂と表面調整も欠かせません。当社では曲げ・穴あけ・端面処理までを社内で行い、絶縁工程に渡す前の状態を揃えています(加工技術)。

粉体塗装は膜厚で耐圧を設計できるが、安全率と実機試験が前提。

絶縁したブスバーの締結部はどう処理するか

絶縁したブスバーでも、ボルトで締結して通電する面は絶縁してはいけません。そのため締結部・接触面は、塗装ならマスキングして塗料を乗せず、チューブなら被覆しない範囲として残します。この「絶縁しない範囲」の指定こそが、図面で最も間違いが起きやすい部分です。

絶縁範囲と非絶縁範囲の考え方

        ←マスキング→          絶縁被覆          ←マスキング→
   ┌──────────┬──────────────────────────┬──────────┐
   │  ○  ○    │                          │    ○  ○  │
   └──────────┴──────────────────────────┴──────────┘
     接触面+穴周り        絶縁する区間          接触面+穴周り
     (通電するので絶縁しない)                (通電するので絶縁しない)

   ・非絶縁範囲は「端から○mm」と数値で指示する
   ・穴の内面まで絶縁しないのか、するのかを明記する
   ・非絶縁部は酸化するため、めっきの要否をあわせて指定する
  

締結部で決めておくこと

  • 非絶縁範囲の寸法(端面から何mmか)と公差
  • ボルト穴の内面を絶縁するかどうか
  • 非絶縁部の表面処理(銅地のままか、錫めっき・銀めっきか)
  • 座面の平面度が塗膜のはみ出しで損なわれていないか
  • 締結後に露出する充電部をカバーで覆うかどうか

非絶縁部を銅地のまま残すと酸化で接触抵抗が上がり、締結部の発熱につながります。接触面に錫めっきや銀めっきを施したうえで絶縁被覆をかける組み合わせが有効です(銅ブスバーへのめっき)。

注意:塗膜を座面に噛み込ませない

マスキング境界に塗膜のふくらみ(段差)が残ったまま締結すると、座面が浮いて実接触面積が減り、局所発熱の原因になります。境界は締結座面から十分離すか、締結前に段差を確認してください。締結トルクだけを上げても、噛み込みによる接触不良は解消しません。

絶縁の設計は「どこを絶縁しないか」を数値で決めることから始まる。

絶縁を前提にした図面指示で押さえる5点

絶縁付きブスバーの手戻りは、ほとんどが図面の記載不足から起きます。以下の5点を書いておけば、見積り段階での往復が減り、納期も短くなります。

図面・仕様書に書いておきたい項目

項目 書き方の例 抜けたときに起きること
絶縁方法 エポキシ粉体塗装 / 熱収縮チューブ の指定 見積りの前提が揃わず比較できない
膜厚・厚さ 膜厚 0.3mm 以上(仕上がり) 耐圧が想定と食い違う
非絶縁範囲 両端から40mm、穴内面も非絶縁 通電面が絶縁され導通しない
色・相識別 赤/白/青、または全数同色 現場で相の取り違えが起きる
下地処理 バリ取り・面取り・脱脂、めっき有無 密着不良・膨れ・剥がれ
使用環境 導体到達温度、屋内外、結露の有無 耐熱・耐候の不足

図面・仕様書に書いておきたい項目

絶縁方法

例:エポキシ粉体塗装 / 熱収縮チューブ の指定 → 抜けると見積りの前提が揃わない

膜厚・厚さ

例:膜厚0.3mm以上(仕上がり) → 抜けると耐圧が想定と食い違う

非絶縁範囲

例:両端から40mm、穴内面も非絶縁 → 抜けると通電面が絶縁され導通しない

色・相識別

例:赤/白/青、または全数同色 → 抜けると現場で相の取り違えが起きる

下地処理

例:バリ取り・面取り・脱脂、めっき有無 → 抜けると密着不良・膨れ・剥がれ

使用環境

例:導体到達温度、屋内外、結露の有無 → 抜けると耐熱・耐候が不足する

コツ:工程の順番を先に決めておく

絶縁付きブスバーは「切断 → 穴あけ → 曲げ → バリ取り・面取り → 脱脂 →(めっき)→ 絶縁 → 検査」の順で流れます。曲げは絶縁の前が原則です。絶縁後に曲げると被膜が伸びて薄くなり、割れの原因になります。設計変更で曲げ形状が動く可能性がある場合は、絶縁工程に入る前の段階で寸法を確定させておくと、作り直しの範囲を最小にできます。

当社は名古屋市守山区で、変圧器・配電盤・受配電設備・電池関連向けの銅ブスバー加工を行っています。図面が固まる前でも、想定電流・使用電圧・設置環境をお伝えいただければ絶縁方法から一緒に整理できます(品質管理)。

「絶縁方法・膜厚・非絶縁範囲・色・下地・環境」の6つを書けば手戻りは減る。

よくあるご質問

熱収縮チューブのサイズはどう選べばよいですか

収縮前の内径が対象物の最大外形より大きく、収縮後の内径が対象物の最小外形より小さくなる品番を選びます。平角の銅ブスバーでは、断面の周長 2×(幅+厚み) を円周とみなして π で割った値が必要な内径の目安です。例えば幅50mm×厚み5mmなら約35mmが下限の目安で、角部で張るため実際は一回り余裕を見ます。最終的な選定はメーカーの選定表と収縮率(2:1、3:1など)に従ってください。

銅ブスバーの絶縁は粉体塗装と熱収縮チューブのどちらが優れていますか

用途によって答えが変わるため、一方が常に優れているということはありません。直線に近い単純形状・少量・短納期であれば熱収縮チューブが有利で、三次元の曲げや分岐がある形状、膜厚を均一に管理したい場合、量産で品質を揃えたい場合はエポキシ粉体塗装が有利です。絶縁距離を詰めて盤を小型化したい場合も粉体塗装が向きます。

エポキシ粉体塗装の絶縁耐力はどのくらいですか

エポキシ樹脂粉体塗料の絶縁破壊の強さは30〜40kV/mm程度とされており、膜厚0.3mmなら理論上は約9kV相当になります。ただしこれは平滑な試験片での材料特性であり、実際のブスバーではエッジ部の膜厚低下や汚損・結露の影響を受けます。要求耐電圧に対して十分な安全率を取り、実際の製品形状で耐電圧試験を行って確認してください。

絶縁したブスバーの締結部(ボルト接続部)はどうなりますか

締結して通電する接触面は絶縁しません。粉体塗装ではその範囲をマスキングして塗料を乗せず、熱収縮チューブでは被覆しない範囲として残します。図面には「端面から何mmを非絶縁とするか」「ボルト穴の内面を絶縁するか」を数値で指示してください。非絶縁部は酸化して接触抵抗が上がるため、必要に応じて錫めっきや銀めっきを併用します。

曲げ加工と絶縁はどちらを先に行いますか

曲げ加工が先で、絶縁は後です。絶縁被覆をした後に曲げると、被膜が曲げ外側で伸びて薄くなり、割れや剥がれの原因になります。標準的な流れは「切断 → 穴あけ → 曲げ → バリ取り・面取り → 脱脂 →(めっき)→ 絶縁 → 検査」です。バリや鋭利なエッジが残っていると塗膜が乗らず弱点になるため、絶縁工程の前に必ず処理します。

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