材料・規格

銅ブスバーのJIS規格 H3140|材質・質別・寸法公差の読み方

銅ブスバーの規格を探すと、JIS H 3140、JIS H 3100、盤側のJISなど複数の番号が出てきて迷いがちです。結論から言うと、銅ブスバーそのものを規定しているのは JIS H 3140「銅ブスバー」で、材質・質別・寸法許容差・縁部形状までがここに定められています。この記事では、JIS H 3140:2018 が何を決めていて何を決めていないのかを整理し、図面や注文書でどう指定すれば行き違いが起きないかまでを解説します。

銅ブスバー
JIS H 3140
C1100BB
C1020BB
質別
寸法許容差
タフピッチ銅
無酸素銅

銅ブスバーのJIS規格はどれか

銅ブスバーの材料規格は JIS H 3140「銅ブスバー」です。現在有効な版は2018年版(JIS H 3140:2018)で、2023年10月に見直しのうえ継続が確認されており、2026年時点でもこの版が有効です。配電盤・受配電設備・変圧器で使われる平角の銅導体は、通常この規格に基づいて調達されます。

定義

銅ブスバーとは、電気を大電流で流すために用いる、断面が長方形の展伸加工された銅の導体のことです。電線と違って剛性があり、それ自体が構造材として自立するため、盤内で支持物に固定して配線の代わりに使われます。「バスバー」と表記されることもありますが、同じものを指します。

規格の中で押さえるべき項目は次の5つです。この順で確認すれば、材料の受入判断はほぼ完了します。

JIS H 3140で確認する5項目

  • 種類と記号 — C1020BB か C1100BB か
  • 質別 — O / 1/4H / 1/2H / H のどれか
  • 寸法 — 厚さ・幅・長さと、それぞれの許容差
  • 機械的性質と導電率 — 質別ごとの下限値
  • 縁部の形状と曲がり — 面取りの半径、真直度

材料規格はJIS H 3140:2018の一本。まずここを見る。

JIS H 3140が対象とする寸法の範囲

JIS H 3140は、厚さ2.0mm以上30mm以下、幅300mm以下の銅ブスバーを対象としています。この範囲を外れる寸法は規格の適用外となるため、特注扱いとして材料メーカーや加工会社に個別に確認する必要があります。標準の長さは、指定がない場合5,000mmです。

JIS H 3140:2018 の適用範囲

項目 規定 実務での意味
厚さ 2.0 〜 30 mm 盤内で多いのは3〜10mm。厚物は変圧器・大電流用途
300 mm 以下 実際の流通は100mm以下が中心
長さ 指定がなければ 5,000 mm 定尺から切り出して使う
断面 長方形(縁部は面取り) 角が立ったままではない点に注意

JIS H 3140:2018 の適用範囲

厚さ

2.0〜30mm(盤内で多いのは3〜10mm)

300mm以下(流通の中心は100mm以下)

長さ

指定がなければ5,000mm。定尺から切り出す

断面

長方形。縁部には面取りが規定されている

2026年の材料事情

銅相場は歴史的な高値圏にあり、2026年に入って国内の銅建値はトンあたり200万円を超える水準に達しました。AIデータセンター向けの電力インフラ投資や変圧器需要の増加が背景にあります。規格内の寸法であっても、板厚や幅によって在庫の厚みや納期が変わる時期です。設計初期の段階で、使用予定の寸法が入手しやすいものかどうかを確認しておくと、後工程での差し替えを避けられます。

厚さ2.0〜30mm、幅300mm以下が規格の土俵。外れるものは個別確認。

種類と記号(C1020BB / C1100BB)の違い

JIS H 3140が規定する種類は、無酸素銅の C1020BB とタフピッチ銅の C1100BB の2つです。末尾の「BB」はブスバーを表す製品記号です。どちらも純度の高い銅ですが、酸素を含むかどうかで挙動が変わります。

C1020BB と C1100BB の比較

記号 名称 銅の純度 特徴と用途
C1100BB タフピッチ銅 99.90%以上 導電性・加工性が良い。盤・変圧器の標準材
C1020BB 無酸素銅 99.96%以上 水素ぜい化が起きにくい。ろう付け・高信頼用途

C1020BB と C1100BB の比較

C1100BB / タフピッチ銅 / 純度99.90%以上

導電性と加工性のバランスが良く、配電盤や変圧器で最も多く使われる

C1020BB / 無酸素銅 / 純度99.96%以上

酸素をほぼ含まないため水素ぜい化が起きにくい。ろう付けや高信頼用途向け

水素ぜい化という選定理由

タフピッチ銅は微量の酸素を含みます。この銅を水素を含む雰囲気の中で高温にさらすと、内部の酸素と水素が反応して水蒸気を生じ、結晶粒界に割れが発生することがあります。これが水素ぜい化です。無酸素銅はこの反応が起こらないため、還元性雰囲気での加熱やろう付けを伴う部品ではC1020BBが選ばれます。JIS H 3140にも、C1020に対する水素ぜい化試験(850±25℃での加熱後に割れや粒界分離がないことを確認する)が規定されています。

コツ:通常の盤用途ならC1100BBで足りる

常温でボルト締結する一般的な配電盤・受配電設備のブスバーであれば、水素ぜい化の条件に該当しません。C1020BBは材料費が上がるため、ろう付け・高温での還元雰囲気加熱・真空機器といった明確な理由がある場合に選ぶのが合理的です。理由がないままC1020を指定していないか、一度見直す価値があります。両者の導電率と選定の考え方はブスバーとはのページでも触れています。

迷ったらC1100BB。C1020BBは水素ぜい化を避ける必要があるときに選ぶ。

質別O・1/4H・1/2H・Hの選び方

質別とは、圧延や焼なましによって決まる硬さの区分で、O(焼なまし)・1/4H・1/2H・H(硬質)の4段階が規定されています。硬いほど強度が上がる代わりに伸びが減り、曲げ加工が難しくなります。導電率もわずかに下がります。

質別ごとの機械的性質と導電率(代表値)

質別 引張強さ 伸び 導電率 向いている使い方
O(焼なまし) 195 N/mm² 以上 35%以上 100%IACS以上 曲げが多い、複雑形状
1/4H 215〜275 N/mm² 25%以上 98%IACS以上 曲げと強度の両立
1/2H 245〜315 N/mm² 15%以上 98%IACS以上 直線材、支持間隔が長い
H(硬質) 275 N/mm² 以上 97%IACS以上 曲げない直線導体

質別ごとの機械的性質と導電率(代表値)

O(焼なまし) / 引張強さ195N/mm²以上 / 伸び35%以上

導電率100%IACS以上。曲げが多い形状に向く

1/4H / 引張強さ215〜275N/mm² / 伸び25%以上

導電率98%IACS以上。曲げと強度を両立させたいとき

1/2H / 引張強さ245〜315N/mm² / 伸び15%以上

導電率98%IACS以上。直線材や支持間隔が長い箇所

H(硬質) / 引張強さ275N/mm²以上

導電率97%IACS以上。曲げを伴わない直線導体

注意:上表は代表値です

引張強さ・伸びの規定値は厚さの区分によってさらに細分されており、質別と厚さの組み合わせで数値が変わります。受入検査やミルシートの判定に使う値は、必ず規格本文の該当表で確認してください。この記事の表は、設計時に質別のおおよその位置づけをつかむためのものです。

質別による導電率の下限値(IACS基準)

O
100%

1/4H
98%

1/2H
98%

H
97%

グラフのとおり、質別による導電率の差は最大でも3ポイント程度です。硬いものを選んでも通電性能はほとんど落ちません。質別の選定で本当に効いてくるのは、曲げ加工のしやすさと、支持間隔を長く取れるかどうかという構造面です。

導電率の差は小さい。質別は「曲げるか、曲げないか」で決める。

寸法許容差・縁部形状・曲がりの規定

JIS H 3140は、厚さ・幅・長さの許容差に加えて、縁部の面取り形状と曲がり(真直度)まで規定しています。加工現場で問題になりやすいのは、この寸法許容差の存在を前提に設計されていない図面です。

厚さの許容差(代表値)

厚さ 許容差
2.0 〜 3.2 mm ±0.08 mm 3mm材 → 2.92〜3.08mm
3.2 〜 5.0 mm ±0.10 mm 5mm材 → 4.90〜5.10mm
5.0 〜 8.0 mm ±0.12〜0.13 mm 6mm材 → 約5.87〜6.13mm
8.0 〜 12 mm ±0.15〜0.18 mm 10mm材 → 約9.83〜10.17mm
12 〜 20 mm ±0.20〜0.23 mm 15mm材 → 約14.78〜15.22mm
20 〜 30 mm ±1.2〜1.3% 25mm材 → 約±0.3mm

厚さの許容差(代表値)

厚さ2.0〜3.2mm

±0.08mm(3mm材なら2.92〜3.08mm)

厚さ3.2〜5.0mm

±0.10mm(5mm材なら4.90〜5.10mm)

厚さ5.0〜8.0mm

±0.12〜0.13mm

厚さ8.0〜12mm

±0.15〜0.18mm

厚さ12〜20mm

±0.20〜0.23mm

厚さ20〜30mm

±1.2〜1.3%(比率で規定)

縁部(エッジ)の形状も規格で決まっている

ブスバーの長辺の角は、直角のままではなく面取りされています。JIS H 3140では、丸み面取り・平面取り・フルラウンド(半円状)の形状が規定され、丸み面取りの半径は厚さに応じて次のように定められています。

断面の縁部形状

   丸み面取り          平面取り        フルラウンド
  ╭──────────╮      ╱──────────╲      ╭──────────╮
  │          │      │          │      (          )
  ╰──────────╯      ╲──────────╱      ╰──────────╯
   R0.8〜1.6         幅1.0mm以下      半円状に加工

  厚さ 2.0〜5.0mm  … R0.8 (許容差 ±0.2mm)
  厚さ 5.0〜8.0mm  … R1.2 (許容差 ±0.3mm)
  厚さ 8.0〜30mm   … R1.6 (許容差 ±0.4mm)
  

面取りがあることで、電界集中の緩和、絶縁物の損傷防止、作業時の手切れ防止といった効果が得られます。絶縁チューブをかぶせる設計では、この縁部形状が被覆の損傷しやすさに直結します。また、曲がり(真直度)は「長さ2,000mmにつき3.5mm以下」と規定されています。長い直線導体を使う場合、この程度の曲がりは規格内として許容される点を踏まえた取り付け設計が必要です。

板厚も真直度も公差がある。公差ゼロの前提で図面を描かない。

JIS H 3140が決めていないこと

JIS H 3140は材料の規格であり、許容電流(電流容量)は規定していません。「JISで決まっている許容電流表はありますか」という質問をよくいただきますが、この規格の中にその表はありません。ここを誤解したまま設計を進めると、根拠のない数値を使うことになります。

JIS H 3140が決めていること

  • 種類と記号(C1020BB / C1100BB)
  • 化学成分(銅の純度)
  • 質別と機械的性質
  • 導電率の下限値
  • 寸法と許容差
  • 縁部の形状、曲がり
  • 試験方法(水素ぜい化試験など)

JIS H 3140が決めていないこと

  • 許容電流(電流容量)の値
  • 温度上昇の限度
  • 支持間隔・短絡強度
  • 絶縁距離・離隔距離
  • めっきの種類と膜厚
  • ボルト穴の位置・締付トルク
  • 曲げRなどの加工条件

許容電流は「使い方」で決まる

同じC1100BBの銅バーでも、屋内か屋外か、盤内の密閉度、周囲温度、水平置きか垂直置きか、何枚重ねるかで許容電流は大きく変わります。材料規格に許容電流が書けないのは、材料だけでは決まらないためです。実際の設計では、盤メーカーの設計基準、機器メーカーの資料、あるいは温度上昇試験の結果を根拠にします。断面積からの目安の求め方は、当サイトの許容電流の記事で解説しています。

材料規格に許容電流はない。電流値は使用条件から決める。

関連する規格と現場での参照点

ブスバーを使った設備の設計では、材料規格(JIS H 3140)に加えて、盤や設備側の規格を併せて参照します。役割が違うため、どちらか一方だけでは設計が成立しません。

関連する主な規格と役割

規格 対象 ブスバー設計での参照点
JIS H 3140 銅ブスバー(材料) 材質・質別・寸法許容差・縁部形状
JIS H 3100 銅及び銅合金の板及び条 板材から切り出す場合の材料規格
JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備 受電設備としての構造・性能要件
電気設備技術基準・内線規程 電気設備一般 離隔距離、施工上の要求

関連する主な規格と役割

JIS H 3140 / 銅ブスバー(材料)

材質・質別・寸法許容差・縁部形状を規定する中心の規格

JIS H 3100 / 銅及び銅合金の板及び条

板材から切り出して製作する場合に参照する材料規格

JIS C 4620 / キュービクル式高圧受電設備

受電設備としての構造・性能の要件(2023年版が最新)

電気設備技術基準・内線規程

離隔距離や施工上の要求事項

ブスバーと板材(JIS H 3100)の使い分け

定尺のブスバー材から作るか、銅板から切り出すかで参照する規格が変わります。幅の広い異形部品や、規格寸法にない板厚が必要な場合は板材から加工します。ただし板材から切り出した場合、縁部の面取りは加工側で作り込む必要があります。ブスバー材にはもともと面取りが付いている点が違いです。図面には、どちらを想定しているかを明記しておくと確実です。

材料はH 3140、設備はC 4620。役割の違う規格を並行して見る。

図面・注文書での正しい指定のしかた

材質記号・質別・寸法の3点を並べて書けば、材料の指定は完了します。最も多い行き違いは、質別が抜けていることによる「思っていたより硬い(または軟らかい)材料が届く」というものです。

記載例: JIS H 3140 C1100BB-1/2H t6 × W50 × L1200

見積り・発注時に伝えておきたい情報

  • 材質記号と質別(例:C1100BB-1/2H)。判断できない場合は用途を伝えれば提案できます
  • 厚さ・幅・仕上がり長さ、必要な数量
  • 曲げの有無と角度、曲げR の指定があればその値
  • 穴の位置・径・数、タップの有無
  • めっきの要否(錫・銀・ニッケルなど)と、必要なら膜厚
  • 使用環境(屋内・屋外、周囲温度、腐食性ガスの有無)

質別が決められないときは用途を伝える

曲げが多い部品なのか、支持間隔の長い直線導体なのかが分かれば、こちらで適した質別を提案できます。硬い材料を無理に曲げると割れやスプリングバックの問題が出るため、加工内容と質別はセットで決めるのが確実です。当社では切断・穴あけ・曲げ・端面仕上げを社内で行っており、材料手配から加工までを通して調整できます。対応範囲は加工技術のページをご覧ください。

株式会社石垣商店は名古屋市守山区で銅ブスバーの加工を専門に行っており、変圧器・配電盤・受配電設備・電池関連の各分野に納入しています。JIS H 3140に適合した材料での製作はもちろん、ミルシートの提出や寸法検査の記録にも対応しています。検査と品質保証の考え方は品質管理のページにまとめています。

よくあるご質問

銅ブスバーのJIS規格の番号は何番ですか

JIS H 3140「銅ブスバー」です。現在有効な版は2018年版(JIS H 3140:2018)で、2023年10月の見直しで継続が確認されており、2026年時点でもこの版が有効です。厚さ2.0〜30mm、幅300mm以下の展伸加工された銅ブスバーを対象に、材質・質別・機械的性質・寸法許容差・縁部形状などを規定しています。

C1100BBとC1020BBはどちらを選べばよいですか

常温でボルト締結する一般的な配電盤や受配電設備であれば、タフピッチ銅のC1100BBで問題ありません。無酸素銅のC1020BBは、ろう付けや還元性雰囲気での高温加熱を伴う場合に、水素ぜい化を避ける目的で選びます。C1020BBは材料費が高くなるため、明確な理由がある場合に限って指定するのが合理的です。

JIS H 3140に許容電流の表はありますか

ありません。JIS H 3140は材料の規格であり、材質・質別・寸法・機械的性質・導電率を規定していますが、許容電流は含まれていません。許容電流は周囲温度、盤内の密閉度、設置姿勢、重ね枚数などの使用条件で変わるため、材料規格では決められないためです。実際の設計では盤メーカーの設計基準や温度上昇試験の結果を根拠にします。

銅ブスバーの質別は導電率にどれくらい影響しますか

影響は小さく、JIS H 3140の規定では焼なましのO材が100%IACS以上、1/4Hと1/2Hが98%IACS以上、硬質のH材が97%IACS以上で、最大でも3ポイント程度の差です。したがって質別は通電性能ではなく、曲げ加工のしやすさや支持間隔といった機械的な条件から選ぶのが実務上の考え方になります。

銅ブスバーの板厚には公差がありますか

あります。JIS H 3140では厚さの区分ごとに許容差が定められており、たとえば厚さ2.0〜3.2mmでは±0.08mm、8.0〜12mmでは±0.15〜0.18mm程度、20〜30mmでは比率(約±1.2〜1.3%)で規定されています。積層する設計や絶縁物との隙間が小さい設計では、この公差の累積を見込んでおく必要があります。

規格にない寸法の銅ブスバーは作れますか

対応できる場合があります。JIS H 3140の適用範囲は厚さ2.0〜30mm、幅300mm以下ですが、この範囲外や流通の少ない寸法が必要な場合は、銅板(JIS H 3100の板材など)から切り出して製作する方法があります。ただし板材から切り出した場合は縁部の面取りを別途加工する必要があるため、事前に仕様をご相談ください。

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