銅ブスバーの許容電流の計算方法|断面積の求め方と注意点
銅ブスバーの許容電流は、「必要断面積 = 定格電流 ÷ 電流密度」で計算するのが実務の基本です。電流密度はJIS C 8480:2016(キャビネット形分電盤)に定格電流帯ごとの上限が定められており、盤内母線の選定で広く参照されています。ざっくりした目安は断面積1mm²あたり2〜3Aです。
この記事では、電流密度から断面積を求める計算手順、板厚×幅の目安早見表、そして計算値どおりにいかない「温度上昇・設置条件・重ね使い」の注意点まで、銅ブスバー加工会社の視点で整理します。
銅ブスバー
許容電流
計算方法
電流密度
JIS C 8480
断面積
温度上昇
銅ブスバーの許容電流はどう決まるか
許容電流とは、導体の温度が許容範囲を超えない上限の電流のことです。つまり本質は「電流の大きさ」ではなく「温度上昇」で決まります。同じ断面積のブスバーでも、放熱しやすい環境なら多く流せ、密閉された盤内では少なくなります。
実務では、この温度上昇を毎回計算する代わりに、規格で定められた電流密度(断面積1mm²あたりに流してよい電流)を使って断面積を決める方法が広く使われています。
前提:電流密度の規定は「便法」
JIS C 8480:2016の電流密度の規定には、母線などの温度上昇が規定値を超えないことが保証される場合はこの限りでない、という趣旨のただし書きがあります。つまり根本の制限は温度上昇であり、電流密度はそれを簡便に満たすための目安という位置づけです。計算値はあくまで出発点で、最終的には使用条件での温度上昇の確認が必要です。
ブスバーの基本的な役割や種類についてはブスバーとはのページで解説しています。
許容電流の正体は「温度上昇の上限」。電流密度はそれを簡単に満たすための道具です。
電流密度から必要断面積を計算する手順
計算は「① 定格電流を決める → ② 電流密度を規格表から引く → ③ 割り算で断面積を出す → ④ 板厚×幅を選ぶ」の4ステップです。
JIS C 8480:2016では、銅帯(母線)の電流密度の上限が定格電流帯ごとに次のように定められています。電流が大きいほど発熱が厳しくなるため、許される電流密度は小さくなります。
JIS C 8480:2016 の電流密度(銅帯)
| 基準定格電流 | 電流密度の上限 |
|---|---|
| 125A 以下 | 3.0 A/mm² |
| 125A 超 〜 250A 以下 | 2.5 A/mm² |
| 250A 超 〜 400A 以下 | 2.0 A/mm² |
| 400A 超 〜 630A 以下 | 1.7 A/mm² |
JIS C 8480:2016 の電流密度(銅帯)
125A 以下
電流密度の上限 3.0 A/mm²
125A 超 〜 250A 以下
電流密度の上限 2.5 A/mm²
250A 超 〜 400A 以下
電流密度の上限 2.0 A/mm²
400A 超 〜 630A 以下
電流密度の上限 1.7 A/mm²
定格電流帯ごとの電流密度上限(大電流ほど小さくなる)
計算例:定格電流400Aのブスバーを選ぶ
計算の4ステップ(400Aの例)
- ① 定格電流を確認 … 400A
- ② 電流密度を表から引く … 250A超〜400A以下 → 2.0 A/mm²
- ③ 必要断面積を計算 … 400 ÷ 2.0 = 200 mm²
- ④ 板厚×幅を選ぶ … 5mm×40mm(200mm²)、6mm×35mm(210mm²)など
板厚×幅は「流通標準寸法」から選ぶ
計算上の断面積を満たす組み合わせは無数にありますが、流通している平角銅の標準寸法(板厚3・4・5・6・8・10mmなど)から選ぶと、材料の入手性が良く価格と納期の両方で有利です。取り付けスペースや穴あけ・曲げの都合も含めて、加工会社に相談しながら決めるのが確実です。
「定格電流 ÷ 電流密度 = 断面積」を出してから、流通寸法に当てはめるのが実務の順番です。
板厚×幅ごとの断面積と許容電流の目安早見表
下表は、代表的な板厚×幅の断面積と、JIS C 8480:2016の電流密度から逆算した電流の目安です。実際の許容電流は温度上昇・設置条件で変わるため、選定の出発点としてお使いください。
断面積と電流の目安(電流密度から逆算)
| 板厚×幅 | 断面積 | 電流の目安 |
|---|---|---|
| 3mm × 15mm | 45 mm² | 約135A(3.0 A/mm²) |
| 3mm × 25mm | 75 mm² | 約187A(2.5 A/mm²) |
| 4mm × 30mm | 120 mm² | 約240A(2.0 A/mm²) |
| 5mm × 40mm | 200 mm² | 約400A(2.0 A/mm²) |
| 6mm × 50mm | 300 mm² | 約510A(1.7 A/mm²) |
| 8mm × 50mm | 400 mm² | 約630A(1.7 A/mm²超は個別検討) |
断面積と電流の目安(電流密度から逆算)
3mm × 15mm / 断面積 45mm²
電流の目安 約135A(3.0 A/mm²)
3mm × 25mm / 断面積 75mm²
電流の目安 約187A(2.5 A/mm²)
4mm × 30mm / 断面積 120mm²
電流の目安 約240A(2.0 A/mm²)
5mm × 40mm / 断面積 200mm²
電流の目安 約400A(2.0 A/mm²)
6mm × 50mm / 断面積 300mm²
電流の目安 約510A(1.7 A/mm²)
8mm × 50mm / 断面積 400mm²
電流の目安 約630A(1.7 A/mm²超は個別検討)
早見表を使うときの注意
上の値は電流密度からの単純計算であり、「どの環境でも保証される許容電流」ではありません。密閉盤内・高い周囲温度・絶縁被覆あり・複数条の近接配置などの条件では、これより小さい電流で設計する必要があります。630Aを超える大電流や特殊な設置条件は、温度上昇試験や実績データに基づく個別検討が前提です。
上表は代表的な寸法に絞った抜粋です。板厚2.0mmから20.0mmまでの全サイズについて、断面積・重量・許容電流をまとめた一覧は銅バー・銅ブスバーの許容電流・規格・重量一覧表にありますので、寸法から引きたい場合はそちらをご覧ください。
早見表は「最初のあたり」を付ける道具。最終判断は使用条件での温度上昇確認です。
温度上昇と設置条件は許容電流にどう影響するか
同じ断面積でも、放熱しにくい条件では許容電流が下がります。電流密度の計算だけで決めてよいのは、規格が想定する標準的な条件に収まっている場合です。
許容電流を下げる方向の条件
- 密閉された盤内・換気の悪い場所
- 周囲温度が高い(規格の基準は40℃前後)
- 複数のブスバーが近接して並ぶ(相互加熱)
- 絶縁チューブ・粉体塗装で覆われている
- 接続部の接触抵抗が大きい(局部発熱)
許容電流に余裕が出る方向の条件
- 開放された空間で自然対流が確保できる
- 周囲温度が低い
- 導体同士の間隔が十分に取れている
- 接続部が適正トルクで管理され接触抵抗が小さい
2026年時点の動向:大電流化で選定の重要度が増しています
2026年時点では、AIデータセンターの増設・EVや蓄電池の普及・送配電網の増強投資により、盤・変圧器・電池まわりで扱う電流が大型化する傾向が続いています。世界の銅需要も長期的な増加が見込まれると報じられており、大電流・省スペース化の両立のためにブスバーの断面設計や放熱設計の重要性が高まっています。
発熱の多くは導体そのものよりも接続部で起きます。締結部の接触抵抗と発熱の関係、めっきによる接触抵抗の安定化については銅ブスバーへのめっきのページも参考にしてください。
「断面積は足りているのに熱い」ときは、まず設置条件と接続部を疑います。
銅バーを重ねて使う場合の許容電流の注意
2枚重ねても許容電流は2倍にはなりません。重ねた内側の面は放熱に寄与しにくくなるため、断面積の合計ほどには電流を流せないからです。これは実務でも質問の多いポイントです。
重ね使いのイメージ
1枚のとき ═══════════ ← 上下両面から放熱できる
2枚重ね ═══════════ ← 外側の面は放熱できる
═══════════ ← 向かい合う面は熱がこもりやすい
重ね使いの設計で守りたいこと
- 許容電流を単純に「枚数倍」で見積もらない(余裕を持った設計にする)
- バー間に放熱用の隙間(スペーサ)を設ける方法も検討する
- 重ね枚数を増やすより、幅の広い1枚に置き換えられないか検討する
- 大電流用途では温度上昇の実測・実績データで確認する
重ねるほど「断面積あたりに流せる電流」は下がる、と覚えておくと安全側です。
交流で使う場合の許容電流はどう考えるか
交流では電流を実効値で考えるのが基本です。実効値は、直流を流した場合と同じ発熱になる電流の表し方なので、温度上昇で決まる許容電流の考え方とそのまま整合します。
加えて、断面が大きくなるほど交流では表皮効果(電流が導体表面に偏る現象)や近接効果の影響が現れ、直流に比べて実効的な抵抗が増えます。一般的な盤内の周波数(50/60Hz)と中小断面では影響は限定的ですが、大断面・大電流の母線や高周波用途では、断面を分割する・幅広の薄い形状にするなどの対策が検討されます。
迷ったら「用途と電流値」で相談を
直流・交流の別、周波数、連続通電か断続かによって適切な断面は変わります。図面が固まる前でも「用途と電流値」が分かれば断面の提案は可能です。当社の曲げ・穴あけ・切断の対応範囲は加工技術のページをご覧ください。
交流は実効値で計算し、大断面では表皮効果の影響を頭に入れておきます。
よくあるご質問
銅ブスバーは1mm²あたり何アンペア流せますか?
目安は断面積1mm²あたり2〜3Aです。JIS C 8480:2016では定格電流帯ごとに電流密度の上限が定められており、125A以下で3.0A/mm²、400A超〜630A以下で1.7A/mm²と、電流が大きいほど小さい値になります。実際の許容電流は温度上昇と設置条件で変わります。
銅ブスバーの必要断面積はどう計算しますか?
必要断面積(mm²) = 定格電流(A) ÷ 電流密度(A/mm²) で計算します。例えば定格400Aなら、電流密度2.0A/mm²を使って400÷2.0=200mm²となり、板厚5mm×幅40mmなどが候補になります。
銅バーを2枚重ねると許容電流は2倍になりますか?
なりません。重ねた内側の面は放熱しにくくなるため、許容電流は断面積の単純な合計より小さくなります。重ね使いでは余裕を持った設計とし、大電流用途では温度上昇の実測や実績データでの確認をおすすめします。
交流の場合の許容電流は実効値で考えてよいですか?
実効値で考えるのが基本です。実効値は直流と同じ発熱を生じる電流の表し方のため、温度上昇で決まる許容電流の検討にそのまま使えます。ただし大断面・大電流では表皮効果による抵抗増加を考慮する必要があります。
計算した断面積どおりに作れば安全ですか?
計算値は出発点であり、最終的には使用条件での温度上昇の確認が必要です。密閉盤内・高い周囲温度・絶縁被覆・複数条の近接配置などの条件では、計算値より余裕を持たせた断面にします。不明な場合は用途と電流値を添えて加工会社に相談してください。
