コラム

バスバーの絶縁処理・被覆方法の選び方|チューブ・ディッピング・絶縁板の徹底比較

制御盤や分電盤のダウンサイジング(小型化)が進む中で、設計者を悩ませるのが「絶縁距離(空間距離・沿面距離)」の確保です。

裸の銅バー(ブスバー)のままでは、隣接する導体や筐体との間に十分な距離をとる必要がありますが、適切な「絶縁処理」を施すことで、安全性を保ちながら省スペース設計が可能になります。

この記事では、バスバーの絶縁で守るべき「3つの安全原則」と、主な絶縁方法である「熱収縮チューブ」「エポキシ粉体塗装(ディッピング)」「絶縁板」の選び方・メリット・デメリットについて、銅加工のプロが解説します。

1. バスバー絶縁で守るべき「3つの安全原則」

単に「覆えばいい」わけではありません。バスバーの絶縁設計は、以下の3点を同時に満たす必要があります。

  • ① 短絡(ショート)の防止: 工具の落下、配線ミス、地震等の振動による接触事故を防ぎます。
  • ② 感電の防止: 保守点検時に作業員が触れる可能性のある充電部を確実に保護します。
  • ③ 放電(アーク)の防止: 電圧・湿度・汚損条件によっては空間でも電気が飛びます。「クリアランス(空間距離)」と「沿面距離」を確保するために絶縁処理が必須となります。
設計時の注意点:放熱性とのトレードオフ
絶縁被覆を厚くすれば安全性は高まりますが、同時に「熱がこもりやすく」なります。裸導体に比べて放熱性が低下するため、大電流用途では温度上昇を考慮したサイズ選定(断面積アップ等)が必要です。

2. 方法1:熱収縮チューブ(コスト・手軽さ重視)

最も一般的で、現場でも採用しやすい方法です。バスバー形状に合わせた筒状の絶縁チューブを被せ、ヒートガンや炉で加熱して収縮・密着させます。

特徴 ポリオレフィン系などが主流。低圧から高圧(厚肉)まで種類が豊富。
メリット ・コストが比較的安い。
・色分け(赤・白・青・黒・緑など)が容易で、相(R/S/T)識別ができる。
・直線主体の形状なら施工が早い。
デメリット 複雑な形状(穴・段差・三次元曲げ)はシワや隙間ができやすい。
・L字やT字の接続部(ボルト締結部)は露出するため、別途「絶縁キャップ」が必要。
・端子接触面は「被覆の切り取り(トリミング)」が必要で手間がかかる。

3. 方法2:エポキシ粉体塗装・ディッピング(品質・複雑形状重視)

予熱したバスバーをエポキシ樹脂の粉体(流動床)に浸漬、または静電スプレーで塗布し、溶融・硬化させて強靭な「絶縁皮膜」を作る方法です。いわゆる「流動浸漬塗装」などがこれに該当します。

特徴 継ぎ目のない、均一で密着性の高い絶縁層(塗膜)を形成する。
メリット 複雑な曲げ形状でも、均一に被覆できる。
・密着性が高く、振動や湿気、薬品に強い(耐久性が高い)。
・局所的な弱点(継ぎ目やシワ)ができにくく、絶縁信頼性が高い。
・省スペース化(タイトな配置)に向いている。
デメリット ・専用設備が必要なため、コストはチューブより高くなる傾向がある。
・一度硬化すると剥離・再加工が困難(後からの穴あけ等ができない)。
・端子部のマスキング管理が重要。

4. 方法3:絶縁板・バリア(物理的遮断・放熱重視)

バスバー自体を被覆するのではなく、ポリカーボネートやベークライトなどの「絶縁板(セパレーター)」や「支持碍子(スペーサー)」で、導体間距離を物理的に固定・確保する方法です。

特徴 空間と物理障壁によって絶縁距離を担保する。
メリット 放熱性が良い(バスバー自体は裸なので、空気冷却されやすい)。
・異常発熱や変色の兆候を目視点検しやすい。
・後付けや改造に対応しやすい。
デメリット ・場所をとる(小型化には不向き)。
・部品点数と組立工数が増える。
・粉塵や湿気が多い環境では、沿面放電のリスク対策が必要。

5. どう選ぶ?(現場で迷わないための判断軸)

受配電・制御盤・変圧器まわりの設計では、判断軸を「設計・購買・製造」で共通言語にすると決定が速く、手戻りが減ります。ここでは迷いを減らす順番で整理します。

判断軸①:電圧と環境(汚損・湿度・屋外)

まず距離(クリアランス/沿面距離)で担保するのか、被覆で担保するのかを決めます。汚損・結露があるなら、距離だけでなく材料・構造(バリア/被覆)もセットで考えます。

判断軸②:形状(直線主体か、三次元曲げ/穴/段差が多いか)

  • 直線主体 → 収縮チューブが強い
  • 複雑形状 → 粉体/ディッピングコーティングが強い

判断軸③:放熱と温度上昇

被覆を厚くすると熱がこもりやすい。設計段階で「絶縁と放熱」のトレードオフを明示しておくと事故が減ります。温度余裕が少ないなら、バリアで距離固定+必要箇所だけ被覆の分担が堅実です。

判断軸④:生産性(内製か外注か、ロット、リードタイム)

  • 収縮:柔軟(小ロット・現場向き)
  • 粉体/ディップ:設備/外注前提(品質は高いが工程が重い)
  • バリア:部品点数増(組立は増えるが改造・保守に強い)

迷いが減る整理:方式別の“刺さる条件”

条件 収縮チューブ ディッピング コーティング バリア
直線主体
複雑形状
省スペース
放熱優先
小ロット/現場
長期耐久

「◎の列」を優先して選び、弱点は分担(バリア+部分被覆など)で埋めるのが安全です。

6. 施工・設計で事故を減らすチェックリスト(最低限)

  1. 端子部(接触面)に絶縁が噛み込まない設計・指示にしているか(図面/作業標準)
  2. 角部・エッジで皮膜が薄くなる前提で、形状や工程(R付け、塗り重ね等)を考慮できているか
  3. クリアランス/沿面距離を、組立誤差・振動後でも満たす構造にしているか
  4. 絶縁後に熱が上がる前提で、温度上昇の逃げ道(配置・通風)を持たせているか
  5. 検査(外観・膜厚・耐電圧など)の合否基準が明文化されているか
“長持ち”を決めるのは材料だけではありません。端部処理・角部・距離固定・検査基準が寿命を決めます。

7. よくある質問(FAQ)

Q. 収縮チューブだけで十分ですか?

直線主体・盤内環境が良好なら有効です。ただし放電(距離)端部処理は別管理になります。迷うならバリアで距離固定+必要箇所だけ被覆の分担が安全です。


Q. 粉体ディッピングは何が強い?

厚膜の強い皮膜で、擦れ・振動・汚損環境に強くしやすい点です。省スペースにも効きます。一方で小ロット再加工は不利になりやすいので、生産条件とセットで決めます。


Q. コーティングはどこで使うと失敗しにくい?

「必要箇所だけ」「汚損/結露対策」など補強目的で使うと堅実です。全面絶縁の主役にするなら、膜ムラ・角部・ピンホールを潰すために工程と検査基準が必須です。

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